2016年豪州F1グランプリ(GP)観戦ガイド


モーター・スポーツ界最高峰、F1GP世界選手権開幕第1戦であるオーストラリアンF1GPは、3月17日から20日までメルボルン市内のアルバート・パークで実施される。今年のF1GPレース界の展望とメルボルンGPの見どころを紹介する。文=板屋雅博

メルセデスの快進撃

2015年はメルセデスの独壇場であった。第1戦メルボルンGPからアブダビGPまでの19戦中、16戦でメルセデスが優勝。残る3戦はフェラーリのセバスチャン・ベッテルが優勝した。期待の中で復活したマクラーレン・ホンダであったが、15年は芳しくない成績で日本や世界のファンをがっかりさせた。メルセデスの突進を誰が止めるのか?メルセデス快進撃の秘密とマクラーレン・ホンダ復活のカギに迫る。

昨年、メルセデスのルイス・ハミルトンが年間チャンピオンに輝き2連覇を達成した。08年に史上最年少でチャンピオンになり、14年は19戦中11勝を挙げて8年ぶりに年間チャンピオンを奪取した。昨年は19戦中10勝、残る7戦でも表彰台に上り危なげなく完勝した。2位のメルセデスのニコ・ロズベルグも6勝を挙げ、メルセデスがチーム(コントラクター)優勝を2連覇で飾った。2年連続で1-2位を独占し、メルセデスの時代が到来したことを強く印象づけた。

昨年、6勝を挙げメルセデスのチーム優勝に貢献したニコ・ロズベルグ
昨年、6勝を挙げメルセデスのチーム優勝に貢献したニコ・ロズベルグ
昨年の年間チャンピオンに輝いたメルセデスのルイス・ハミルトン
昨年の年間チャンピオンに輝いたメルセデスのルイス・ハミルトン
19戦中、3戦で優勝したフェラーリのセバスチャン・ベッテル
19戦中、3戦で優勝したフェラーリのセバスチャン・ベッテル

フェラーリとレッドブル

チーム2番手に食い込んできたのはフェラーリだ。10年から4連覇のベッテルをレッドブルから電撃移籍で獲得し、マレーシアGPで移籍後初優勝した。ハンガリーGP、シンガポールGPでも優勝して3勝を挙げ、個人(ドライバー)で3位に食い込んだ。フェラーリのキミ・ライコネンは07年の世界チャンピオンで現役最年長(36歳)だが、シンガポールGPとアブダビGPで表彰台に立ち、個人4位に食い込んでフェラーリのチーム2位に貢献した。メルセデス、マクラーレンと並ぶ御三家でF1の代名詞とも言える名門フェラーリはファンも多いが、08年を最後に年間チャンピオンから遠ざかっている。16年マシンの仕上がりはメルセデス・レベルと言われている。

大きく落ち込んだのがレッドブル・ルノーだ。13年はベッテルが13勝を挙げてチーム個人とも4連覇と我が世の春であったが、14年にはベッテルは1勝もできなかったが、ダニエル・リカルドが3勝を挙げて、なんとか年間2位に食い込んだ。

15年は未勝利に終わり、チーム順位もウィリアムズにも抜かれて4位と低迷。レッドブル陣営はルノー製パワー・ユニットの非力に不満を募らせていると言われている。ベッテルの移籍によりレッドブルを引っ張るのはダニエル・リカルドだ。豪州パース生まれの26歳は、レッドブルのセカンド・チームであるトロロッソ(レッドブルのスペイン語)から11年よりF1に参戦、14年に豪州マーク・ウェバーの引退によって正ドライバーに昇格。3勝を挙げて個人年間3位に食い込む活躍を見せている。昨年は8位であったが、ハンガリーGPで3位、シンガポールGPで2位と優勝まであと一歩まで迫り、ルノー製エンジンの改善次第では今年のメルボルンGPでも優勝を期待されている。ウェバーがなし得なかったメルボルンGPでの優勝と年間チャンピオン獲得をリカルドに期待したい。

レッドブル、今年は巻き返せるか? リカルドに期待
レッドブル、今年は巻き返せるか? リカルドに期待

惨敗に終わったホンダ

かつてF1GPを席巻したマクラーレンとホンダのコンビが復活参戦するというニュースは昨年、世界を沸かせた。多くのファンがマクラーレン・ホンダは上位へ食い込んでくると期待した。初戦のメルボルンではアロンソが故障の為、リザーブのケビン・マグヌッセンが務めた。ところがマシン・トラブルからスタートさえできなかった。バトンは完走こそはたしたもののトップから2周遅れで11台中11位の最下位という惨敗であった。15年シーズンではマクラーレン・ホンダは参加10チーム中の9位に終わった。ホンダは06年から3年間、エンジン車体の全てを供給するフルコントラクター・ワークスチームとして参加していたが、本社の業績不振により08年を最後にF1GPから完全に撤退していた。09年からの7年間で、F1は大きく変化した。かつては排気量3,000cc・10気筒の大型エンジンを搭載し、エンジンごと積み替えるなどの荒業も可能であった時代から、現在は1,600cc・6気筒エンジンへ大幅に小型化されている。地球温暖化が進む中でF1も環境重視の姿勢を明確にして社会に貢献するイメージをアピールしないと生き残れないからだ。先端技術の開発によって世界に貢献していくことがF1の使命の1つである。

ホンダがF1復活を決めた背景にも環境技術の追求が理由であったが、昨年最も苦しんだ点もまさにこの点であったのは皮肉なのか、または生みの苦しみか。

パワー・ユニットとは

エンジンと運動エネルギー回生(MGU-K)に熱エネルギー回生(MGU-H)の2つのシステムを加えたパワー・ユニットと呼ばれる複合技術が昨年本格採用された。MGU-Kは、F1マシンがコーナーで減速する際、ブレーキをかけるが、モーター・ジェネレーター・ユニット(発電機)を作動させて、電気に変換してバッテリーに蓄える。バッテリーに蓄えられた電気でモーターを動かして加速に使うのがMGU-Kだ。

MGU-Hは、エンジンから出る排気の熱をエネルギーに変換するシステムで専用のモーター・ジェネレーター・ユニットを作動させて電気を作っているのが熱エネルギー回生システムだ。作られた電気はMGU-Kに送られて使用される。MGU-Kの最高出力(規定値)は120kWであり非常に大きなパワーを作り出す。

エンジンやMGU-H/MGU-Kのパワー・ユニットを最もうまく制御しているのが、メルセデスであり、失敗したのがホンダであったと言える。13年まで4連覇したレッドブルのルノー製パワー・ユニットもエネルギー回生システムを上手く生かしきれなかったのが低迷の原因と言える。

ホンダは昨年開幕前でトラブルが続き完成車MP4-30をメルボルンで実走させた段階で初めて回生パワー(ディプロイメント)不足が判明した。ディプロイメント不足を解消するにはマシンのレイアウト変更など大きな改造が必要であり、昨年中は有効な対策が打ち出せなかった。

日本GPでアロンソがホンダのエンジンは下位クラスのGP2レベルだと叫んだが、エンジン本体が非力である上に、回生パワーによる加速も無ければ、メルセデスはもとよりフェラーリやルノーにも太刀打ちできなかった。ホンダが惨敗したのはこのような技術的な問題が原因であった。


今シーズン開幕を前にマクラーレン・ホンダは新車MP4-31を登場させる。当然、昨年の課題が大幅に改善されているが、今年の戦略は一足飛びに表彰台を狙うのではなく、まず10位以内に着実に定着することだ。

パワー・ユニット供給先で見てみるとメルセデスを搭載した昨年のチームは、1位メルセデス、3位ウィリアム、5位フォースインディア、6位ロータスの4チーム、フェラーリは2位フェラーリ、8位ザウバー、10位マノーマルシャ、ルノーは、4位レッドブル、7位トロロッソ、ホンダは、9位マクラーレン・ホンダである。トロロッソは今年メルセデスを搭載する。新加入チームのハースはフェラーリを搭載。エネルギー回生システムの導入が個人やチームの成績に大きな影響を与えていることが分かる。


文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz/)を経営

F1観戦の楽しみ方

グランプリ会場となる広大なアルバート・パーク
グランプリ会場となる広大なアルバート・パーク

■ F1会場のアルバート・パーク
 F1GPレースは、美しいアルバート・パーク湖を周回する5.3キロの公道を使用して行われる。レースの数日ほど前まで公園として使えるためにレース・コースを自転車やジョギングで回ることができる。運が良ければ、大型トレーラーで各チームのマシンが搬入されるのも出合える。会場には、公園全体にわたって10カ所の入場ゲートがあるが今年は大幅な変更がある。シティから約10分のシャトル便トラムがいくつかのゲートとシティを往復する。入場券を持った人は無料だが、途中下車できないので注意。

■ 入場ゲートとお薦めの観戦場所
 広大なアルバート・パークのどこで観戦するかは重要なポイント。ゲートで無料配布の地図を入手し、レース開始2時間前には観戦場所を確保しよう。アルバート・パーク湖が中央にあり、レース・コースの外側に場所を取るか、陸橋を渡って内側に回るかは早めに決めたい。F1の高速感と甲高いエンジン音を楽しむなら直線部分だが熟練しないとどのチームのマシンなのか良く分からない。写真を撮るなど、マシンを見たいならばコーナーがお薦めだが、かなりの混雑が予想される。
 1番ゲートは一般入場券(GA: General Admission)では入場できないが、1番以外のゲートはGAで入場できる。4番、6番、7番ゲートは今年閉鎖されるので注意。

1番ゲート:
 メイン・ゲートであり催し物会場、飲食屋台、F1GPグッズなどの土産物売り場、プレミア観客スタンドや企業用スタンドが並ぶ。陸橋を渡り、湖側を左へ行くと第2コーナーから第3コーナーにかけて広い芝生の丘があり、お薦めの観戦場所。直線での高速F1の走りを楽しめる。早めに良い場所を陣取ること。メイン・ゲートから陸橋を渡らずに、左に歩いていった場所にも芝生の丘が広がる。

2番ゲート:
 メイン・ゲート前の中央部へ行くにはこちらからの入場が最短。入って右側や陸橋を超えて右側に芝生席が広がり、スタート直後の第2コーナーから立ち上がって高速走行に入るF1マシンの疾走を楽しめる。
 MSACスポーツ・センター前の第3コーナーから第6コーナーは、カーブが多く加速減速を繰り返す低速での走行が楽しめる。観客席との距離も近く、F1マシンとの一体感も楽しめる。写真を撮るならばこの辺りがお薦め。スピンや事故が起こりやすいのもこの辺り。特にスタート直後は、目が離せない。

3番ゲート:
 市内からは一番近いゲート。市内のスペンサー通りから真っすぐ歩くと到達する。第3、第4コーナーがあり、F1マシンが大きく減速するのが間近で見られる。近くに陸橋がなく、狭いスペースなので移動に戸惑う。

5番ゲート:
 セント・キルダ通りで一般トラムを利用しよう。第9コーナーは、スピンしやすい場所でクラッシュの可能性があり劇的なシャッター・チャンスが望める。ただし、人気のエリアへ出るにはかなり歩く。

8番ゲート、9番ゲート:
 GP専用トラム・ストップあり。第10コーナーから13コーナーにかけては、F1マシンの高速が楽しめるバック・ストレッチ。この辺りは観客が少なくお薦めで、グッズの販売店、イベント広場、キッズ・コーナーもあり、家族連れがのんびり楽しめる。アルバート・パーク湖に仮設浮橋があり、反対側に歩いて湖を渡ることができるので、湖の両岸を行き来して楽しむのもいい。レース前になると往来する人が増えて入場制限されるので注意。

10番ゲート:
 GP専用トラム・ストップあり。第15コーナーは、左曲がりシケインで一番減速する場所。写真撮影には一番の場所。陸橋を渡ってメイン・ゲート前の催し物エリアへのアクセスも良くお薦め。

■ 決勝当日のスケジュール

・ 10:15AM…ゲートがオープン
・ 11AM~2PM…ビンテージ・カー、スタントカー・ショー、欧州名車パレード、V8スーパー・カー・レース
・ 2:30PM…F1ドライバーのパレード
・ 2:35PM…空軍機によるアクロバット飛行
・ 3:10PM…空軍新鋭機の高速飛行
・ 3:46PM…国家斉唱
・ 3:52PM…豪州空軍の大型機が会場上空を飛行
・ 4PM…F1GPレース・スタート
・ 5:30PM…レース終了予定

3月下旬とはいえ高温も予想される。日焼け対策も十分にしておくこと。サングラス、帽子は必需品。日焼け止めは2時間ごとに塗布し、水も定期的に補給すること。耳栓はあちこちで販売されているが、必ずしも必要ではない。酒類の持ち込みは禁止されており、ゲートで没収されるので注意。

2016 F1 Rolex Australian Grand Prix
会場:Albert Park VIC
日程:3月17 日(木)~20日(日)
入場料:決勝$99、4日券$189など
Web: www.grandprix.com.au

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