関西で深化する日豪フットボール関係② シドニーで開花した指導者の資質を関西で磨く次代の“オージー”指導者「期待の星」/日豪フットボール新時代 第153回

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次代の有望なオージー・コーチ筆頭とも言えるベン・カーン(ティアモ枚方ヘッド・コーチ)と顔を合わせた伊藤(写真=本人提供)

 2月某日、大阪・天王寺。寒波到来でこの冬一番の冷え込みとなった朝。霧雨が一瞬雨に変わったと思えば、次の瞬間にはミゾレとなって筆者の着慣れないダウン・ジャケットの袖を叩く。切れ目なく続く通勤客の流れに逆らいながらコンコースをなんとか脱出。底冷えの寒さに首をすくめながら向かった待ち合わせ場所に指定されたカフェに、ほどなく姿を現したのは伊藤瑞希(37)。現在、日本フットボール界のヒエラルキーの7部相当の大阪府プラチナ・リーグで戦う「Osaka City SC」の監督を務めている。

 前回登場した伊藤和也とは同姓同世代で、いずれも長く豪州の地でキャリアを高め、今は関西の地でフットボールに深く関与するなど共通点が多い。共に筆者がそのキャリアを定点観測的に追っている存在でもある。

 大阪市中央区を本拠に将来的なJリーグ入りを目指すOsaka City SC。2年連続昇格を続ける野心的なクラブで伊藤は、現場と編成の責任者を務める。それ以外にも関西大学リーグの強豪、関西大学サッカー部のGKコーチ、更には大学の東西対抗戦、伝統のデンソー・カップに臨む関西大学選抜でもGKコーチを任されるなど、自らのキャリアの原点であるGKコーチとしての評価は既に高い。

 実際、彼の存在は多くのJクラブにも認知されており、いつJクラブからオファーが舞い込んでも驚かない。

 更に、その非常に冷静な人格や分析力、思考能力の高さなど総合的な人間力を鑑みると、現場でのコーチングに留まらず、クラブ運営など経営者としての適性も高いはず。となれば、早晩、監督かGMか、それとも経営者か、はたまたGKコーチとして唯一無二の存在を目指すかの自らのキャリアの方向性における重要な決断に迫られる日がやってくる。その時に彼がどの道を極めようとするにしても、生き馬の目を抜くフットボール界をたくましく息抜き、確実に成長を続けていくに違いない。

 とは言え、ここ数年の近未来では、強豪がしのぎを削る関西でもOsaka Cityが昇格の階段を駆け上がっていくムーブメントを指導者としてリードしていくはず。一過性ではない永続的なトレンドとして日本フットボール界にしっかり根付きつつある“オージー・コーチ”の潮流。その潮目をきっちり読み、しっかりグリップする伊藤は、国籍を違えども日本での”オージー・コーチ”の活躍の系譜を今後につないでいく期待の星だ。そんな彼が監督としてフットボール界の頂点で指揮を執る姿を、個人的には見てみたいのだが。

プロフィル

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「今年も全豪各州のトップ・リーグNPLが開幕した。筆者が追うQLD州1部NPLQLDでは、今年も多くの日本人が活躍する。ここ数年の1つの特徴としては、日本人選手を複数抱えるクラブが増え、そのほとんどが大躍進するなどすばらしい結果を残していること。そんな彼らの活躍もどんどん伝えていきたい」





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