メルボルンのようにはいくまいが──少しずつブリスベンの街で膨らみつつある“横丁文化”の最古参/タカ植松のQLD百景 第46回

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ブリスベンCBD バーネット・レーン

Text & photo: Taka Uematsu

 のっけから、メルボルンの話だ。メルボルンには、そのお洒落な街のイメージを体現する「Lane culture」という文化が根付いている。街中のふとしたところにあるレーン(lane)と呼ばれる小道に感じの良い店が軒を並べる。芸術的なミューラルに彩られた壁に囲まれた小道は、人気のインスタ映えスポットだ。

 とまぁ、貴重な字幅を割いて他都市をプロモートするのはよろしくない。ここは、ブリスベンの話をしなければいけないのだが、ブリスベンには“横丁文化”がほとんど育たなかった。都市部の中心街に構造的にレーンがほとんどないのが第一義的な理由。そもそも野暮なクインズランダー気質がレーン・カルチャーのような洗練された文化とあまり親和性がなく……って、ここまで書くと断定が過ぎるだろうか。

 そうは言っても、最近のブリスベン。ひと昔前までは地方の田舎都市に過ぎなかったのがものすごい勢いで変わっている。「へー、こんなお洒落な店ができたんだ」と気付かされることが増えた。うまくは言えないけど、ブリスベンなりのカルチャーが芽吹きつつある感じ。その一翼を新しく形成されたブリスベンなりのレーン・カルチャーが担っている。

 そんなブリスベンのレーンの中で一番古く、長く存在感を発揮し続けているのが、バーネット・レーン。シティ一番の繁華街クィーン・ストリート・モールに並行する通りは1830年ごろに形成され、街の歴史自体がそう深くないブリスベンでは出色(しゅっしょく)の存在だ。

 写真の一角は、長いレーンのちょうど端の辺り。のぞき込んで「この先に何があるのだろう」と思わせる不思議な空気感のここならば、あの街にも引けを取らないと思うのは身贔屓が過ぎるだろうか。

 ぜひ、ふらっと吸い込まれてみて欲しい。「え、こんなお店が」という、未知のブリスベンとの出合いが待っているはず。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人

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