苦悩のWSW、ACL連覇にも暗雲

シーズン終盤! サッカーAリーグ&ACLリポート

苦悩のWSW、ACL連覇にも暗雲

予想外の低迷に喘いだAリーグのシーズンを9位で終えたWSW。3年目で初めてファイナル・シリーズを逃すことになった。アジア王者として臨んでいるアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)でも、苦しい戦いを強いられている。2月に加入した2人の日本人選手の活躍と併せて、今季のWSWの戦いぶりを本紙特約記者の植松久隆が振り返る。取材・文=植松久隆(ライター/本紙特約記者)

昨季、クラブ開設以来、長らく紡ぎ続けてきた“おとぎ話”を「ACL制覇、アジア王者戴冠」という最高の結末で締めくくったウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)。昨年10月開幕の現行のAリーグの2014/15年シーズンには、悲願のAリーグ・ファイナル王者のタイトルを獲得すべく高いモチベーションで臨んだ。

しかし、シーズンが始まってからもチームの調子は一向に上がらなかった。小野伸二やアーロン・ムーイ、ユスフ・へルシといった多くの主力選手が抜けた穴を新戦力が埋めきれないまま負けが込む悪循環に陥る。誰もが予想だにしなかったほどの絶不調で、アジアカップ期間中のおよそ1カ月の中断期間を最下位で折り返した。何とか、再開後の第19節に最下位を脱出するも、その後もシーズン中の内紛で大量の選手が入れ替わったニューキャッスル・ジェッツと激しい最下位争いを演じてきた。

結局、WSWの3年目のシーズンは、そのまま上昇の気配を見せられないままに9位という過去最低の成績で終わった。小野伸二が所属した過去2年間、あと1歩のところまで迫って涙を飲んだファイナルの舞台には今季は参加することすら叶わず、ファイナル制覇の悲願達成は来季以降に持ち越されることになった。クラブ開設以来続けていたファイナル連続参戦が2年で途絶えただけでなく、来年のACL参戦のチャンスをも失ってしまうなど来季へのダメージは大きい。

新興クラブながら、初年度、2年目と確実な成果を上げてきたWSWにとって、クラブ創設以来初めての蹉跌となった今シーズン、なぜにアジア王者の威厳が霧散してしまうほどの低迷に苦しんだのだろうか。やはり、先述したように、シーズン当初に加入した新戦力が機能せず、大きな穴を埋めきれなかったことが最大要因。ACLが2月に始まってからは、Aリーグと併行する過密日程に悩まされ、主力のケガにも見舞われて、浮上のきっかけはつかめぬまま上位6チームが参戦するファイナル・シリーズ参戦の可能性も早々についえた。

そんな最悪のチーム状態のWSWに1月のAリーグの中断期間中に加入したのが、高萩洋次郎、田中裕介という2人の現役バリバリのJリーガー。それぞれ、昨年のACLでWSWと顔を合わせたサンフレッチェ広島(ラウンド16で対戦、1勝1敗もアウェーゴール・ルールでWSWが勝利)、川崎フロンターレ(グループリーグで同組、直接対決は1勝1敗。ともに次ラウンド進出)で、不動のレギュラーを張っていた。ともに所属チームの残留要請、ならびにJ1の他クラブからのオファーを蹴っての入団で、日本ではその移籍は少なからず驚きを持って迎えられた。

トニー・ポポビッチ監督に、ACLでの活躍を認められてオファーを受けて豪州の地に降りたった2人。元々、海外志向の強かった高萩には、豪州移籍決断に迷いはなかった。日本代表の経験もある彼は、空いている背番号から自ら選んで10番を背負った。田中は、自らも予期していなかった海外からのオファーを「自分がどれだけ通用するかチャレンジしたい」との思いで受けることを決意。好条件のJクラブからのオファーを断ってまでも、海外で自分をさらに成長させることを選んだ。

加入当初はACL限定の契約として発表された2人の契約は、外国人枠の選手の整理・放出が済むと同時にフル契約に切り替えられた。加入後の2人は、即戦力の期待に違わず、過密日程でのローテーション起用の中でもコンスタントに出場機会を得て、チームの主力として奮闘した。その中でもやはり特筆すべきは、2人のACLでの貢献度の高さだ。

ここまで、WSWはACLのグループHで5試合を消化しているが、その試合のすべてに先発しているのは、守備の絶対的な中心であるキャプテンのニコライ・トポー=スタンリー以外では、高萩、田中の両名だけ。これは、アジアをよく知る2人が、Aリーグ制覇の夢が叶わなかったチームのACL連覇の野望達成には欠くことのできない戦力と計算されている大きな証拠だ。

クラブ史上最悪となったAリーグのシーズンを低迷したまま終えようとしているWSWは、ファイナル出場の可能性がついえた時点で「ACLシフト」に舵を切っていた。4月21日のACL・グループ・リーグを勝ち抜けるには負けられない天王山・鹿島アントラーズ戦に臨んだメンバーは、一部のケガ人を除いては、ほぼ現時点でのベスト・メンバー。当然ながら、そこには高萩、田中の名前も含まれていた。その大事な鹿島戦は、前半に先制するも、WSW以上に勝ちが欲しい鹿島に後半立て続けの得点を許しての逆転負けでの惜敗。WSWはグループ・リーグの最下位に沈み、ベスト16進出に黄信号が灯る痛い痛い黒星となった。

Aリーグは、5月に入って、最後のファイナル・シリーズで大いに盛り上がる。しかし、その場にWSWの姿はない。WSWは、ファイナルの盛り上がりを横目に5月5日、ACL王者としての威厳を懸けてのACLグループリーグ最終戦のアウェーでの広州恒大戦に臨む。この試合は、言うまでもなく、高萩、田中両名のWSWでの将来を大きく左右する試合になる。この試合で敗れれば、WSWのラウンド16進出の目は絶たれる。それは、よほどのことがない限り、2人の日本人選手の姿を来季のWSWで見られないということを意味する。アウェーで強敵を叩いて、裏の試合で鹿島とFCソウルが引き分けに終わることを待たねばならないという非常に厳しい条件なのは言うまでもない。しかし、この広州戦、可能性がゼロでない限りは諦めずに自らの将来を切り拓くべくピッチを駆ける2人の姿が見られるに違いない。WSWは3年という短いクラブの歴史の中で、既にさまざまなドラマを演出してきた。今回も何かが起きる、そう信じて見守るしかない。

(編注:今季のAリーグのファイナルに関しては、筆者の連載コラム「日豪サッカー新時代」に詳述。そちらも併せてお読みください)

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