AFL2015グランド・ファイナル観戦ガイド

2015年オーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)はフリーマントル・ドッカーズ(Fremantle Dockers)がレギュラー・シーズン序盤より勝利を重ねて独走してきた。攻撃力には若干劣るものの充実したメンバーで死角が少なく総合力で勝るドッカーズが、優勝決定戦であるGF(グランド・ファイナル)優勝の可能性は最も高い。ドッカーズが勝てば、悲願の初優勝となる。(記事は8月16日時点のもの)文=板屋雅博

ドッカーズ、初優勝なるか

フリーマントル・ドッカーズはゴールドコースト・サンズ(Gold Coast Suns)とグレーター・ウエスタン・シドニー・ジャイアンツ(Greater Western Sydney Giants)を除く伝統チームでは唯一、GF優勝の経験がない。長く低迷してきたチームであるが一昨年3位、昨年4位と上位に定着してきた。本拠地は西オーストラリア・パースにあるパース・スタジアムで1994年設立。フリーマントルは港湾都市でありチーム・ロゴは船の錨を表している。

ドッカーズは開幕から9連勝してトップを独走。シーズン中盤で下位のリッチモンド・タイガース(Richmond Tigers)にまさかの1敗を喫し、強豪ホーソン・ホークス(Hawthorn Hawks)にも負けたが、一度も首位を譲ることなくシーズン終盤まできた。ウエストコースト・イーグルスが猛追しているが、ドッカーズが逃げ切ってレギュラー・シーズン優勝とみられている。

ドッカーズの注目選手アーロン・サンディランズ
ドッカーズの注目選手アーロン・サンディランズ

ドッカーズが急成長したのは、ベテラン監督の知将ロス・リオンの采配によるところが大きい。リオンはセント・キルダ・セインツの監督を4年間務めたが、09年GFではジーロンに敗れ、10年GFでは引き分け再試合の末にコリンウッドに敗れた。11年から5年契約でドッカーズの監督を務めているが、ついにチームにとってもリオンにとっても念願の初優勝を果たす時が近付いている。

注目の選手は、ラックマンのアーロン・サンディランズ。身長211センチ、体重119キロとリーグ1の長身で大柄なサンディランズが高く跳ね上がったボールを奪取する様子はAFLならではの魅力だろう。AFLプレーヤー・ポイント・ナンバー1のネイサン・ファイフの軽快なプレーも見どころだ。

今年のGFは10月3日

オーストラリアの国技ともいわれるAFLは、1リーグ制全18チームの中でVIC州が10チーム、QLD州、NSW州、SA州、WA州が各2チームの構成だ。レギュラー・シーズンは23ラウンド(週:各チーム23試合)で4月から9月第1週まで戦い、その後、シーズン優勝をかけてファイナル・シリーズを行い、最後に優勝決定戦GFが10月3日に予定されている。

例年は3月中旬にシーズンが始まり、GFは9月末の土曜日と決まっているが、今年はもう1つの国技クリケットの世界大会がオーストラリアで開かれたので、1カ月遅くなった。冬のスポーツであるオーストラリアン・フットボールは夏のスポーツであるクリケットの選手が冬に体を鍛えるために始めたとの説もあり、AFL競技場はすべてクリケット競技場を共用している。本家本元のクリケット世界大会なので文句も言えないのだ。

ドッカーズを追うのが4敗1分のウエストコースト・イーグルス(West Coast Eagles)だが、終盤の第20週にドッカーズに勝ち、1.5勝差まで迫っており一気に優勝の行方が混とんとしてきた。残り3ラウンドの対戦相手から見て逆転は若干難しいが、勢いを持続できればGFで逆転優勝できる可能性がある。

昨年優勝のホーソン・ホークス(Hawthorn Hawks)は序盤で4勝4敗と出遅れ、とても優勝を追う状態ではなかったが、その後8連勝で息を吹き返した。6敗のウエスタン・ブルドッグスとシドニー・スワンズもファイナル出場はまず間違いない。

9月第2週からいよいよファイナル・シリーズが始まる。上位8チームが出場できるが、ノース・メルボルン・カンガルーズ(North Melbourne Kangaroos)、リッチモンド・タイガース(Richmond Tigers)、アデレード・クロウズ(Adelaide Crows)ジーロン・キャッツ(Geelong Cats)が当落線上にいる。

注目のチームと選手

長身のラックマンによる空中戦が見どころの1つ
長身のラックマンによる空中戦が見どころの1つ

■ウエストコースト・イーグルス

ドッカーズと同じくパース・スタジアムを本拠地とする。1987年にAFL加入と、比較的歴史が浅いチームながら、92年、94年、06年と3回の優勝を誇る。注目の選手はラックマンのニック・ナイタヌイ、身長201センチ、体重107キロの大柄ながらタックルも素晴らしい好選手。
 GFがドッカーズ対イーグルスの戦いになれば、パース・ダービー、つまりパースのチーム同士の戦いとなり西オーストラリアでは大きな話題となる。
 注目選手は以下の通り。マット・プリディスは、昨年のブロウンロー・メダル受賞者でボール処理回数ではAFLでナンバー1。ジョシュ・ケネディは、ロング・キックを面白いように決める長距離砲で注目度が高い。マーク・レクラスも、ケネディと並ぶイーグルスの得点源だ。

 

■ホーソン・ホークス

イーグルスの好選手ニック・ナイタヌイ
イーグルスの好選手ニック・ナイタヌイ

ホークスのスター選手ルーク・ホッジ
ホークスのスター選手ルーク・ホッジ

メルボルン市のホーソンが本拠地。キャプテンのルークホッジを中心にまとまったチームで、12年準優勝、13年、14年は連続優勝とこの数年はホークスの時代といっても良いほどに実力が充実している。宿敵のコリンウッド、ジーロンが下位に沈む中で楽勝かと思われたが、序盤に下位レベルのチームに3敗するなど信じられないスタートを切った。しかしシーズン終盤に挽回して調子を上げてきている。優勝経験がないドッカーズを攻撃力で上回るホーソンが一発逆転してGF3連勝を飾ると予想する専門家も多い。
 注目選手は、キッカーではジェリー・ラフヘッド。サム・ミッチェル、シリル・リオリなどにも注目したい。

 

■シドニー・スワンズ

メルボルン出身チームでシドニー移動後の優勝は2回だが、この数年はトップ・レベルを保っている。
 注目選手は、ランス・フランクリン(通称バディー)。最もゴール数が多い選手に与えられるAFLコールマン賞を2度受賞した大型キッカーだ。また、ジョシュ・ケネディ(イーグルスにも同名の選手がいる)にも要注目。

AFLの主なニュース

今年のAFLの最も大きな話題は、アデレードのフィル・ワルシュ監督が自宅で息子によってナイフで刺されて死亡するというショッキングな事件である。2日後の7月5日に予定されていたアデレード対ジーロンの試合はキャンセルされた。再試合は行われず、両チームには引き分けと同じ2ポイントが与えられた。

AFLでは勝利チームに4ポイント、引き分けで2ポイントが与えられ、同じポイントの場合は獲得得点差で上位チームを決める。18チームで23戦だと、2回対戦する相手チームと1回しか対戦しないチームが出てくるので日本人にはとても受け入れられない仕組みだが、この辺りの議論もほとんどないのがオージーらしい。

 

■ドーピング違反問題

12年シーズンに始まった事件だが、今シーズンもまだ暗い影を落としている。
 エッセンドン・ボンバーズのジェームズ・ハード監督は1年間の謹慎が解けてチームに復帰したが、今シーズンもエッセンドン、フリーマントル、シドニー、コリンウッド、ゴールドコーストなどの選手でも同様の疑惑が起こり、世界アンチ・ドーピング機関による検査などが行われた。

 

人種差別の渦に巻き込まれたスワンズの名選手アダム・グーズ
人種差別の渦に巻き込まれたスワンズの名選手アダム・グーズ

■人種差別問題

シドニー・スワンズの名選手アダム・グーズが人種差別の渦に巻き込まれている。
 きっかけはグーズをサルと呼んだ13歳の女子に端を発するが、高いプライドを持ったグーズがAFLの場でアボリジニとして自己主張したことが一部の人々の反感を呼んだ。各地の試合でグーズに対して大きなブーイングが起きて、ついにグーズは試合に出ない事態となっている。グーズはこれまでに、最優秀選手賞AFLブロウンロー賞を2度受賞し、国民栄誉賞に当たるオーストラリアン・オブ・ザ・イヤーも受賞した人物である。
 AFLは元々メルボルン北部近郊の低所得者層の娯楽として成立してきた。今ではすべての階層で受け入れられているが、時としてその野生が顔を出す時がある。グーズは今シーズンで引退とみられているが、もしそうなれば誠に残念である。

AFLのルールを知ろう!

オーストラリアン・フットボールは、「オージー・ルール」とも呼ばれ独特のルールを持つ。

競技場は、楕円形でオーバルと呼ばれ、サッカー場の2倍以上の広さを持つ。ボールは、ラグビーと同じ楕円形でメルボルンのシェリン社が独占供給している。エッセンドン・ボンバーズの主催ゲームではスポンサーのヤクルトのロゴがボールに描かれている。

プレーする選手の数は、1チーム18人。試合開始は中央でアンパイアがボールを地面にたたき付ける(センター・バウンス)。高く跳ね上がったボールを、ラックマンと呼ばれる選手が飛び上がって取り合う。2メートルを超える長身のラックマンが高く飛ぶ空中戦がAFL最大の見どころの1つだ。相手のラックマンを妨害することは反則だが、自然の成り行きで相手選手の肩の上に乗り上げることも多く、その場合はさらに高く飛ぶことができる。

オーストラリアン・フットボールは、キックを多用する点でサッカーに似ており、ボールを味方にパスするのでラグビーに似ているが、高く舞い上がったボールを奪い合う点ではバスケットボールに似ている。パスは、ハンド・パスと呼ばれボールの下端を手で叩いて放る。ラグビーと違って前方へもパスをすることができる。

ラックマンの周辺に位置するのは、ミッドフィルダー。小柄で素早い選手が多くゴールドコーストのゲリー・アブレットがナンバー1といわれている。優秀なラックマンとミッドフィルダーの活躍が試合の優劣を決定する。

 

■スコアの数え方

AFLのグランドには、両サイドの中央に高いポールが2本、外側に低いポールが2本立っている。AFLのロゴにも高低4本のポールが描かれている。
 中央のポール間に蹴り込むと6点(ゴール)。外側に蹴り込むと1点(ビハインド)が得点される。ゴロでも良いが、必ず蹴りこむことが必要。ゴールの際には、ゴール・アンパイアは独特の動作で両手の人差し指を前に突き出す。アンパイアのコミカルな動作にも注目したい。この数年で女性アンパイアも増えてきており、大柄の選手に交じり活躍する小柄な女性アンパイアたちにも注目が集まっている。
 ゲームは4クオーター制で行われる。各20分だがロスタイムがあるので実質25分ほどになる。2クオーターが終わった時点でハーフ・タイムとなるが休み時間を利用してフィールドでは各種の催し物が行われる。ファンの子どもたちがフットボールをして楽しむ姿が見られる。GFという最高のフィールドでボールに触れることで子どもたちのファンが増えるだろう。

 

■AFLにはオフサイドがない?
 AFLルールの大きなポイントはオフサイドがない点だ。ゴール前で待ち構えるフォワードがキックされたボールをキャッチ(マーク)すると、フリー・キックが与えられ、中央ゴールに蹴り込むと6点。AFLで100点を越える得点になることが多いのはこのためである。ゲーム最後に大逆転が起こるので最後まで見届けたい。

街全体がお祭りムードに

今年のGFは10月3日(土)に行われる。その週にはGFウィークと呼ばれメルボルン全体が興奮に包まれる。ファイナル・シリーズが行われる9月にメルボルン市内を歩くと、応援するチームのマフラーや帽子などのAFLグッズを身にまとった人々に出会う。ビジネス界や政界でも、自分が応援するチームのネクタイをしている人も少なくない。知人友人がどのチームのサポーターであるかを知っているのはメルボルンの常識ともいえる。

GFが行われるMCG(メルボルン・クリケット・グランド)は、10万人を収容するオーストラリア最大、世界でも最大級の競技場である。日本で話題の新国立競技場は最大でも8万人規模であることを考えると、MCGの巨大さが分かる。

MCG入場券を得るのはメルボルンっ子でも困難で、メイン・スポンサーのトヨタの招待状でもない限りは入手は不可能。熱心なファンは子どもが生まれるとすぐにオーストラリア最古のメンバー・クラブであるMCC(メルボルン・クリケット・クラブ、MCGを運営する団体)に加入申請する。順番待ちが20年ほどかかるので生まれた子どもが成人するころにメンバーになれ、やっとMGCのチケット購入優先権が取れる。

GFは伝統的にMCGで行われるが、他州のチームからは異論が出ている。今シーズンもドッカーズ対イーグルスの戦いになれば、なぜパースの2チームがメルボルンでGFを行うのかという議論が再発するだろう。AFLがファンを全国に広げるためにはGF会場問題の解決は欠かせず、今年は転機になる可能性がある。

■AFLグランド・ファイナル
日時:10月3日(土)2:30PM
会場:Melbourne Cricket Ground(MCG)、Brunton Ave., Jolimont VIC
Tel: (03) 9657-8867
Web: www.AFL.com.au

GFウイークの主な行事

◆ブロウンロー・メダル授賞式(日時:9月28日(月)7PM、会場:クラウン・カジノ)

会場となるクラウン・メルボルン外観
会場となるクラウン・メルボルン外観

 AFLは、ゴール、キック、マーク、ハンドリング、タックルなどすべてのプレーを数字化して個人総合得点を付けて順位を付けて発表している。ただしフェア・プレー度は得点化できないので審判が審査している。各試合で審判が記入した得点シートを授賞式の際に合計して発表する。
 午後5時からアトリウムのエントランスに敷かれたブルー・カーペットで入場が始まるが、選手よりもむしろモデル顔負けの美人の奥様やガールフレンド、豪華な宝石とファッションに注目が集まる。今年の受賞者だが、筆者の予想ではドッカーズのネイサン・ファイフ(Nathan Fyfe)が有力。


◆GF出場チーム・パレード
(日時:10月3日(土)12PM、会場:メルボルン市内)

 GFの両チームによるパレードがメルボルン市内を通って旧財務省ビルまで行われる。旧財務省ビル特設ステージでセレモニーが行われるのでスプリング通りに近い場所がお薦め。パレード最後に旧財務省ビル前特設スタジオで両チームのキャプテンがGF優勝カップを前に健闘を誓うところが見どころ。

◆AFLグランド・ファイナル(日時:10月3日(土)2:30PM、会場:MCG)

 フェデレーション・スクエアとMCG外の大型スクリーンに生中継されるので、ビールやワインを片手に声援しよう。MCGの外側ではスポンサー各社がブースを作り、いろんな催し物を実施。観客はBBQなどをして盛り上がる。

◆優勝チームのお披露目会(日時:10月3日(土)6PM、会場:フェデレーション・スクエア)

 優勝チーム選手がファンにお披露目。大人数が集まるので、GF終了直後に向かった方が無難。

◆優勝チーム・ファン祝賀会(日時:10月3日(土)12PM~3PM、会場:優勝チームのホーム・グラウンド)

 詳細な場所・時間は当日の新聞またはチームのサイトに掲載されるので要チェック。

文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表。
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz/)を経営

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