酒販チェーンのダン・マーフィーズやBWS運営 シェア圧倒的1位

米国系オーストラリア人のビジネスウーマン、ジェイン・ハードリカ氏が、酒販・パブ(英国式酒場)運営大手エンデバー・グループ(本社シドニー)の最高経営者(CEO)に就くことが決まった。オーストラリア在住者で酒を飲む人なら、エンデバーの社名は知らなくても、同社が運営する酒販店の「ダン・マーフィーズ」や「BWS」は馴染み深いだろう。通い慣れたローカル・パブも、実はエンデバーの所有かもしれない。
エンデバーは2019年、スーパー最大手のウールワース・グループが酒類部門を分社化させる形で発足した。21年にオーストラリア証券取引所(ASX)に上場し、ウールワースとは完全に別会社となった。ハードリカ氏はウールワースの役員時代、エンデバーの分離・独立に関わった経緯がある。
2023-24年度(23年7月〜24年6月)のグループ全体の売上高は、前年度比1.8%増の123億豪ドルと日本円で1兆円を超え、オーストラリアを代表する小売企業の1つとなっている。
酒販店1,700店以上展開
このうち主力の酒類小売部門は102億豪ドルと全体の8割強を売り上げた。ロードサイドの大型店舗が多いダン・マーフィーズ275店、商店街やスーパー併設の小型店が主体のBWS1,453店をそれぞれ全国に展開している。
調査会社アイビスワールドの推計(2025年)によると、エンデバーの酒販業界のシェアは36.7%とトップ。酒販店チェーン「リカ―ランド」などを展開する2位「コールズ・グループ」(スーパー大手)の酒販部門(15.6%)を大きく引き離している。
もう1つの事業の柱であるパブ部門「ALHホテルズ」の売上高は、21億豪ドルと全体の2割弱を占める。全国各地にある地元のパブ354店舗を運営し、バー、併設のレストランでのアルコール飲料、食事の提供、遊技機のギャンブル収入などで稼いでいる。パブ業界のシェア(2025年推計)も10.5%と首位につけている。
プロ経営者の手腕に期待
ただ、23-24年度のグループ全体の最終利益(税引き後)は4.3%減の5億1,200万豪ドルと収益性はいまひとつ。株価も3.99豪ドル(4月30日終値)と22年8月のピークの半値以下とぱっとしない。
ハードリカ氏の固定報酬は年間200万豪ドル(約1億8,200万円)。加えて、固定報酬の最大150%の短期業績連動報酬(STI)、最大200%との長期業績連動報酬(LTI)が支払われる。
米国からオーストラリアに移り住み、大手企業を渡り歩いて次々と業績を上げてきたプロ経営者の手腕が試される。
■ソース
Endeavour Group Managing Director and Chief Executive Officer (Endeavour Group)
Annual Report 2024 (Endeavour Group)
G4123 – Liquor Retailing in Australia (IBISWorld)
H4520 – Pubs, Bars and Nightclubs in Australia (IBISWorld)