AFL Final Series 2018グランド・ファイナル観戦ガイド

オーストラリアの国技とも言われるプロ・スポーツ、オーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)はVIC州を発祥地として、同州に限らずNSW州、SA州、WA州などでも絶大な人気を誇る。VIC州政府も年間チャンピオン・チームを決めるグランド・ファイナル(GF)前日を祝日とするなど全面的にバックアップしているほどだ。9月にはプレー・オフ、ファイナル・シリーズ(FS)を経て、最終週の土曜日に大一番のGFを迎える。栄冠をつかむのは果たしてどのチームか、注目のチームからGFの楽しみ方まで広く解説する。(文中敬称略、記事の情報は8月19日時点のもの)文=板屋雅博

今季、タイガースが首位快走


オーストラリアのスポーツ・ファンを熱狂させるAFLのGFが今月の最終週の土曜日に迫っているが、今シーズン、レギュラー・シーズンでは連覇を狙うリッチモンド・タイガースが首位を快走している。

昨年のレギュラー・シーズンではアデレード、ジーロンに次いで3位であったが、FSの2・3位戦でジーロンに勝ち、GFではアデレードを108対60の大差で破った。2014年から続いたホーソンの時代が終わり、リッチモンド全盛の時代、応援歌に歌われるタイガーランドの時代がやって来た。イーグルスが肉薄しているものの、今シーズンの大半をトップで走り地力で勝るリッチモンドがGFを制する可能性が高いと予想される。ただ、一昨年に何と7位だったブルドッグスが大方の予想に反してGFを制した例もあるので、リッチモンドとしてもまだまだ予断を許さない状況だ。

注目チームの戦力分析

ここからは、今シーズンを振り返ると共にFS出場が予想されるチームと戦力を分析する。

リッチモンド・タイガース

1885年設立で優勝11回の名門チームだが、1980年の優勝を最後に長く低迷が続いた。昨シーズンは、3位からの逆転で38年ぶりの優勝を飾ったが、今年はチャンピオン・チームとして危なげない戦いを続けている。

本拠地はメルボルン・クリケット・グラウンド(MCG)に隣接したリッチモンド地区で、パントロード・スタジアムを練習拠点とする。ユニフォームは黄色と黒のタイガー・ジャージー。注目はキッカーでスター選手のジャック・リーウォルド、ミッドフィルダーのダスティン・マーチン、キャプテンのトレント・コチンの3人。

ウェスト・コースト・イーグルス

今シーズン半ばに4週間トップを奪取したが、その後は2位でリッチモンドの後塵を拝した。しかし、2006年以来12年ぶりの優勝の可能性は十分にあると言える。

WA州パース・スタジアムを本拠地とする。1992年、94年、06年と3回の優勝を誇る。WA州としても06年以来の優勝を待ち望んでいる。

注目の選手はラックマンのニック・ナイタヌイ。身長201センチ、体重110キロの巨漢ながらタックルもすばらしい好選手だ。その他には、ロング・キッカーの長距離砲であるジョシュ・J・ケネディ、売り出し中の若手ミッドフィルダー、エリオット・イエオ、イエオと並んで活躍が期待されるアンドリュー・ガフ、そしてキャプテンのシャノン・ハーン。

コリンウッド・マグパイズ

1892年創立の古豪で、優勝回数15回を誇る。2010年にGF優勝した際のセントキルダとの激闘も記憶に新しい。14年から昨年まではFSに出場できないほど低迷していた。

サポーター会員数はAFL一番を誇る。毀誉褒貶(きよほうへん)が多く、悪名高いヒール的な役回りで知られているが、良くも悪しくもコリンウッドはAFLに欠かせないチームである。久しぶりの上位進出にメルボルンも沸いている。

ホーソン・ホークス

ブロウンロー・メダルの受賞が予想されるトム・ミッチェル
ブロウンロー・メダルの受賞が予想されるトム・ミッチェル

2013年から15年まで3年連続優勝を飾り、まさにホークスの時代であったが、現在は、下降ぎみ。シーズン中盤に3連敗したが、終盤に5連勝して調子を上げてきている。人気選手が多く、地力ではあなどれない存在である。

キッカーのジャック・ガンストン、トム・ミッチェルなどが注目選手。

シドニー・スワンズ

母体はサウス・メルボルンだが、1982年にシドニーへ移転。長らく低迷が続いたが2005年と12年にGFを制するなどここ10年は上位に定着している。注目の選手はランス・フランクリン(愛称バディー)。キャプテンのジョシュ・ケネディは常に選手ランキング上位に位置する好選手。

GWSジャイアンツ

シドニー西部とキャンベラを本拠地とし2012年から参戦した最も新しいチーム。既存17チームから選手を集めた。チーム創設当初からしばらくは当然、最下位に沈んでいたが、一昨年と昨年は4位に浮上し、古参のシドニー・スワンズを上回る活躍をしている。過去の実績は十分ではないが、ダークホースと言えるだろう。

注目の選手は3人のミッドフィルダー、ステファン・コニグリオ、ラッチー・ウィットフィールド、カラン・ワード。

メルボルン・デーモンズ

1858年設立のAFL最古のチーム。オーストラリアン・フットボールの発祥であり伝説のチームだが、1964年以来は優勝がなく、この10年はファイナルにも一度も進んでいない。昨年も9位に甘んじてファイナル進出が夢と消えた。今年はファイナルに進出したいところである。

ジーロン・キャッツ

2007、09、11年と3回のGF優勝を果たし、この10数年間、ホーソン、コリンウッドと並んでAFLを引っ張ってきたが、今年はファイナル出場すら危ぶまれるほど地力が低下している。設立は1859年とデーモンズに続き2番目に古い名門チーム。

注目選手は、AFL史上最高の選手と言われ、ゴールドコースト・サンズから復帰したゲリー・アブレット。また、AFLでナンバー・ワンと言われるキャプテン、闘将ジョエル・セルウッドやトマホークの愛称の大砲キッカー、トム・ホーキンス、パトリック・デンジャーフィールドも注目。

AFL基本情報

チームと試合数

1リーグ制18チームの構成で、VIC州から10チーム、QLD州、NSW州、SA州、WA州から各2チームが参加している。

レギュラー・シーズンは、3月下旬から8月末まで23ラウンドが戦われる。各チーム1回の不戦週があり、22試合を戦う。18チームで22戦だと、2回対戦する相手チームと1回しか対戦しないチームが出てくる。一見、不合理に思えるが、大らかなオージーからは不満の声は聞かれない。

ファイナル・シリーズ

シーズン上位8チームで争われ、1位と2位は本拠地のスタジアムが使えることなど圧倒的に有利な仕組みになっている。下位4チームが勝ち進むのは困難と言われ、これまでの歴史を振り返っても滅多にない。ただし、一昨年のウェスタン・ブルドッグはその滅多にない例であった。ファイナル進出は、監督や選手の業績となるだけあって必死に戦っている。

GFフライデー

VIC州政府公式サイトによると、今年もGF前日が祝日・公休日となった。同州発祥のAFLを州政府として応援すると共に、経済効果を狙ったとされている。民間のスポーツ大会のしかも前日を祝日にするのは日本など諸外国やオーストラリアの他州でさえ考えられないが、競馬のメルボルン・カップ・デーの前例がありイベントが大好きなVIC州ならではのお祭りと言える。

オーストラリアの全テレビ番組の中で最高視聴率を記録するAFLのグランド・ファイナル
オーストラリアの全テレビ番組の中で最高視聴率を記録するAFLのグランド・ファイナル

GFデー

AFLのGFは、オーストラリアのスポーツ・イベントでは最高峰と言われ、チケットの入手は困難どころの話ではない。テレビではセブン・ネットワークで放映され、約300万人が視聴し、4年連続でオーストラリアの全てのテレビ番組の中で最高の視聴率を記録した。

GFは伝統的に9月の最終土曜日にMCGで行われる。昨年の入場者数は10万21人でAFLとしては過去最高の入場者数であった。

AFLウィメンズ

AFLウィメンズは、2017年に8チームで始まった女性選手で戦われる新しいオーストラリアン・フットボール・リーグ。全てのチームは、AFL各チームの下部組織に当たる。

今年の参加チームは、メルボルン、ウェスタン・ブルドッグス、コリンウッド、カールトン、アデレード・クロウズ、ブリスベン・ライオンズ、GWSジャイアンツ、フリーマントルで、VIC州4チーム、QLD州、NSW州、SA州、WA州から各1チームの参加と、AFLと同じ構成となっている。

AFLが始まる前の真夏、2月と3月の7ラウンドがレギュラー・シーズンで、3月末の土曜日にGFが行われた。

昨年の第1回GFは、ブリスベンとアデレードが激突して、アデレードが初優勝を遂げた。今年の第2回は、ウェスタン・ブルドッグスが優勝を果たしている。19年シーズンには、ホーソン、エッセンドン、ノース・メルボルン、ジーロン、リッチモンド、セントキルダ、ゴールドコーストなどもリーグ参加に名乗りを上げており、今後一気にブレイクするかもしれない。

サッカー場の2倍以上の面積に当たるオーバル
サッカー場の2倍以上の面積に当たるオーバル

AFLのルールとは

オージー・ルール

オーストラリアン・フットボールは、「オージー・ルール」とも呼ばれる、独特のルールを持つ。

競技場は楕円形で、オーバルと呼ばれ、サッカー場の2倍以上の広さを持つ。ラグビー・ボールより少し小さな楕円形の革製ボールが使用される。

プレーする選手数は、1チーム18人。試合は、アンパイア(審判)が中央(センター・サークル)でボールを地面にたたき付ける(センター・バウンス)と開始される。高く跳ね上がったボールを、ラックマンと呼ばれる2メートルを超える長身の選手が高く飛び上がって奪い合う。長身のラックマンが高く飛ぶ空中戦がAFLの見所の1つだ。

ラックマンが奪取したボールを処理するのは、小柄なミッドフィルダーである。大柄なラックマンやゴール・キッカーに比べて派手さはないが、試合を左右する重要なポジションである。パスは、ハンド・パスと呼ばれボールの下端を手でたたいて放る。前方へもパスをすることができる。遠距離へはキック・パスも使う。ボールを持ったまま走る場合には15メートルに1回、バウンドさせる必要がある。

キックされたボールを、ノー・バウンドで取ると「マーク」となり、プレーヤーはフリー・キックか、試合続行かを選ぶことができる。

得点

AFLのグランドには、両サイドの中央に高いポールが2本、外側に低いポールが2本立っている。中央のポール間に蹴り込むと6点(ゴール)、外側に蹴り込むと1点(ビハインド)となっている。ゴロでも良いが、必ず蹴り込むことが必要。

試合時間

ゲームは4クォーター(Q)制で行われる。各20分だがロス・タイムがあるので実質25分ほどになる。

■AFL Grand Final 2018
日時:9月29日(土)2:30PM
会場:Melbourne Cricket Ground(MCG), Brunton Ave., Richmond VIC
Tel: (03)9657-8867
Web: www.afl.com.au

GFウィークの主な行事

●ブロウンロー・メダル授賞式
(9月24日(月)7PM、会場:クラウン・カジノ)

最優秀選手賞だが、フェア・プレーも重視される。各試合で審判が記入した得点シートを授賞式の際に合計して発表する。テレビ中継される。
 AFLでは、全登録選手をゴール数、タックル数、ボール処理数、ラン距離など多くの指標を設けてポイントで評価して試合ごとに発表している。チーム成績とは別に、選手の位置付けが分かりやすい。昨年の受賞者は、リッチモンドのダスティン・マーティン。今年、筆者はホーソンのトム・ミッチェルが受賞すると予想する。

コールマン賞

シーズンで最も多くのゴールを挙げた選手が受賞する。過去10年の受賞者は以下の通り。

  • ■ランス・フランクリン(シドニー):2008、11、14、17年
  • ■ジョシュ・ケネディ(WCイーグルス):15、16年
  • ■ジェリー・ラフヘッド(ホーソン):13年
  • ■ジャック・リーウォルド(リッチモンド):10、12年
  • ■ブレンダン・フェボラ(カールトン):09年

いずれも各チームとAFLを代表する選手たちである。今年もジャック・リーウォルド、ランス・フランクリンなどが競っている。

●GF出場チーム・パレード
(9月28日(金)11AM、場所:メルボルン市内)

GFウィークのメルボルンはAFLグッズで身をまとったファンで溢れかえる
GFウィークのメルボルンはAFLグッズで身をまとったファンで溢れかえる

メルボルン市内オールド・トレジャリー・ビルからスプリング通りを南下して、ウェリントン・パレードを東へ進み、ヤラ・パークのMCGまでパレードが行われる。
 両チームの選手がオープン・カーに乗り、通りの両側から約10万人の観衆が見守る。
 MCG前の特設ステージでセレモニーが行われ、両チームのキャプテンがGF優勝カップを前に健闘を誓い合うところが見どころ。早めに特設ステージ前に陣取ることがセレモニーを見る上でのコツである。

●AFLグランド・ファイナル
(9月29日(土)2:30PM、会場:MCG)

その週はGFウィークと呼ばれメルボルン全体が興奮に包まれる。FSが行われる9月はメルボルン市内を歩くとマフラーや帽子などひいきチームのAFLグッズを身にまとった人びとに出会う。ビジネス界や政界でもひいきチームのネクタイをしている人も多い。ほとんどのメルボルンっ子はGF会場には入れないので、自宅や公園でパーティーをして盛り上がる。市内のほとんどのパブでもGFをテレビで放映する。

●優勝チームお披露目
(9月29日(土)6PM、会場:フェデレーション・スクエア)

優勝チーム選手がファンにお披露目され、多くのサポーターたちでにぎわう。


文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz)を経営

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