スーパー・ラグビー2018試合プレビュー「ワラタス対サンウルブズ」

Super Rugby 2018 試合プレビュー

ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・アルゼンチン・日本の5カ国の計15チームにより行われるラグビーの国際リーグ戦、スーパー・ラグビー。日本代表サンウルブズがオーストラリア勢と対戦することになった2018年シーズン、7月7日にはシドニーのアリアンツ・スタジアムでワラタスと激突する。スーパー・ラグビーとは何か、来豪するサンウルブズの今シーズンを含めた戦いぶりとはどのようなものか、両チームの注目選手や試合プレビューを本紙ラグビー・コラムの2人の筆者、山田美千子さん(GO! ワラビーズ in Japan)とYASUさん(豪州ラグビー通信)による視点と共に紹介する。注目の1戦をぜひスタジアムで観戦しよう。文=YASU(豪州ラグビー通信)、山田美千子(GO! ワラビーズ in Japan)構成=山内亮治

「スーパー・ラグビー」とは

世界最高峰の国際リーグ

1996年にオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの南半球3カ国による12チームで「スーパー12」として始まったラグビー(ユニオン)の国際リーグ。2006年には新たに2チームが加わり「スーパー14」へ、11年には更に1チームが追加され、各国5チームによる15チームとなり、それ以降は「スーパー・ラグビー」という名称となった。

1987年より始まったラグビー・ワールド・カップ(RWC)では、2015年までに8大会が行われ、ニュージーランドが3回、オーストラリアと南アフリカがそれぞれ2回ずつ優勝していることから、スーパー・ラグビーが事実上、世界最高峰の国際リーグと言える。16年には、南アフリカから更に1チーム、アルゼンチンの「ジャガーズ」、日本の「サンウルブズ」といった新たな2カ国からのチームも加わり、計5カ国18チームの編成となった。

23年目となる今年、18年シーズンは、3チームが減り、計15チームで熱戦が繰り広げられている。これまでの最多優勝はクルセイダーズ(ニュージーランド)が8回と他を圧倒。また、ブルース(3回)、チーフス(2回)、ハイランダーズ(1回)、ハリケーンズ(1回)と、ニュージーランド勢は、参加5チーム全てが優勝を経験。世界王者ニュージーランド代表「オール・ブラックス」の面々、並びにその予備軍たちの活躍が際立っている。オーストラリアにおいては、ブランビーズが、名将エディー・ジョーンズが指揮した01年に初優勝、04年には2度目の王者となっている。またレッズ(11年)、ワラタス(14年)もそれぞれ1回ずつ優勝している。南アフリカでは、ブルズが07年に初優勝。同年に行われたRWCでも、南アフリカ代表「スプリングボクス」が制した。その後、ブルズは09年、10年と計3回優勝しているが、南アフリカ勢のそれ以外のチームの優勝はまだない。

北半球から唯一参加しているサンウルブズは、日本を本拠地としているが、シンガポール、香港での試合もホーム・ゲームとして開催し、アジアにおけるラグビー発展を担っている。日本ラグビーは、代表チームの15年RWCでの活躍以降、スーパー・ラグビーに参戦していることもあり、世界の強豪と戦えるレベルに飛躍的に発展している。

スーパー・ラグビー2018基本情報

参加チーム

●オーストラリア・カンファレンス:ブランビーズ、レベルズ、レッズ、ワラタス、サンウルブズ(日本)
●ニュージーランド・カンファレンス:ブルーズ、チーフス、クルセイダーズ、ハイランダーズ、ハリケーンズ
●南アフリカ・カンファレンス:ブルズ、ライオンズ、シャークス、ストーマーズ、ジャガーズ(アルゼンチン)

大会概要

●レギュラー・シーズン:上記の各チームはカンファレンス内のホーム&アウェーで8試合、カンファレンス外のチームとホームで4試合、アウェーで4試合の計16試合を行う(サンウルブズの場合、ニュージーランド・カンファレンスの4チーム、南アフリカ・カンファレンスの4チームと対戦)
●プレー・オフ・トーナメント:各カンファレンス1位チーム、カンファレンス1位を除いた勝ち点最上位チーム、ワイルド・カード(全体勝ち点上位5位~8位)4チームの計8チームが進出(準々決勝7月21日、準決勝7月28日、決勝8月4日)

ルール

●勝ち点:勝ち=4点、引き分け=2点、負け=0点
●ボーナス・ポイント(1点):相手より3トライ以上多くトライ、7点差以内で負け

サンウルブズの参戦から今季までの戦いぶり

2015年チーム創設、3季目までの戦い

サンウルブズは2015年に創設され、16年シーズンからスーパー・ラグビーに参加している日本に拠点を置くチーム。初勝利は、16年4月13日、同じく16年シーズンから参加したアルゼンチンのジャガーズから、ホーム・秩父宮ラグビー場で36-28で挙げている。参戦初年度はこの1勝のみで最下位に終わった。

17年シーズンは、4月8日にブルズ(南アフリカ)を20-21、7月15日にはブルーズ(ニュージーランド)を21-48で破り2勝を挙げ、18チーム中17位の成績を残した。

オーストラリア・カンファレンス所属となった3シーズン目の18年、秩父宮ラグビー場で迎えた初戦のブランビーズ戦は、前半をリードしたものの、後半失速し、25-32で惜しくも勝利には届かなかった。次のレベルズ戦では、フィジカル面での弱さが露呈、開始早々にラファエレ・ティモシー選手(センター・バック)、ヘイデン・パーカー選手(スタンド・オフ)、山田章仁選手(ウイング・スリークォーター・バック/WTB)の3選手を相次いで失い、ゲーム・プランの大幅な変更を余儀なくされた。前半は同点で終えたが、ブランビーズ戦同様、後半の失速により17-37で敗れた。

4月7日のワラタス戦では、前半に大量リードを許したため、これまで課題の多かった後半に互角に渡り合えたものの29-50で敗れた。5月12日、国内最終戦のレッズ戦で、待望の今季初勝利(63-28)を飾っている。続くストーマーズ(南アフリカ)戦では、ヘイデン・パーカー選手が試合終了直前に50メートル近くあるペナルティー・ゴールを決めて同点とし、その直後に、ドロップ・ゴールを利き足ではない右足で決め23-26で勝利、初の2連勝を飾った。

今季オーストラリア国内での初試合、レベルズ戦(メルボルン)では、メンバーとポジションの変更の影響もあり40-13、続くブランビーズ戦(キャンベラ)にも41-31で敗れた。

今季は外国人選手の加入により、国際色が更に豊かになったサンウルブズは、チーム状態を尻上がりに良くしている。後は、自陣でのミスを減らし後半に失速することがなければ、今季3勝目も夢ではないだろう。

スーパー・ラグビー2018
ラウンド18:ワラタス対サンウルブズ

■開催日時:7月7日(土)7:45PM~
■会場:シドニー・フットボール・スタジアム(Driver Ave., Moore Park, Sydney NSW)
■Web: sanzarrugby.com/superrugby
■備考:チケット・プレゼント・キャンペーンあり。詳細は5ページまで

注目選手紹介

山田美千子さんとYASUさんがピックアップした、注目の1戦に臨む両チームの注目選手を紹介する。

山田美千子さんピックアップ サンウルブズ注目選手

その①流大(ながれゆたか)選手

Photo: Takeshi Yamada
Photo: Takeshi Yamada

所属するトップ・リーグのサントリーサンゴリアスでは在籍2年目でありながらキャプテンを任され、リーダーシップにおいて評価が高い。その類まれなリーダーシップは、今季、同選手がスーパー・ラグビー初参戦ながら、ビリー・ブリッツ選手と共同キャプテンを務めているところにも表れている。プレーではテンポの速いゲーム・メイクが持ち味で、試合で発揮されるゲーム・メイク力は対戦相手が最も警戒するポイント。相手チームのヘッド・コーチからは試合後の記者会見などでその点と共に目立った選手として同選手の名前が挙げられることが多い。


その②ヘイデン・パーカー選手

Photo: Takeshi Yamada
Photo: Takeshi Yamada

難しい角度や距離のあるキックを難なく決められる、キック制度の高さが魅力の選手。5月12日に秩父宮ラグビー場で行われたラウンド13のレッズ戦では、トライ1本に加えペナルティー・ゴール7本、ゴール・キック5本と1人で36得点を上げ(同試合は63-28でサンウルブズ勝利)、左足から放たれるキックの成功率は100パーセントとそのキックがチームにとって大きな武器であることを示した。また、今季のスーパー・ラグビー終了後、2018/19シーズンからは、トップ・リーグの神戸製鋼でのプレーが決まっているなど、今後も日本でのプレーが楽しみな選手。

YASUさんピックアップ ワラタス注目選手

その①イズラエル・フォラウ選手

Photo: YASU
Photo: YASU

世界最高のフル・バックの1人。NRL(ラグビー・リーグ)、AFL(オーストラリアン・フットボール)でも活躍し、2013年にラグビー・ユニオンに転向。ワラタスでスーパー・ラグビーのキャリアをスタートし、同年に豪州代表「ワラビーズ」に招集。英国連合チーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」戦で代表デビュー。17年までに3回(14、15、17)、豪州最優秀選手となる。高い走力に加えハンドリングも良く、空中戦にも強いトライ・ゲッター。サンウルブズにとって最も警戒すべき選手であり、個々の選手にとっては最も対戦してみたい相手であろう。


その②セコペ・ケプ選手

Photo: YASU
Photo: YASU

シドニー生まれ、ニュージーランド育ち。ラグビーはニュージーランドで始め、U21まで同国の各年代別代表となる。その活躍が当時のワラタスのヘッド・コーチの目に留まり、2008年にワラタスでスーパー・ラグビーにデビュー。同年に豪州代表にも選出された。プロップというスクラムの最前列のポジションながら、機動力抜群で、時折ロング・ゲインから一気にトライまで走り切ることもある。豪州代表94キャップは、ポジション別では歴代最多。チーフスのトレーニング・スコッドに在籍したこともあり、オール・ブラックスとして活躍していた可能性もあった選手。

マッチ・プレビュー

筆者プレビュー①

山田美千子さん(GO! ワラビーズ in Japan)

4月7日に秩父宮ラグビー場で行われたラウンド8のワラタスとの試合で、サンウルブズは序盤からミスを連続し、自らの首を絞めてしまい敗れてしまった。シドニーでの1戦では、この反省を生かしリベンジできるかが見どころの1つ。

タックル・ミスを得点につなげられる場面が多く見られた前回の試合。特に、フォワード並みのサイズでありながら、走力のあるWTBのタンゲレ・ナイヤラボロ選手をサンウルブズはなかなか止めることができなかった。ワラタスの怖い存在は同選手だけではないが、早い段階で止めることができれば、より勝利に近づくことができるだろう。個々の選手に焦点を当てれば、バーナード・フォーリー選手とヘイデン・パーカー選手のスタンド・オフ対決も見逃せない。

オーストラリア・カンファレンス1位のワラタスと5位のサンウルブズ(当稿執筆6月10日時点)ではあるが、昨季までと比べ、飛躍的な進歩を遂げているサンウルブズが自分たちのプレーができれば勝機はある。

また、シドニーでの初試合は、同月13日にブリスベンで行われるレッズ戦に良い形でつなげるためにも、サンウルブズにとって格好悪い試合だけは避けたいところだろう。

ラウンド13でのサンウルブズは、ヘイデン・パーカー選手の大活躍もあり、良い勝ち方で、今季の初勝利を飾った。ワラタス戦で良い流れを作れれば、レッズ戦にも良いイメージを持ったまま試合に臨めるはずだ。

前戦では試合序盤から主導権を奪ったサンウルブズが、パスとキックでボールを動かす攻撃で、若手の多いレッズを翻弄(ほんろう)した。今度はどんなゲーム展開となるのか。まずは主導権争いから目が離せない。そして、レッズは強みであるセット・プレーでどう仕掛けるのか。攻守共に強さを見せるキャプテン、スコット・ヒギンボッサム選手のプレーにも注目したい。

レッズとの1戦は、オーストラリア・カンファレンス4位と5位と順位も近く、実力伯仲の見どころの多い面白い試合になるだろう。好試合を期待するためにも、まずはシドニーでの試合から注目したい。

筆者プレビュー②

YASUさん(豪州ラグビー通信)

過去2回の対戦はいずれもワラタスが快勝。また、今季のこれまでの順位(第16節終了時)でも、オーストラリアン・カンファレンスにおける首位と最下位の戦いとなるが、ワラタスは、創設3年目となるサンウルブズに新参者の扱いはなく、十分警戒して試合に臨むだろう。

サンウルブズの低く粘り強い高速ディフェンスに対応すべく、ワラタスは接点において、2人目、3人目のアクションがその壁をこじ開けるキー・プレーとなる。ワラタスの司令塔、バーナード・フォーリー選手は、日本のトップ・リーグ(リコーブラックラムズ)でのプレー経験があり、日本のチームを相手にどのようなゲーム・メイクするのかも見どころの1つ。また同じくトップ・リーグ(パナソニックワイルドナイツ)でプレーした、タンゲレ・ナイヤラボロ選手は、規格外の大型ウィング(195cm、123kg)。ワラタスはフェイズを重ね相手ゴール前まで迫ったところで、同選手を有効に使い得点につなげたい。

また、サンウルブズとしては、アウェーでの戦いとなるが、今季の戦いぶりから、十分に互角に戦える力を身に着けている。常に先手を取り、タイトなゲームに持ち込めば勝機も出てくるだろう。フォワードについては、セット・プレーを確実に、接点でのコンテストを1つずつ有効なものにしていきたい。また、ボールの争奪では激しくファイトし、モール、ラックにおいては結束した形でより機能的なものになると良いだろう。

バックスにおいては、スピードと運動量でワラタスを翻弄したいところ。その時間帯を試合終了のホイッスルまでどれだけ持続できるかがポイントとなる。またキックを有効に使いたいところだが、個人技に優れ、相手チームの統制を崩してくるワラタスのセンター、カートリー・ビール選手、最後尾より一気にアタックを仕掛けてくるフル・バックのイズラエル・フォラウ選手には特に注意が必要。トライ、ゴールで得点が動く場面がラグビーの見どころだが、最後まで緊張が途切れないロー・スコアの好ゲームとなることを期待したい。

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