アルバニージー首相は「回転ドア政治」を終わらせるのか?

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オーストラリア連邦選挙、今週末土曜日投票

オーストラリア与党労働党のアンソニー・アルバニージー首相

 オーストラリア連邦選挙(5月3日投票)は終盤を迎え、与党労働党(中道左派)の単独過半数獲得が予測されているが、アンソニー・アルバニージー首相は楽勝ムードを戒めている。

 1日の公共放送ABC(電子版)によると、首相はラジオ番組で「複数の選挙に勝つのは非常に難しい。ジョン・ハワード元首相(保守連合)が勝利した2004年の選挙以来、誰ひとり2選を果たした首相はいないんだ。21年間も回転ドア(指導者が短期間に変わることの例え)が続いている」と述べた。

 記録を振り返ると、アルバニージー首相の指摘は正しい。07年選挙で勝利してハワード氏から政権を奪ったケビン・ラッド元首相(在任期間07年〜10年)以降、延べ7人(13年に短期間首相に返り咲いた2期目のラッド氏を除くと6人)が首相に就いたが、いずれも1回しか選挙に勝っていない。

 オーストラリアではかつて、首相がころころ変わる日本の政治は「回転ドア」と揶揄された。しかし、ラッド氏以降の首相は、党内の権力闘争などでおおむね2〜3年の短命に終わっていて、かつてのような長期政権は実現していない。

長期政権で後世に名を残せるか

 オーストラリアでは1980年代から2000年代に至るまで、労働党のボブ・ホーク氏(83年〜91年)、同ポール・キーティング氏(91年〜96年)、保守連合のジョン・ハワード氏(96年〜07年)と長期政権が続いた。

 ホーク−キーティング政権は、変動相場制の導入、関税引き下げによる自由貿易、国営企業の民営化、規制緩和などを推進し、オーストラリア経済を繁栄に導いたと評価されている。4期11年続いたハワード政権も引き続き自由化を推し進め、労使関係改革による労働市場の規制緩和、財・サービス税(GST=10%)導入による税制改革、政府財政の黒字化など数多くの実績を残した。

 オーストラリアは91年からコロナ禍まで約30年間、景気後退を回避して先進国最長の経済成長を成し遂げた。その背景には、中国の高度経済成長によるオーストラリア産資源の輸出急増という幸運もあったが、過去の安定した長期政権が改革に取り組んだ功績も大きいと言われている。

 だが、足元では景気後退こそ免れているものの、成長率は長期トレンドから下振れしており、国内の生産性向上や貿易の中国依存脱却は急務となっている。アルバニージー首相も約20年ぶりの長期政権を築き、歴史に名を残す政策を実現できるか。政治手腕の真価が試される。

■ソース

Dutton hints at Coalition campaign failure as polls show Albanese majority in sight (ABC News)

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