フィジオセラピストに聞こう 体の痛み改善法 第109回
マスク着用時の頭痛
マスクを着けていると頭痛がします--。最近、多くの患者さんから同じような質問を受けます。耳周辺にはたくさんの神経が通っており、それらが刺激を受け頭痛を発症することはよくあります。
公共交通機関を利用する時や室内にたくさんの人がいる時はマスクを着用する機会が多くなりました。しかし、長時間マスクを使用していると耳の裏と頭が痛く感じて、マスクを外して一息ついた経験はありませんか? これは耳裏に掛かるマスクのストラップが原因です。
耳の表面には3つの脳神経と、頚椎(けいつい)2番と3番から延びている大後頭神経が行き交い、実に多くの神経が複雑に耳周辺の感覚を支配しています。そよ風が吹いて来たり、風向きが変わったことを随時感じ取っているのは外耳です。それだけ敏感な感覚器だということです。
眼鏡を掛けている人なら、眼鏡を新調すると今まで気にならなかったフレームが気になったり、時に頭痛を伴うといった経験があると思います。ただし眼鏡のフレームは耳との接合面が広くデザインされており、慣れるに従って違和感なく着用できるようになっています。
一方、特に使い捨てのマスクのストラップは、細く強いゴムのバンド製のものが多く、長時間の使用に適しているとは言えません。
圧迫の強いストラップは、耳介(じかい)側頭神経、迷走神経の介枝耳(じかいし)、舌咽(ぜついん)神経の枝の3つの脳神経を直接刺激し、頭痛を引き起こします。そして、頚椎の大後頭神経は首を刺激して肩凝りや首痛を発症させます。また顎(あご)を痛める人もいます。
最近はストラップが太めにデザインされている布マスクをよく見かけるようになりました。このタイプのものは装着していても耳周辺に違和感が出にくいタイプのものが多いでしょう。
対策としては、以下が挙げられます。
- ストラップの強度を調節し、強過ぎないようにする
- ストラップが耳(外耳)に当たる位置を頻繁に変える
- 頭の後ろで結べる紐状のストラップの付いたマスクを使用する
- 不必要な時はマスクは外す
- 眼鏡を使用している人はフレームに絡ませて耳たぶに直接掛けないようにする
着用に慣れれば解消する場合もありますが、症状が続くようであれば試してみてください。
セラピスト紹介
奥谷 匡弘(ただひろ)
オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。セント・ヴィンセント病院で勤務後、自身のクリニックでプロ・スポーツ選手や財界の著名人の治療に多く携わる。特に顎関節症や頭痛治療に造詣が深く、セミナー講師も務める。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au/