関西で深化する日豪フットボール関係③ “オージー・コーチ”の若き有望株がいよいよ日本上陸。Jを目指すクラブでその才能と価値を「証明」する/日豪フットボール新時代 第154回

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鋭い視線で戦況を見守る様子は、既にJクラブの監督にふさわしい(写真提供:ティアモ枚方)

 JFL。日本フットボールのヒエラルキーでは4部リーグに当たるリーグは、Jリーグへの登竜門としてJを目指すクラブとその野望を打ち砕こうと腕を撫(ぶ)すアマチュア・クラブが高いレベルでしのぎを削る。かつて”門番”と呼ばれるHonda FCやホンダロックといったアマチュアの強豪がJへの階段を勢い良く駆け上がりたい新進クラブにひと休みを強いたりしたものだ。

 そのJFLで大阪第4のJリーグ・クラブとなるべく奮戦しているのが、FCティアモ枚方。府下北東部の中核都市、関西圏になじみが薄い人には難読地名の枚方(ひらかた)市を中心とする北河内地域を本拠に悲願のJリーグ入りまであと一歩のところまで迫っている。2022年、関西のJクラブの雄であるガンバ大阪のレジェンド、二川孝弘監督がティアモでの現役引退直後に監督に就任。ここ数年は、同監督とヘッドコーチ(HC)の2頭体制を敷き、昨年は元日本代表で自身もガンバのレジェンドである大黒将志がHCとしてトレーニングを仕切った。そんな彼がJ1川崎に引き抜かれ、その後任として白羽の矢が立ったのが英国生まれのベン・カーン。韓国でプロライセンスを取得後、コーチングのキャリアのほとんどを豪州で積み上げてきたカーンは、日本ではまだまだ知る人ぞ知る存在だ。

 筆者は、19年、アンジ・ポスタコグルーが日本のフットボール界に多大なインパクトを与えたころにフットボール専門某誌に「豪州の次のアンジ」を紹介する記事を書いた。そこで当時、豪州QLD州1部(豪州2部相当)の監督に過ぎなかったカーンを若手の最有望株として取り上げた。程なく、つかんだブリスベン・ロア(Aリーグ)の監督の座を予期せぬ病で志半ばでの退任を余儀なくされる不運。しかし、不屈の精神で病を完全に克服、ついに日本でのチャンスをつかんだ彼は、今、大阪で新たな挑戦の日々を送っている。今回の帰国時は、あいにくスケジュールが合わずに会うことは叶わなかったが、代わりに入手した彼が日本で使っているというLINEに次にティアモが勝った夜にでも久しぶりにメッセージを送ってみようか。

 ベン・カーン、この名前、しっかり覚えておいて頂きたい。前任者のように個人昇格を果たすのか、はたまたクラブを悲願の昇格に導くのか。いずれにしても、そう遠くはない将来、Jクラブを率いるベンの勇姿が見られるはずだ。その目標を実現することが、自身の才能と価値を証明する1番の方法だと彼は知っているから。

プロフィル

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

コラムニスト。タカの呟き「Aリーグ、今季から参戦のオークランドFCが初年度にプレミア(リーグ優勝)の快挙。クラブの快進撃に大きく貢献した酒井宏樹。主将として自身の経験を若手に還元しながらクラブの顔としても活躍する姿は「頼もしい」のひと言。ぜひ、ファイナルでチャンピオンの座を目指して欲しい」





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