過去に戻ることはできません。過ぎてしまった1日を取り返す方法などありません。この瞬間、今日という日は過ぎてしまえばもう永久に戻ってきません。そしていつの日か誰であれ、人は必ず死を迎えます。私たちは自分の人生の行く手に死があることを知っているのです。にもかかわらず、あまり切実に感じることができません。病などにより命の期限を目前に突き付けられて初めて、自らの命と真正面から向き合うことになります。そこに至ってようやく、命の尊さ、有り難さを感じることができるのです。
しかし、せっかく授かった命です。儚（はかな）さを覚悟し、今を大切に存分に生き切らないと、もったいないように思います。そのためには、人生のその一瞬一瞬が過ぎ去っていく時間を、後悔や悲しみに支配されることなく前向きに進もうとする強さが必要です。過去の出来事や選択は変えられませんが、未来にはまだ無限の可能性が広がっています。辛くとも、前を向き、ポジティブに考えようとする勇気と努力が、新しいステージへと導いてくれるのです。
過去には幾つもの後悔があるかもしれません。遠い昔の失敗や過ちが、今も心に引っかかっているかもしれません。しかし、その思いにとらわれ続けることは自分を苦しめるだけです。過去を振り返るのは学びにするためであり、同じ過ちを繰り返さないためでもあります。過去の出来事は自分を形作る一部に過ぎません。受け入れて、前を向くことが肝心です。
過去を懐かしむあまりに先へ進めなくなってしまうこともあります。若かったころの自分や過ごした思い出に浸ることもあるでしょう。しかし、これから先にも新たな思い出や経験が待っています。未来にはまだ見ぬ可能性やチャンスが広がっています。だからこそ、過去を懐かしむばかりではなく、未来に期待を抱き、前進する心意気を大切にしてください。
進む先にもさまざまな選択や変化があります。失敗や困難に直面し、後悔や悲しみに包まれることもあるでしょう。しかし人間には、苦難を乗り越えて成長するための底力が備わっています。過去の出来事は変えることはできませんが、自分自身を変えることはいつでもできます。年齢や状況にかかわらず、楽観的な考え方や前向きな姿勢を持ち続けることで、未来に明るい光を見出すことができるのです。確かに時は戻りません。しかし、未来はこれからつかむことができます。新たな挑戦や出会い、成長が待っています。過去に縛られず、未来に希望を抱き、自分を信じて進んでいきましょう。
このコラムの著者
教育専門家 福島 摂子
教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中
