
一番家から近い関係で、NPLQLD(QLD州1部)の古豪オリンピックFCのホーム・ゲームを観戦する機会が多い筆者にとって、オリンピックは思い入れの強いクラブだ。そのオリンピックには、現在、日本人選手が男女併せて3人在籍。男子では限られたビザ枠の2つを日本人に割くあたりに、このクラブと日本人選手の関係の深さが見て取れる。
今回取り上げるのは、新加入のFW宮澤弘(30)。筆者のようなオールド・ファンは、“ミヤザワヒロシ”と聞けば、Jリーグ草創期にジェフ市原(当時)で活躍したDF宮澤浩を思い浮かべる。現役末期に当時にしては珍しくキャンベラでプレーするなど豪州にゆかりのある選手だったが、当然ながら別人だ。
「キャプテン翼」の作者・高橋陽一がオーナーの南葛SC(関東1部)からやって来た小柄でスピードとテクニックに恵まれたアタッカーが背負うのは、点取り屋の証の背番号9。来豪直後の全豪のギリシャ系クラブが集まるプレ・シーズンのカップ戦でさっそく豪州初ゴールを挙げると、公式戦開幕に向けての期待も大いに高まっていたが、好事魔多し。程なく、ケガで戦線離脱を余儀なくされ、リーグ序盤戦を欠場する不運に見舞われた。
今年のNPLQLDは、サイクロンの影響により多くの試合が順延、開幕後3カ月を経てもまだ全日程の3分の1を消化したばかり。絶対的本命不在のかつてないほどの大混戦の中で、やや出遅れたオリンピックが8位ながらも首位との勝ち点差8というタイミングで話を聞いた。
「首位とはまだ差があるけれど、試合消化数が(3試合も)少ないからまだまだ十分にチャンスはある」とポジティブ。リーグ戦3試合1得点という自身の現状にも「毎年、10ゴール10アシストを目標にしているので、まだまだ。ここからギアを上げていきます」と力を込めた。
その言葉をさっそく有言実行したのが取材4日後の試合。下位にあえぐ昇格組を相手に自らの1ゴールを含む4得点で快勝。勝ち点差は変わらないものの順位を5位にぐいっと上げた。
当稿締切時点でリーグ戦は残り12試合(ファイナルを含めても残り14試合)で、最低限の目標まで残り8得点。ギアをググッと2段階くらい上げることで十分に達成可能な数字だ。宮澤が、目標達成に向けて、勝利に直結するゴールを上げ続けることが古豪の久々のファイナル進出にも直結する。
残りのシーズンを通して、しっかりと見守りたい。
プロフィル

植松久隆(タカ植松)
ライター、コラムニスト。タカの呟き「W杯アジア最終予選の日豪戦が直前に迫っている。日本が本戦出場を既に決めていることで消化試合となってしまったこともあって、正直、この国での興味レベルも低いし、日本の仕事先からの引き合いもほとんどない。そんな少々寂しい試合の開催地はパース。交通費も高く、結局、今回の現地取材を断念した。残念」