WSW 高萩洋次郎・田中裕介 独占インタビュー

高萩洋次郎・田中裕介 独占インタビュー

“ソウル・メイト(Soul mate)”という言葉がある。深い精神的な繋がりを共有、感じ合える大切な人物なことをいう。同じタイミングで海を渡り、日本から遠く離れた豪州のクラブでともにプレーをすることになった。高萩洋次郎、田中裕介の2人に二度に渡って話を聞いてから、その両名の関係性を表そうとした時、ふとこの言葉を思いついた。 Jリーグに至るまで歩んたキャリアでは交わることはなく、Jリーグでも対戦相手という以外には特に交わりのなかった2人が、ここ異国の地・シドニーで出会い、ともに戦う。そんな環境の下で、性格的には真逆の2人の間には、相互補完ができる強い信頼関係がごく短期間で自然に成立した。実際、話を聞いた時にもチームメイトとして苦楽をともにする2人には、ソウル・メイト同士のような雰囲気を感じた。そんな2人の遠征先(ブリスベン)の宿泊先のロビーでのリラックスしたやり取りを、ここに再現してみたい(インタビューは3月24日に収録)。

取材・文=植松久隆(ライター/本紙特約記者) 写真=Moto/ Mega Expression Pty Ltd

 

——お互い、日本にいたころから面識はあったのですか。
(2人が顔を見合わせて)
田中裕介(以下・裕)「いや、ないですね」
高萩洋次郎(以下・洋)「うん、試合以外ではないですね」

 

——ユース時代とかでの対戦経験も?
(再び、顔を見合わせて)
「ないですね」

 

——じゃあ、ここで同い年の2人がともにプレーをするというのは、本当に偶然なのですね。偶然といえば、イニシャルも同じTですね。
「そうですね、偶然です」
「そうだよね、イニシャルが同じ“Y・T”でビックリしたよね」

 

——あ、名前も同じで、“Y・T”なんですね。
「そうなんですよ。こっちでは、ミーティングとかで選手名がイニシャルで書かれるし、水のペットボトルとかにも“Y・T”って書いてあって、洋次郎のが・・・」
「アンダーバー(笑)」
「そう、アンダーバー(笑)」

 

——2人が、シドニーで初めて顔を合わせた日のことは覚えてますか。
「僕の方が先に入団していて、クラブのスタッフに『タカハギが来るよ』っていうのは聞かされていました。それで、オフ明けの日に僕がグラウンドにいると、空港から直接グラウンドに来た洋次郎が来て『あ!』ってなって……」

 

——その時、初体面でどんな言葉を交わしたんですか?
「あの朝、洋次郎が『超、眠い』って言ってたのは覚えてる」
「その日、俺、1時間しか飛行機で寝れなくて、そのまま練習したんだよ」
「そうそう、着いた日の朝にそのまま練習したよね」

 

——確か、小野選手も到着当日にグラウンドに直行しましたよね。
「だからじゃない? その影響もあって、日本人だったらやるんじゃないかって思われたのかも」
「そうかもね」

 


——初めは、やっぱりお互い「あ、田中だ」「あ、高萩だ」って感じで微妙な距離感だったんですか。

「僕はとにかく安心しましたよ。洋次郎が来るまでは、とにかく周りに日本語を話す人が1人もいなかったんで。『あ、やった、日本語が話せる!』って感じで」

 

——遠征先ではいつも同部屋ということですけど、シドニーでの暮らしはどうなんですか。
「いや、実はシドニーでも今は一緒に暮らしてます」
「あくまでも現時点ではですが、シェアしてます。同居人です」

 

——じゃあ、チームメイト兼同居人でもあるんですね。それは、またどういう経緯で?
「最初は、それぞれ別に部屋を探そうとしていたんですが、2人とも契約が今シーズン限りの短い契約なので、マンションの契約上の問題もあって、条件が合う所を探した結果、かなり家賃の高いところしか空いてなかったんです。それで短期間で1人で払うのは得策じゃないなって思って」
「とりあえず、契約期間が4カ月くらいしかないし、一緒でもいいんじゃない?って感じでしたね」

 

——実際に同居生活を始めてみていかがですか。その選択は正しかったでしょうか。
「いや、もう、これだけは言えます、100パーセント正解、だよね?」
「うん。助け合えるし、食事も一緒にできるし、何かあってもいろいろ話して発散できるし。あとは、練習時間とか集合時間とかお互いに確認できるのが大きい」
「確かに。やっぱり海外での生活は初めてで多少不安はあったけど、その不安を感じなくて良かったのは助かりましたね。同居という選択は間違いなかったですね」

 

——同居生活も含めて、親しくなっていく中で、ここはスゴイなって思うところはありますか。
「家具とか買っても、洋次郎はパパッと組み立てくれるんで、何かこいつ男らしいなぁみたいな。僕は、そういう時は何もできずに見ているだけなんで」
「日曜大工的なのは好きです」
「僕は、そういうのは不得意なんで、それはスゴイなと思いましたね」

 

——食生活とかはいかがですか。料理はされますか。
「自炊はしません。完全に外食です。住んでいるエリア自体がアジア人が多いところなので困りませんね。2人とも食べ物は基本的に何でも行けるので、じゃあ今日はタイ料理、明日は韓国料理、次はベトナム、みたいな感じで。世界1周じゃないけど、本当に何でもあるんで」
「シティには、試合の後にいつも行く日本食レストランもあるし、とにかくバラエティーに富んでいて、食生活は本当に全く困りませんね」
「物価は高いですね。(手元のペットボトルを手に取って)例えば、この水でも3.5ドルとかするじゃないですか。日本じゃ気にしなかったモノの値段とかそういうことは気にするようになりました」

 

——2カ月経って、お2人の英語力の方はどうでしょうか?
「来てすぐのころに比べるとミーティングの内容とか、かなり分かるようになってきましたね。でも、アクセントの強い選手との会話に入っていくのはまだ厳しいですね」
「僕は、車でいつもラジオを流しているんですけど、曲の中のフレーズとか今まではただ聞き流していたのが、『この単語の意味分かる』とかフレーズを聞き取れたりすることが、ここ最近、増えてきました」

 


ここまでのACLの5試合では、すべて先発出場し、大きく貢献


日本でともにプレーをした経験のない2人だが、ホットライン開通に時間は掛からなかった


WSW移籍後の高萩は、日本でも経験のないボランチでのプレーで新境地を拓いている


アウェーの鹿島戦、家族の前での凱旋ゴールで祝福を受ける高萩

——そろそろサッカーのことも聞かないといけませんね。リーグ戦はかなり厳しくなってきていますが、やはり、そろそろACLにフォーカスしようみたいな空気はあるんですか。ACLになると昨年のチャンピオンとしてのプライドも選手のモチベーションも違ってくるんですか。(注:インタビューは3月24日収録)
「さすがに、まだ(リーグ戦を)諦めたとは言えないですね。でも、ミーティングではACL王者のプライドについては話しています。また、ACLではAリーグより慎重な戦い方をするという印象はあります。僕は広島でクラブW杯の経験があるけど、やはり、またクラブW杯に出たい。今年は、WSWでACL王者というタイトルを獲れば、クラブW杯出場という機会を得られるので、本当にそのタイトルは、喉から手が出るくらい欲しいですね」

 

——豪州のサッカーを経験していく中で、さまざまなカルチャー・ショックを受けているところだと思いますが、特に印象に残ったことは何ですか。
「強いて言えば、チームのクラブ・ハウスですかね。やっぱり、アジアを制したチームのそれとは思えないというか・・・・・・」
「練習場がオープン過ぎるのに戸惑いましたね。誰でも入って来られちゃうみたいな」
「サポーターが練習に興味がないってのは、日本とは違いますよね。それが練習場の環境にも影響しているのかもしれない」

 

——今後、日本から豪州に来る選手に必要な要素は何でしょうか。
「日本人で一定のレベルにある選手は誰でもそれなりにやれると思うけど、やはり柔軟性というか、チームが求めるものにうまく適応できる選手が必要とされるんだと思う。何と言っても外国人選手である以上は“助っ人”なので、求められるものを求められる以上にやっていくことは必要」
「過密日程でもケガをしないことも1つの才能だと思うので、そういう強さは必要だと思います」

 

——今日はありがとうございました。

リラックスした中でのやり取りでは、短時間で深まった2人の仲を彷彿させるシーンが多く見られた。この取材中、田中が「海外に来てまでサッカーができるというのは、本当に幸せだと思う」と語ったように、彼らがこのWSWでのプレーの機会が自身のキャリアにとってプラスになるようにエンジョイしている様子は十分に伝わってきた。

ACLのグループ・リーグの状況が予断を許さない中で、5月31日の契約満了以降、2人がどのような道を歩むのかは今の時点ではまったく分からない。当然、ここ豪州での2人の活躍を少しでも長く見たいという気持ちは強い。そのためにも、5月5日のACLグループ・リーグの最終戦で、WSWに携わる全ての人々が歓喜にあふれるような奇跡が起きることを祈りたい。

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