第57回 QLD 想定外

 

第57回 想定外

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


何とかファイナル出場権を得たロアは4回目の戴冠を目指す。写真は昨年のGF(写真提供:Brisbane Roar FC)

いよいよ佳境を迎えたAリーグに激震が走ったのは、4月1日。ソーシャル・メディア上でたわいない“エイプリル・フール”ネタが飛び交う中に飛び込んできたニュースは、そんな浮わついた雰囲気を容易に吹き飛ばす代物だった。

詳細を語るには、このコラムの文字数では余りに心許ない。無理を承知で簡潔に書けば、パース・グローリーのサラリー・キャップのルール違反疑惑を豪州サッカー連盟(FFA)が“クロ”と断じたのだ。疑惑自体は、昨年末に既に明るみに出ており、FFAも公式に調査する意向を表明していた。その調査結果が今季の山場のタイミングで公表され、豪州サッカー界に衝撃を与えた。

10日にFFAによって下されたペナルティーは、予想以上に厳しいものだった。26万9,000ドルの罰金、そして、首位と勝ち点差なしの3位(第25節終了時)に付けるパースが、自動的に7位に据え置かれる。これは、上位6チームで争われるファイナル・シリーズへの出場権を失うことを意味する。この厳罰には、驚きの声と当然の報いとする声とが相半ばした。ここで、今回の裁定の是非を論じるつもりはない。

期せずして、この騒動で最大の“恩恵”を被ることになったのが、我らがブリスベン・ロアだ。今季のロアは立ち上がりの不振が響き、ファイナル圏内争いギリギリのところでもがいていた。そこに降って沸いた今回の騒動。現在7位とファイナル圏外に留まるロアだが、下位3チームに抜かれる可能性がなくなった第25節終了時の結果を受け、パースの除外措置の特例でのファイナル進出を決めた。

ロアにとっては、まさに「棚から牡丹餅」。まったく予期せぬ展開で、連覇への挑戦権は何とかつかみ取ることができた。ファイナルにはめっぽう強いロアのことだから、何とかACLとの過密日程も上手くやり繰りして、5月に入ってからのファイナルにしっかりと照準を合わせてくるだろう。

まさかの事態でのファイナル進出から、前人未到の4度目のファイナル制覇なんていうシナリオは、少々でき過ぎかもしれない。しかし、少なくともそれを達成する権利だけは得た。想定外の事態をしっかりと物にできるしたたかさが、タイセン監督の積極的な若手起用で一気に若返ったロアに残されているか、そのあたりが今後の鍵になる。ファイナルで暴れるロアの雄姿、今年も何とか拝みたいものだ。


【うえまつの独り言】
QLD州のNPL、ブリスベンのトップリーグBPL。どちらもリーグ戦の序盤から予想の付かない激戦が繰り広げられ、大いに盛り上がっている。日本人選手のいるクラブ同士の対戦も、ほぼ毎節、どこかで戦われている。ぜひ、ローカル・リーグの試合にも足を運んでもらいたい。

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