AFLグランド・ファイナル観戦ガイド2017

AFLグランド・ファイナル観戦ガイド2017 AFL FINAL SERIES

VIC州発祥のスポーツであり、プロ競技は他州でも絶大な人気を誇るオーストラリアン·フットボール·リーグ(AFL)の年間優勝を決めるグランド・ファイナル(GF)の季節となった。今年はアデレード・クロウズが初戦から安定して勝利を重ねてトップで終盤を迎えているが、栄冠を掴むのは果たしてどのチームか。9月最終週に年間チャンピオンを決めるGFが行われる。(記事の情報は8月20日時点のもの) 文=板屋雅博

時代の移り変わりを見せた今季

グランド・ファイナル会場のMCG(メルボルン・クリケット・グラウンド)外観
グランド・ファイナル会場のMCG(メルボルン・クリケット・グラウンド)外観

この5年間は「ホーソン・ホークス」(以下、ホーソン)の時代と言われ、昨年もGF本命と言われながら結果的に伏兵のウェスタン・ブルドッグスがGF優勝をさらった。ところが今シーズンのホーソンは初戦から4連敗して下位に低迷している。ブルドッグスも後半戦で連敗を重ねてファイナル進出が危うい。ファン数ナンバー・ワンで人気チームのコリンウッドも10位以下で元気がない。ホーソンの時代を引き継ぐのはどのチームなのか、時代の変わり目の年として注目したい。

注目チームの戦力分析

アデレード・クロウズ

SA州アデレードを本拠地とし、1990年に設立。過去2回のGF優勝経験がある。この5年は5位、7位、10位、11位、2位とまずまずの成績を残している。今年は、2位が5週ほどあるがシーズンのほとんどを通じて1位で終盤まで来ている。主力選手は、フォワードのテイラー・ウォーカー、同じくフォワードのエディー・ベッツの2枚の大砲キッカーをそろえている。更にミッド・フィルダーのマット・クラウチなど好選手も抱える。ただし、2012年の2位を除けばトップ・チームとの競い合いの経験が足りないのが不安材料。

GWSジャイアンツ

シドニー西部とキャンベラを本拠地とし12年から参戦した最も新しいチーム。既存17チームから選手を集めた。最下位からのスタートだったが、昨年は4位に急浮上し、目覚ましい活躍を見せている。過去の実績はないが、ダーク・ホースとなっている。注目の選手は、元ジーロンのスター選手で「スティービー・J」の愛称を持つスティーブ・ジョンソン。

リッチモンド・タイガース

1885年設立で優勝10回の古豪名門チーム。1980年の優勝を最後に長く低迷が続いたが、この5年ほどは上位に定着してきた。有料会員数もベスト3に入り熱狂的なサポーターが多く、37年ぶりの優勝、古豪復活をファンならずとも応援している。注目はキッカーのスター選手であるジャック・リーウォルド(セントキルダのスター選手、ニック・リーウォルドのおい)、ミッド・フィルダーのダスティン・マーチン、キャプテンのトレント・コチン。

ジーロン・キャッツ

この10年では07年、09年、11年と3回のGF優勝を含め、上位に陣取っている。設立は1859年と2番目に古い名門チーム。11年の優勝メンバーの多くは引退やトレードで去ったが、今年は優勝を狙っている。AFLでナンバー・ワンと言われるキャプテン、闘将ジョエル・セルウッドと弟のスコット・セルウッド、「トマホーク」の愛称の大砲キッカーのトム・ホーキンス、昨年ブロウンロー・メダルを受賞したパトリック・デンジャーフィールドが注目の選手。優勝候補筆頭と言いたいが、終盤戦でアデレード、シドニーに負けたのが気になるところだ。

シドニー・スワンズ

母体はサウス・メルボルンだが、新天地を求めて1982年にシドニーへ移動。長らく低迷が続いたが2005年と12年にGF優勝するなどこの10年は上位に定着している。今シーズンは、初戦から6連敗したが、その後は10勝2敗で這い上がってきた。注目の選手はランス・フランクリン(愛称バディー)。最もゴール数が多い選手に与えられるAFLコールマン賞を3度受賞した大型キッカーで今年も既に59ゴールを記録している。キャプテンのジョシュ・ケネディは常に選手ランキング上位に位置する好選手でブロウンロー・メダルの候補である。順位は低いが実績から言うと優勝候補の1つである。

メルボルン・デーモンズ

AFL最古のチームでオーストラリアン・フットボールの伝説のチームだが、1964年以来は優勝がなく、この10年はファイナルにも一度も進んでいない。GF優勝は無理としても何とかファイナルに進んでもらいたい。

ウェスタン・ブルドッグス

メルボルン西部のフッツクレイが本拠地。昨年はシーズン7位であったが、ファイナル・シリーズを4連勝して62年ぶりのGF優勝を勝ち取った。今年もファイナル進出ぎりぎりの成績だが、しぶとさが身上のチームだけに上位進出を狙っている。8月20日時点で、ブルドッグスとエッセンドン・ボンバーズ、ウェストコースト・イーグルス、セントキルダ・セインツが最後の1枠を狙ってしのぎを削っている。

ラックマンによるボールの奪い合いはAFLの華
ラックマンによるボールの奪い合いはAFLの華
シドニー・スワンズのキャプテンでブロウンロー・メダル候補、ジョシュ・ケネディ
シドニー・スワンズのキャプテンでブロウンロー・メダル候補、ジョシュ・ケネディ

AFL基本情報

AFLのチームと試合数

メルボルンが発祥の地であり、1リーグ制18チームの中でVIC州が10チーム、QLD州、NSW州、SA州、WA州が各2チームの構成だ。NSW州のGWSジャイアンツ、QLD州のゴールドコースト・サンズが最近新たに加わったチームである。
 レギュラー・シーズンは、3月下旬から8月末まで23ラウンドが行われる。各チーム1回の不戦週があるので、実際には22試合を戦う。日本のプロ野球140試合に比べると非常に少ない。18チームで22戦だと、2回対戦する相手チームと1回しか対戦しないチームが出てくる。9チーム×2リーグ制にして、各2回ずつ戦う18ラウンド制にする方が日本人にとっては合理的と思うが、そのような議論はAFLからは聞こえてこない。

ファイナル・シリーズ

ファイナル・シリーズはシーズン上位8チームで争われるが、1位、2位のチームは本拠地のスタジアムが使えるなど圧倒的に有利な仕組みになっている。下位4チームが勝ち進むのは困難であり歴史上めったにないのだが、昨年のウェスタン・ブルドッグはそのめったにない優勝例であった。ファイナル進出は、監督や選手の業績となるだけに必死で戦っている。

グランド・ファイナル・フライデー

州政府公式サイトによると昨年同様に、今年と来年のGF前日を祝日・公休日と決定した。VIC州首相のダニエル・アンドリュースが2年前に決定したものである。
 VIC州発祥のAFLを州政府として応援すると共に、経済効果を狙ったとされている。民間のスポーツ大会の前日を祝日にするのは日本では考えられないが、メルボルン・カップ・デーの前例がありイベントが大好きなVIC州ならではのお祭りである。

GF入場者と視聴者

GFは伝統的に9月の最終土曜日にメルボルン・クリケット・グラウンドで行われる。昨年の入場者数は9万9,981人であるが、入場券の入手は非常に難しい。AFLのサイトでは1,200ドルから販売している。テレビではセブン・ネットワークで放映され、650万人が視聴する。

AFLのルールとは

オージー・ルール

オーストラリアン・フットボールは「オージー・ルール」と呼ばれる独特の規定を持つ。競技場は、楕円形で「オーバル」と呼ばれ、サッカー場の2倍以上の広さを持つ。ラグビー・ボールより少し小さな楕円形の革製ボールを使用する。

プレーする選手数は、1チーム18人。試合開始は中央(センター・サークル)でアンパイア(審判)がボールを地面にたたき付ける(センター・バウンス)。

高く跳ね上がったボールを、2メートルを超える長身の選手(ラックマン)が高く飛び上がって奪い合う。アデレードのサム・ジェイコブス、ジーロンのザック・スミスなどに代表される長身のラックマンが高く飛ぶ空中戦がAFLの見所の1つ。

ラックマンが奪取したボールを処理するのは、小柄なミッド・フィルダーである。大柄なラックマンやゴール・キッカーに比べて派手さはないが、試合を左右する重要なポジションである。ゴールドコースト・サンズのゲリー・アブレットやジーロンのジョエル・セルウッドが代表格である。

キックを多用する点でサッカーに似ており、ボールを集団で奪い合うところはラグビーに似ているが、高く舞い上がったボールを奪い合う点ではバスケットボールに似ている。パスは、「ハンド・パス」と呼ばれボールの下端を手で叩いて放る。ラグビーと違って前方へもパスをすることができる。遠距離へのパスはキックも使える。

ボールを持ったまま走る場合には15メートルに1回、バウンドさせる必要がある。キックされたボールを、ノー・バウンドで取ると「マーク」となる。マークを取るとプレーヤーはフリー・キックか、試合続行かを選ぶことができる。

得点

AFLのグランドには、両サイドの中央に高いポールが2本、外側に低いポールが2本立っている。中央のポール間に蹴り込むと6点(ゴール)。外側に蹴り込むと1点(ビハインド)が得点される。ゴロでも良いが、必ず蹴り込むことが必要。

GF優勝カップを手にするのは一体どのチームか
GF優勝カップを手にするのは一体どのチームか

ゴールの際には、ゴール・アンパイアは独特の動作で両手の人さし指を前に突き出す。アンパイアのコミカルな動作にも注目したい。この数年で女性アンパイヤも増えている。

ゲームは4クオーター制(Q)で行われる。各20分だがロス・タイムがあるので実質25分ほどになる。2Qが終わった時点でハーフ・タイムとなるが休み時間を利用してフィールドでは各種の催し物が行われる。ファンの子どもたちがフットボールをして楽しむ姿が見られる。

AFLルールの大きなポイントはオフサイドがない点だ。

ミッド・フィルダーからキックされたボールをゴール前で待ち構えるフォワードがマークすると、フリー・キックが与えられ、中央ゴールに蹴り込むといとも簡単に6点が入る。AFLで100点を越える得点になることが多いのはこの理由である。選手が疲れてきた4Qに大逆転が起こるので最後まで見届けたい。

■AFL Grand Final 2017
日時:9月30日(土)2:30PM
会場:Melbourne Cricket Ground(MCG), Brunton Ave., Richmond VIC
Tel: (03)9657-8867
Web: www.afl.com.au

GFウィークの主な行事

◆ブロウンロー・メダル授賞式
(日時:9月25日(月)7PM、会場:クラウン・カジノ)

最優秀選手賞だが、フェア・プレーも重視される。各試合で審判が記入した得点シートを授賞式の際に合計して発表する。授賞式の様子は、テレビ中継される。
 AFLでは、全登録選手をゴール数、タックル数、ボール処理数、ラン距離など多くの指標を設けて選手をポイントで評価して試合ごとに発表している。チーム成績とは別に、選手の位置づけが分かりやすい。
 午後5時からアトリウムのエントランスに敷かれたブルー・カーペットで入場が始まるが、選手よりもむしろモデル顔負けの美人の奥様やガール・フレンドと豪華な宝石とファッションに注目が集まる。今年の筆者の予想は、リッチモンドのダスティン・マーティン、またはホーソンのトム・ミッチェル。ホーソンは、ファイナル圏外であり、ダスティン・マーティンで決まりだろう。

◆GF出場チーム・パレード
(日時:9月29日(金)11AM、場所:メルボルン市内)

GF出場チーム・パレードでファンの声に笑顔を見せる選手
GF出場チーム・パレードでファンの声に笑顔を見せる選手

メルボルン市内オールド・トレジャリー・ビルからスプリング通りを南下して、ウェリントン・パレードを東へ進み、ヤラパークのMCGまでパレードが行われる。両チームの選手がオープン・カーに乗り、両側を約10万人の観衆が見守る。
 パレードにはGFチケットを入手できなかった人びとを含め誰でも参加できるために超満員の状態となる。パレード好きのメルボルンでも最大の観客が集まる。
 MCG前の特設ステージでセレモニーが行われ、両チームのキャプテンがGF優勝カップを前に健闘を誓うところが見どころ。早めに特設ステージ前に陣取ることがこつである。午前10時から午後2時まで市内の主要道路は閉鎖になるので注意。

◆AFLグランド・ファイナル
(日時:9月30日(土)2:30PM、会場:MCG)

その週は「GFウィーク」と呼ばれメルボルン全体が興奮に包まれる。ファイナル・シリーズが行われる9月はメルボルン市内を歩くとマフラーや帽子などひいきのチームのAFLグッズを身にまとった人びとに出会う。ビジネス界や政界でもひいきのチームのネクタイをしている人も多い。ほとんどのメルボルンっ子はGF会場には入れないので、自宅や公園でパーティをして盛り上がる。市内のほとんどのパブでもGFのテレビを放映。

◆優勝チームお披露目
(日時:9月30日(土)6PM、会場:フェデレーション・スクエア)

優勝チーム選手がファンにお披露目され、多くのサポーターたちでにぎわう。

◆優勝チームファン感謝祭
(日程:10月1日(日)、会場:優勝チームのホーム・グラウンド)

場所及び時間の詳細は、当日の新聞または優勝チームのサイトに掲載されるので要チェック。選手たちの話もたっぷり聞け、選手と一緒に写真を撮ることもできる。

文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表。
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz/)を経営

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