Go! ワラビーズ in Japan「9年ぶりの日本開催 RWC決勝の地でのブレディスロー・カップ2018」

Go! ワラビーズ in Japan

日本ラグビー界では現在、オーストラリア、ニュージーランドなど世界の強豪チームでの代表経験を持つ選手が多数プレーしており、日本のレベル・アップにひと役買っている。そこで、かつて豪州で活躍し、現在は日本に舞台を移した元ワラビーズの選手たちについて日本からリポートする。 文=山田美千子/写真=山田武

特別編 9年ぶりの日本開催 RWC決勝の地でのブレディスロー・カップ2018

オーストラリア代表とニュージーランド代表の間で行われる国際定期戦「ブレディスロー・カップ」が9年の時を経て、10月27日、日本を舞台に行われた。本大会まで1年を切った中、来年のラグビー・ワールド・カップ決勝の地、横浜で戦ったワラビーズことオーストラリア代表が見た現在地とは――。伝統の1戦をリポートする。

最強軍団が見せた地力

ラグビー・ワールド・カップ(以下、RWC)開幕まで1年を切った10月27日、決勝戦の舞台となる横浜国際総合競技場で、日本では9年ぶりとなるオーストラリア代表(ワラビーズ)とニュージーランド代表(オール・ブラックス)による定期戦シリーズ「ブレディスロー・カップ」が開催された。

試合前には雨も心配されていたが、当日の横浜の最高気温は25度、日差しの下では少々汗ばむくらいのコンディションの中、伝統の1戦は行われた。

この日『カパ・オ・パンゴ』だったオール・ブラックスのハカ(マオリ族の伝統舞踊)で会場からは大きなどよめきと歓声が上がった後、オール・ブラックスのキック・オフで始まった試合は、いきなりワラビーズが見せ場を作った。CTBに入っていたイズラエル・フォラウ選手が力強いランで敵陣に切り込み、フェーズを重ねたところに、サイド・ラインを駆け上がってきたFBのデイン・ハイレットペティ選手が左隅に飛び込んだ。映像判定(TMO)の結果、トライこそ認められなかったものの、ワラビーズの気持ちが表れたプレーだった。しかし、先制点はオール・ブラックスに奪われてしまった。

その後のことだった。相手の反則からPGのチャンスを得たワラビーズ、キッカーはSOバーナード・フォーリー選手という印象が強いが、この時はCTBのカートリー・ビール選手が蹴った。その距離50メートル弱。グリーン色のキック・ティーの上にボールをセットし、呼吸を整えた後、右足から蹴り出されたボールは緩やかな弧を描きゴール・ポストの真ん中に吸い込まれた。ロング・キックが成功し、7-3。

前半、カートリー・ビール選手のPGなどで反撃したが、重要な場面でのターン・オーバーで流れをつかみきれなかった
前半、カートリー・ビール選手のPGなどで反撃したが、重要な場面でのターン・オーバーで流れをつかみきれなかった

そこから更に点差を縮めようと試みたが、ワラビーズは最強軍団オール・ブラックスの前になかなか自分たちのプレーをさせてもらえない。No.8のデービッド・ポーコック選手の縦の突破、100キロ近くの重量差があるスクラムでのFW陣の踏ん張り、フォーリー選手の体を張ったディフェンスなど、幾つも光るプレーが見えたが、出来上がったディフェンス・ラインの一瞬の隙を突いて得点に結び付ける野性的な勘は、オール・ブラックスの方が上回っていた。そして、ターン・オーバー(ディフェンス側の選手が相手からボールを奪い取ることで攻守交代すること)も多すぎた。せっかく敵陣深く攻め入っていたにもかかわらず、肝心な詰めの場面でターン・オーバーされてしまい、一発のキックで自陣に戻され、逆にそのまま得点を許してしまうなど悔しいプレーが多々見られた。

この点については試合後の会見でマイケル・チェイカHCも認め、「特に重要なタイミングで多かった」と言葉をこぼした。もし、ここまでターン・オーバーが多くなかったら、もっと違う展開も考えられたのではないかと思えてしまう。

アクシデントに泣かされた後半

後半も、先に仕掛けたのはワラビーズだった。ロブ・シモンズ選手が2人を引きずりながらゴール下に飛び込むがTMO判定の結果、ノー・トライ。それでもフォーリー選手のPGが決まって17-13と、あと一歩に迫った。その後も敵陣でフェーズを重ねるが、1つのパス・ミスからオール・ブラックスにボールが渡ると、自陣22メートル・ライン付近まで押し下げられてしまう。追い付けそうで追い付けないストレスのたまる時間が続く。このタイミングでチェイカHCはFW1列目を総入れ替えした。

スコット・シオ選手とセコペ・ケプ選手が交代したが、ケプ選手は1986年生まれの32歳。2008年のイタリアのパドバで行われたイタリア戦で代表デビューを飾った。このオール・ブラックス戦がワラビーズ100キャップ目の記念試合だった。

ケプ選手は9年前に日本で行われた「ブレディスロー・カップ2009」にも来日していた。当時は売り出し中の若手選手であり、ファンに穏やかで優しい表情で接していた印象が強く残っている。1つの節目を迎えたケプ選手の更なる活躍を期待したい。

FW1列目を総入れ替えしてからだった。スクラムの中で何が起きていたのかは知る余地もないが、46分過ぎに突然オール・ブラックスのHOコディ・テーラー選手が対面のワラビーズHOトル・ラトゥ選手の右肩を右手で小突いた。小突き返したラトゥ選手の右手はテーラー選手の顔に当たった。経験の浅い若いラトゥ選手がまんまと相手の挑発に乗ってしまったような格好だ。TMOで確認した後、レフェリーは「顔に当てたから」とイエロー・カードを提示した。

この件について、ハンセンHCは試合後に次のコメントを残した。

「顔に手を当てるというのは良くないのであの結果が出たのでしょう。レフェリーも競技規則に則ってシンビン(10分間の退場)を与えただけだと思います」

後半の追い上げムードも、シンビンが試合の行方を大きく左右してしまう結果となった
後半の追い上げムードも、シンビンが試合の行方を大きく左右してしまう結果となった

また、チェイカHCは「押されたら、そして押し返したら、レフェリーが何と言うかは分かっていたこと。そもそもやるべきじゃなかった。シンプルなことです」と語っている。

1人少ないワラビーズは1トライを奪われたものの耐え続け、76分フォラウ選手のトライとフォーリー選手のキックが決まり32-20と食い下がる。だが、試合終了間際で気持ちに隙が生まれていたのか、またも簡単にトライを奪われ37-20で敗れてしまった。今年もまたオール・ブラックスが勝ち越した。もう何年ブレディスロー・カップはタスマン海峡を渡っていないのだろうか……。

スプリング・ツアー初戦は残念な結果となったが、首脳陣、選手共に今後の課題は見えたことだろう。また、ジャック・デンプシー選手のけがからの復帰など、明るい話題も少なくない。ワラビーズには、このスプリング・ツアーで更に大きく飛躍して欲しい。

来年のRWCでは、この2チームの対戦は準決勝以降でしか見ることができない。RWCという特別な舞台でワラビーズが完膚なきまでにオール・ブラックスを叩きのめす姿、そしてグリーン&ゴールドのジャージをまとった選手が空高くエリス・カップを掲げる姿を想像すると、RWCの開幕が待ち遠しくてたまらなくなる。がんばろう、ワラビーズ!

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