【2018年全豪オープン総括】王者たちによる強さの証明

2018年全豪オープン総括
王者たちによる強さの証明

2018年全豪オープンでは、ロジャー・フェデラーが同大会6度目の優勝を遂げ、女子はキャロライン・ウォズニアッキが涙の初優勝、車いす部門では国枝慎吾が復活の優勝を果たした。グランド・スラム(GS)の第1戦、全豪オープンはメルボルン市内のメルボルン・パークで1月15日から28日まで行われた。今年の全豪を振り返る(世界ランクは全豪開幕時)。(文・写真=板屋雅博)

連覇を果たし世界中のファンの期待に応えたフェデラー
連覇を果たし世界中のファンの期待に応えたフェデラー
今大会で「無冠の女王」の汚名を返上したウォズニアッキ
今大会で「無冠の女王」の汚名を返上したウォズニアッキ

男子シングルスはフェデラーが連覇

 今大会の話題筆頭は、韓国の新星チョン・ヒョン(21歳、58位)だろう。

 3回戦では若手筆頭のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ、20歳、4位)をフル・セットで撃破し、4回戦では、一昨年までの絶対王者で雪辱を期すノバク・ジョコビッチ(セルビア、29歳、14位)をストレートで倒した。2セットがタイ・ブレークにもつれる接戦だったが、若く勢いがあるヒョンが押し切った。準決勝では、フェデラーに挑んだが、残念ながら2セット目で棄権した。ヒョンは、全豪後に世界ランクを29位にまで伸ばした。

全豪制覇に1歩届かなかったチリッチ
全豪制覇に1歩届かなかったチリッチ
準決勝最終セット途中で無念の棄権をしたナダル
準決勝最終セット途中で無念の棄権をしたナダル

 今年も活躍が期待されたラファエル・ナダル(スペイン、31歳、1位)は、準決勝で優勝候補の一角であるマリン・チリッチ(クロアチア、29歳、6位)にフル・セットの大激戦の末、最終セット途中で棄権した。グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア、26歳、3位)は、ベスト8でイギリスの新鋭カイル・エドモンド(23歳、49位)に1-3と惨敗した。

 優勝候補のナダル、ジョコビッチ、ズベレフ、ディミトロフが早い段階で脱落していく中で、世界の注目はフェデラー(スイス、35歳、2位)に集まった。今大会、フェデラーは決勝までの6試合で1セットも落とさず好調を維持した状態で最後の戦いに挑んだ。決勝の相手は、14年の全米オープンで錦織圭を破って優勝したベテランのチリッチ。フル・セットの激闘の末、ロッド・レーバー・アリーナ(RLA)の観客や世界中のファンの期待通りフェデラーが優勝した。フェデラーは、GS優勝回数を前人未到の20回に伸ばした。2位はナダルの16回。3位はピート・サンプラスの14回、4位はジョコビッチの12回。

ウォズニアッキ、涙のGS初制覇

 女子シングルスでは、キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク、27歳、2位)が優勝候補筆頭のシモーナ・ハレプ(ルーマニア、26歳、1位)を破り涙のGS初優勝を飾った。浮き沈みが激しい女子シングルスの世界だが、ウォズニアッキもその1人である。2010年に世界1位になり、翌年も1位。09年と14年の全米オープンでは決勝に進出したが敗退。「無冠の女王」と呼ばれて久しかった。ベテランの域に達していて優勝候補とはあまり呼ばれなくなっていたが、そんな中で遂に悲願のGS初優勝を遂げ、世界1位に返り咲いた。

 惜しくも準優勝のハレプは、未だ無冠の女王のまま。GS参戦8年目になり今回を含め準優勝3回であるが、大事な1戦を勝ち切れない。

 出場を予定されたセリーナ・ウィリアムズは結局、出場辞退。

 全英優勝のムグルサ(スペイン、24歳、3位)は2回戦で無名のシェ・シュウェイ(台湾、32歳、88位)に敗退した。シュウェイは、3回戦で第26シードのアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド、28歳、35位)も破っている。全仏優勝のエレナ・オスタペンコ(ラトビア、20歳、7位)は、3回戦で敗退。全仏を制したスローン・スティーブンス(アメリカ、24歳、13位)は1回戦で敗退した。

 人気ナンバー・ワンのマリア・シャラポワ(ロシア、30歳、48位)は、16年全豪で違反薬物を使用したことで15カ月の資格停止となっていたが、今年の全豪から正式に復帰。1回戦でタチヤナ・マリア(ドイツ、30歳、49位)に6-1、6-4のストレートで勝つと満員のマーガレット・コート・アリーナ(MCA)の観客からの暖かい拍手に包まれた。全豪後には早くも世界ランク41位に躍進した。

日本人男子健闘もあと1歩

杉田は世界トップ選手に勝ち実力を示した
杉田は世界トップ選手に勝ち実力を示した

 日本勢男子では杉田祐一(29歳、40位)が1回戦では格上の世界トップ・テン選手、ジャック・ソック(アメリカ、25歳、9位)を倒した。第1セットを6-1で圧倒すると、第2セットはタイ・ブレークを0-3とされながらも逆転で勝利をもぎ取った。好打のソックをミス52本に封じ込め、逆に杉田は14本のサービス・エース、53本のウィナーを決めトップ・テンと十分に渡り合える実力を今大会で示した。杉田は全豪初勝利を飾り、また公式戦でトップ・テンの選手を初めて撃破した。

 2回戦の相手は、ビッグ・サーバーのイボ・カルロビッチ(クロアチア、38歳、89位)。2メートル11センチの長身から繰り出される強烈なサーブが売りの選手で、この試合も53本ものサービス・エースを叩き込んだ。杉田も負けじと79本のウィナーを決め、自身のミスを22本に抑え、一方でカルロビッチから50本のミスを誘いだすなど、一歩も引かぬ勝負となった。全豪では、ファイナル・セットはタイ・ブレーク制度がないため第22ゲームまでもつれこみ、4時間33分に及んだ激戦の末に敗退した。しかし、全豪でつかんだ自信は大きく、今年のGSは活躍が期待される。

 西岡良仁(22歳、168位)は、公傷ランク制度(66位)を使っての全豪本戦出場。1回戦の相手はベテランで試合巧者のフィリップ・コールシュライバー(ドイツ、34歳、29位)。西岡は、左膝靱帯断裂で半年以上の療養後、大会2週間前に復帰したばかりであったが、フル・セットの末、第27シードの強豪を打ち破った。2回戦ではベテランのアンドレアス・セッピ(イタリア、33歳、76位)にストレートで敗れた。

 ダニエル太郎(24歳、99位)は、ジュリアン・ベネトー(フランス、36歳、55位)に1-3で敗退。予選から参戦した添田豪、伊藤竜馬、内山靖崇は本戦出場とはならなかった。

 また、手首故障のため昨年後半リハビリに専念していた錦織圭は、全豪には間に合わずに参加辞退となった。2月にアメリカ・ダラスで行われたATP下部大会に参加して復帰後初優勝を遂げた。100位以下の大会とはいえ、全豪でディミトロフをフル・セットまで追いつめたマッケンジー・マクドナルドを決勝で6-1、6-4で下し、全仏からのGS復帰を目指す。

大坂なおみ、日本勢唯一の4回戦進出

 日本勢女子では大坂なおみ(20歳、72位)が4回戦まで勝ち進み、セカンド・ウィークに残った唯一の日本人選手となった。全豪は決勝までの7回戦を男女それぞれ128人(うち予選通過者各16人)で戦うが、4回戦はベスト16であり世界の強豪が出そろう。1回戦は、クリスティーナ・クコバ(スロバキア、27歳、297位、公傷出場)にストレート勝利。2回戦は、エレナ・ヴェスニナ(ロシア、31歳、19位)にこちらもストレートで勝利した。トップ20でかなり格上の同選手だけに苦戦すると見られていたが、第1セットをタイ・ブレークで勝ち取ると、第2セットは6-2であっさり勝利。続く3回戦は地元オーストラリアの期待を集める若手アシュレイ・バーティ(21歳、17位)。バーティは、1回戦、2回戦を逆転で勝ち上がって勢いがあり、試合中は地元の大声援を受けた。本来はセンター・コートのRLAでの試合が予定されていたが、前の試合が長引いた関係で急きょMCAでの試合となった。トップ20のバーティが圧倒的に優勢と予想される中で、大坂はストレートで勝利した。試合後のインタビューでは、大坂のユーモアを交えた受け答えに観衆から大きな歓声を浴びた。

 4回戦は世界ナンバー・ワンのハレプに6-3、6-2のストレートで敗退した。第1セットで4回のブレーク・チャンスがあったが第1人者を相手に好機を生かし切れなかった。全豪後に世界ランクは51位に急上昇、目標をGS優勝と公言する大坂に期待したい。

 日比野菜緒(23歳、96位)、奈良くるみ(25歳、101位)、江口実沙(25歳、436位、公傷出場)は1回戦で敗退。予選出場の穂積絵莉、土井美咲、尾﨑里紗、今西美晴、波形純理は敗退。

15カ月の資格停止から復帰を果たしたシャラポワ
15カ月の資格停止から復帰を果たしたシャラポワ
大坂は日本人選手として唯一4回戦に進出
大坂は日本人選手として唯一4回戦に進出

オージー選手の活躍

 地元期待のニック・キリオス(22歳、17位)は、3回戦で難敵ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス、32歳、15位、)を3セットのタイ・ブレークを制して打ち勝った。4回戦でディミトロフに挑んだが、逆に3セットのタイ・ブレークをしのぎ切れずに敗れた。しかし、トップテンと互角の実力を示し、全豪後に14位に浮上。今後は、トップ・テン入りとGS優勝を狙う。

全豪オープンの賞金制度

世界ランク100位以内の選手が本戦に参加できるが、100位から200位の選手は予選からの出場となる。予選は男女各128人が参加し、3回戦を勝ち抜いた16人が本戦に出場できる仕組みとなっている。

 予選といっても賞金を手にでき、額は破格で、1回戦64万円、2回戦128万円、3回戦255万円と予選を突破すれば賞金447万円が手にできる。本戦の賞金は更にすごい。1回戦510万円、2回戦765万円、3回戦1,200万円である。4回戦で敗れた大坂なおみは、約2,500万円を手にしている。男女それぞれの優勝賞金は、3億4,000万円。

車いす部門

 車いす部門では、国枝慎吾(33歳、7位)が3年ぶりに復活の優勝を飾った。

 決勝戦では長年のライバルであるステファン・ウデ(フランス、47歳、3位)に4-6、6-1、7-6で逆転勝ちし、3年ぶり9度目の全豪優勝を果たした。

 決勝は、信じられないような逆転劇であった。ファイナル・セットを2-5と絶体絶命の状況にまで追いつめられ、3本のマッチポイントを握られて勝負あったかに見えたが、歴戦の強者である国枝は冷静に対処し2時間41分の激闘を制した。15年の全米オープン以来で、GS優勝は実に21回目となる。

 女子では、上地結衣(23歳、1位)が、新鋭のディーデ・デフロート(オランダ、21歳、2位)に6-7、4-6で敗れ2連覇を逃した。上地とデフロートの戦いは、今後も長く続くと見られる。

全豪オープン会場の開発計画

 この数年で全豪会場は大きく変貌している。MCAに開閉式屋根を取り付けて、第2センター・コートに昇格させ、センター・コートであるRLAと並んだことにより主要試合間での移動が簡単になった。

 RLAの2階部分にプラットフォームを設けMCAと一体化させ、セントラル・テラスと称する観客用多目的オープン・スペースを設置して、いろいろな催しができるようになり、セントラル・テラスから両センター・コートに入れるようになった。RLAに隣接した場所に観客用の多目的ビルが建設されており、来年には披露される。会場北側メイン・ゲートに巨大なメディア用ビルが完成したのも報道関係者には朗報であった。今後の計画としてはMCA(7,500席)に次ぐ5,000席の観客席を持つショー・コートが建設予定である。また南北のメイン・ゲートも一新される。特に初日と2日目は大混雑となる会場内が整備されることで歩きやすくなる。

 毎年、全豪オープン会場には大規模投資が計画されており、来年の同大会が待ち遠しい。


文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz)を経営

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