AFLグランド・ファイナル観戦ガイド(2016年10月1日開催)


スポーツ大国オーストラリアの国技とも言えるオーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)もいよいよチャンピオン・チームを決めるファイナル・シリーズを迎えた。レギュラー・シーズンはVIC州メルボルンに拠点を置くホーソン・ホークス(Hawthorn Hawks)がトップで終盤を迎えている。ここ数年は「ホークスの全盛時代」と言っても過言ではなく、2016年もグランド・ファイナル(GF)の本命と言えよう。(記事は8月21日時点のもの)文=板屋雅博

ホークス、4連覇達成なるか?

ホークスはGF3連覇中で、今年も勝てば4連覇達成となる。120年のAFLの長い歴史の中で4連覇は1920年代のコリウッドだけである。昨年ホークスはレギュラー・シーズン3位に終わったが、ファイナル・シリーズではもたつきながら、GFでウエスト・コースト・イーグルス(West Coast Eagles)を破って3連覇を達成した。

今年前半は、ノース・メルボルン・カンガルーズ(North Melbourne Kangaroos、通称ルーズ)が9連勝して始まり、カンガルーズ・ファンは17年ぶりの優勝と熱狂したが、その後は3勝8敗という残念な結果になりファイナル・シリーズへの条件である8位ぎりぎりの状況である。注目選手はブレント・ハーヴェイ(通称ブーマー、38歳)でAFL史上最多出場記録を更新中の最古参選手。しかし今年も31ゴールを記録するなど、大活躍中だ。ゴール・キッカーではタスマニア出身の23歳の若手ベン・ブラウンが前半戦で活躍した。

ホークスのキャプテン、ルーク・ホッジ
ホークスのキャプテン、ルーク・ホッジ

AFLはVIC州が10チーム、QLD州、NSW州、SA州、WA州が各2チームの1リーグ制全18チームで構成される。レギュラー・シーズンは23ラウンド(週:各チーム23試合)で3月から8月まで戦う。上位8チームで9月にファイナル・シリーズを行い最後にGFでシーズン優勝を決定する。

GF優勝本命のホークスは、粘り強く攻守にバランスが取れたチームだが、上位チームの中では得点数で6位、失点数でも6番目と悪い。実力では劣るが優勝を勝ち取るとすれば経験の差であろう。キャプテンのルークホッジ、キッカーでは大砲ジェリー・ラフヘッド。サム・ミッチェルなどが注目の選手。シリル・リオリは、アボリジニー出身のミッドフィルダー選手だが、AFLの選手ランキングではチーム・トップ6位の名選手である。

ホークスは、第22週でイーグルスに負けたために、シドニー・スワンズ(Sydney Swans)、アデレード・クロウズ(Adelaide Crows)、ジーロン・キャッツ(Geelong Cats)が16勝で並んだ。

注目のチームと選手

■ジーロン・キャッツ

VIC州ジーロン市を拠点とし、メルボルン・デーモンズに次ぎAFLで2番目に古い歴史を誇る名門チーム。2007年から10年までは最強のチームの1つとして君臨したが、その後はホーソンの後塵を拝している。優勝9回。
 闘将のキャプテン、ジョエル・セルウッドはAFL選抜チームにも選ばれた名選手でチームを引っ張る。ゴール・キッカーでは大砲のトム・ホーキンス(愛称トマホーク)が注目。10年GF優勝メンバーでブロウンロー・メダル受賞者のジミー・バーテルは、チームの若返り方針により今シーズンを最後にキャッツを去ると見られている。

■シドニー・スワンズ

スワンズの注目選手ランス・フランクリン
スワンズの注目選手ランス・フランクリン

母体はサウス・メルボルン。新天地を求めて1982年にシドニーへ移動。拠点をシドニーに移してからも長らく低迷が続いたが05年と12年に優勝するなど、ここ10年は上位チームとして好成績を残している。
 注目選手はランス・フランクリン(通称バディー)。ホークスから14年に移動しており、ホークスとの因縁の対決が見ものだ。最もゴール数が多い選手に与えられるAFLコールマン賞を3度受賞した大型キッカーで今年も既に67ゴールを記録している。AFL選手ランキング4位のジョシュ・ケネディもホーソンからの移籍選手であり、ブロウンロー・メダルの候補である。

■グレーター・ウェスタン・シドニー・ジャイアンツ

優勝の可能性は小さいが注目のチームである。シドニーの第2チームとして12年に参戦したAFLで最も若いチームだ。昨年までは最下位などで低迷したが、今シーズンは暫定6位と大健闘している。ジーロン・キャッツの若返り策で放出された10年優勝メンバーのスティーブ・ジョンソン(愛称スティービー・ジェイ)の活躍が注目される。

■ウエスト・コースト・イーグルス

パース・スタジアムを本拠地とする。1987年AFL加入と比較的歴史が浅いチームながら3回の優勝を誇る。昨年はGFでホークスに惨敗しており雪辱を誓っている。
 注目選手はラックマンのニック・ナイタヌイ。身長201センチ、体重105キロと大柄ながらタックルも素晴らしい好選手。
 WA州のもう1つのチームであるフリーマントル・ドッカーズは昨年のレギュラーシーズンで優勝し、GF初優勝を目指したが、準決勝でホークスに惨敗した。今年は下位に低迷している。

■アデレード・クロウズ

SA州アデレードに本拠地があるチーム。1991年にAFLに参戦した比較的新しいチームだが、97年と翌年の2連続GF優勝の経験がある。18年ぶりの王座奪還を狙っている。注目選手は、主砲ゴール・キッカーのエディー・ベッツ。昨年は63本、今年も既に66本のゴールを決めている。SA州にはもう1チーム、ポート・アデレード・パワーがあり、こちらは146年の歴史を誇るがGF優勝は1回のみである。

GF前日が祝日に!?

ダニエル・アンドリュースVIC州首相は昨年、AFLのGF前日を州の祝日とすると発表した。祝日制定の背景には、同日に行われるGFパレードでの混乱を避けることや、GFを盛り上げ経済効果を図るなど、さまざまな効果を狙ったものと見られている。

GFパレードは誰でも参加可能。GFチケットを入手できなかった人を含め、およそ10万人もの人びとが訪れると予想され、パレードは超満員の状態となる。

スポーツ・イベントで祝日となるのはメルボルン・カップに続いて2例目。考え方が柔軟で、イベント好きなメルボルンならでは。大会当日を祝日にするならまだしも、大会前日を祝日にするのは日本人には理解しがたいが、日本で新たに制定された祝日「山の日」になどに比べれば、この祝日は明確で分かりやすい。

なお、GFパレードはメルボルン中心部を行進する従来のルートから、中心部をスタート地点としてMCGを終点とするルートに変更された。あまりにもたくさんの観客が押し寄せるので、安全性を確保するためである。

GFが行われるMCG(メルボルン・クリケット・グラウンド)は、10万人を収容する世界でも最大級の競技場である。1853年に初代競技場が建設され、1956年メルボルン・オリンピックの際に大幅に改築された。過去のGFでは13万人の観客を収容したこともある。最近では400億円ほどの資金で大改修を行った。

AFLグランド・ファイナルの会場となるMCG(メルボルン・クリケット・グラウンド)
AFLグランド・ファイナルの会場となるMCG(メルボルン・クリケット・グラウンド)

余談だが、20年開催の東京五輪のメイン会場である新国立競技場は最大でも8万人規模であるが、3,000億円以上もの莫大な建設費がかかる見込みだ。

MCG入場券を入手するのは非常に困難で、熱心なファンは子どもが生まれるとすぐに豪州最古で最大のメンバー・クラブであるMCC(メルボルン・クリケット・クラブ)に加入申請する。MCCは、MCGを運営する団体で会員数は約10万人。順番待ちリストには20万人以上が登録され、入会まで40年かかると言われている。MCCの会員になるとMCGのチケット購入優先権が得られる。AFLのウェブサイトでも1人1,000ドル以上のパッケージ席が購入可能である。

AFLはオーストラリアで最も人気があるスポーツでもあり、メイン・スポンサーがトヨタ自動車である他、ヤクルト、マツダ、リコー、富士ゼロックス、コマツなどの日本企業もAFLを支援している。

AFLのルールを知ろう

オーストラリアン・フットボールには、オージー・ルールとも呼ばれる独特のルールがある。

競技場は、楕円形でオーバルと呼ばれ、サッカー場の2倍以上の広さを持つ。ラグビー・ボールより少し小さな楕円形の革製ボールを使用する。

ボールは楕円形で、メルボルンのシェリン社が独占供給
ボールは楕円形で、メルボルンのシェリン社が独占供給

プレーする選手数は、1チーム18人。試合開始は中央(センター・サークル)でアンパイヤ(審判)がボールを地面に叩き付ける(センター・バウンス)。

高く跳ね上がったボールを、2メートルを超える長身の選手(ラックマン)が高く飛び上がって奪い合う。長身のラックマンが高く飛ぶ空中戦がAFLの見所の1つ。

ラックマンが奪取したボールを処理するのは、小柄なミッドフィルダー。大柄なラックマンやゴール・キッカーに比べて派手さはないが、試合を左右する重要なポジションである。ゴールドコースト・サンズのゲリー・アブレットやジーロンのジョエル・セルウッドが代表格だ。

キックを多用する点でサッカーに似ており、ボールを集団で奪い合うところはラグビーに似ているが、高く舞い上がったボールを奪い合う点ではバスケットボールに似ている。

パスは、ハンドパスと呼ばれボールの下端を手で叩いて放る。ラグビーと違って前方へもパスをすることができる。遠距離へのパスはキックも使える。ボールを持ったまま走る場合、15メートルに1回バウンドさせる必要がある。

■スコアの数え方

AFLのグランドには、両サイドの中央に高いポールが2本、外側に低いポールが2本立っている。中央のポール間に蹴り込むと6点(ゴール)。外側に蹴り込むと1点(ビハインド)が得点される。ゴロでも良いが、必ず蹴りこむことが必要。
 ゴールの際には、ゴール・アンパイアは独特の動作で両手の人差し指を前に突き出す。アンパイアのコミカルな動作にも注目したい。ここ数年で女性アンパイアも増えている。
 ゲームは4クオーター(Q)制で行われる。各20分だがロス・タイムがあるので実質25分ほどになる。2Qが終わった時点でハーフタイムとなるが休み時間を利用してフィールドでは各種催し物が行われる。ファンの子どもたちがフットボールをして楽しむ姿も見られる。

■AFLにはオフサイドがない?

AFLルールの大きなポイントはオフサイドが無い点だ。ミッドフィルダーからキックされたボールをゴール前で待ち構えるフォワードがキャッチ(マーク)すると、フリー・キックが与えられ、中央ゴールに蹴り込むといとも簡単に6点が入る。AFLで100点を越える得点になることが多いのはこの理由である。選手が疲れてきた4Qに大逆転が起こるので最後まで見届けたい。

■AFLグランド・ファイナル
日時:10月1日(土)2:30PM
会場:Melbourne Cricket Ground (MCG)、Brunton Ave., Jolimont VIC
Tel: (03) 9657-8867
Web: www.AFL.com.au

GFウイークの主な行事

◆ブロウンロー・メダル授賞式
(日時:9月26日(月)7PM、会場:クラウン・カジノ)

会場となるクラウン・メルボルン外観
会場となるクラウン・メルボルン外観

最優秀選手賞だが、フェアプレーも重視される。各試合で審判が記入した得点シートを授賞式の際に合計して発表する。AFLでは、全登録選手をゴール数、タックル数、ボール処理数、ラン距離など多くの指標を設けて選手をポイントで評価して試合ごとに発表している。チーム成績とは別に、選手の位置付けが分かりやすい。
 午後5時からアトリウムのエントランスに敷かれたブルー・カーペットで入場が始まるが、選手よりもむしろモデル顔負けの美人の奥様やガールフレンドと豪華な宝石とファッションに注目が集まる。
 昨年の受賞者は、筆者の記事予測が当たってフリーマントルのナット・ファイルであった。今年の筆者の予想は、シドニー・スワンズのルーク・パーカーまたはジーロン・キャッツのパトリック・デンジャーフィールドだが、若干パーカーが優位と見られる。

◆GF出場チーム・パレード
(日時:9月30日(金)12PM、場所:メルボルン市内)

昨年から新しいルートに変更された。メルボルン市内スプリング通りにあるオールド・トレジャリー・ビルからヤラ・パークのMCGまでパレードが行われる。GFの両チーム全選手によるパレードが行われ特設ステージでセレモニーが行われる。パレード最後に特設スタジオで両チームのキャプテンがGF優勝カップを前に健闘を誓うところが見どころ。

◆AFLグランド・ファイナル
(日時:10月1日(土)2:30PM、会場:MCG)

会場近くのパブで盛り上がるファンたちの姿
会場近くのパブで盛り上がるファンたちの姿

GFが行われる週は「GFウィーク」と呼ばれ、メルボルン全体が興奮に包まれる。ファイナル・シリーズが行われる9月にメルボルン市内を歩けば、マフラーや帽子など応援するチームのAFLグッズを身にまとった人びとに出くわす。ビジネス界や政界でも、ひいきにしているチームのネクタイをしている人も多い。ほとんどのメルボルンっ子はGF会場には入れないので、自宅や公園でパーティーをして盛り上がる。市内のパブでもGFのテレビを放映して、多くの人が集う。

◆優勝チームのお披露目会
(日時:10月1日(土)6PM、会場:フェデレーション・スクエア)

優勝チーム選手がファンにお披露目。大人数が集まるので、GF終了直後には向かった方が無難。

◆優勝チーム・ファン祝賀会
(日時:10月2日(日)12PM~3PM、会場:優勝チームのホーム・グラウンド)

詳細な場所・時間は当日の新聞またはチームのサイトに掲載されるので要チェック。

文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表。
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz/)を経営

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