幸せワイン・ガイド@オーストラリア
今月のテーマ:ビーガン、ベジタリアン・ワインって?
最近よく話題に上っている、ビーガン、ベジタリアンのワインのお話をしてみようと思います。ワインはそもそも、果物であるブドウの果汁をアルコール発酵させて造るもの。それなのに、「ビーガン、ベジタリアン」であるというのはどういうことなのでしょうか。
ワインの生産過程「清澄」
ワインの裏ラベルに「Produced with Milk Product」「Contains: Milk, Egg, Fish」などと書かれているのに気付いた人もいるかもしれません。ワインに牛乳、魚、卵が使用されているってどういういうことなのでしょうか。
一般に出回っているワインのほとんどは、透明に透き通っています。色の濃厚な赤ワインであってもグラスを白い背景にかざして見れば、奇麗に透き通って見えるはずです。ですが、発酵を終えたばかりのワインには、たんぱく質や過剰なタンニン、あるいは微生物などさまざまな浮遊物が浮かんでいて実は結構濁っています。これらを取り除く作業を「清澄(Fining)」と呼びます。ワインから濁りを取り除き外見を美しくするためだけでなく、ワインを安定させるのに必要なプロセスで、この清澄に必要なのが卵や魚製品なのです。
清澄剤として昔から使われているものの中には卵白があります。フランスのボルドー地方などで古くから使われてきた手法で、ボルドーではワインの清澄用に大量の卵を必要とし、同時に余った卵黄を活用するために作られたお菓子もあるほどです。他には魚の鰾(うきぶくろ)を原料としたアイシングラスと呼ばれるもの、あるいは乳製品(カゼイン)を使用する場合もあります。ワインにこのような清澄剤を直接入れ、たんぱく質同士を結合させ沈殿させて取り除く手法です。ビーガン、ベジタリアンのワインは、こういった動物性の清澄剤の代わりに、ベントナイトと呼ばれる粘土を使っているものが多くあります。
また、最近では清澄や濾過(ろか)をあえて行わない「無濾過、無清澄」のワインも見かけるようになりました。このようなワインは確かに濁っていて、複雑な味わいがあり、以前より一般的に受け入れられるようになりました。
清澄剤が最終的に瓶詰めされるワインに残存するのはほんの微量ではありますが、それでもアレルギー体質の人やビーガンやベジタリアンの食生活を選択している人は、できれば何が入っているのか知りたい、可能な限り避けたいという気持ちもあるでしょう。オーストラリアではアレルゲンの表記が必須となりましたし、「ビーガン」「ベジタリアン」の表記の明確化も積極的に行われるようになってきています。今までは飲食品に対して表記の明確化があまりされていなかったので、食生活の多様化の進んだ時代の流れを感じますね。
ちなみにですが、ユダヤ教の人びとのための「コーシャー・ワイン(Kosher Wine)」というものもあります。コーシャーは基本的には動物製品を使用しないため、コーシャー・ワインは必然的にビーガン、ベジタリアン・ワインとなります。
ビーガン・ワインはおいしいのか?
卵を使って清澄したものと、粘土を使って清澄したもの、異なる清澄剤を使うことで、味わいに違いは生まれるの?と聞かれたら、私は「いいえ」と答えます。ビーガン・ワインだからおいしい、おいしくないという基準にはなりませんのでご安心を。次回ワインをお買い求めになる際は、裏ラベルをチェックしてみてくださいね。
*今月のお薦めワイン*
ビーガン、ベジタリアン・ワインをベジタリアン料理と
お気に入りのデリバリーと共に
Stonier Pinot Noir 2018 Morning ton Peninsula $32
マッシュルームリゾットと合わせて
Web: yalumba.com/
平日おうちワイン
Yalumba Y Series Viognier 2019 $13
イチジク入りのサラダ、パンプキンスープと合わせて
Web: yalumba.com/
週末の晩餐に
E. Guigall Cote de Rhone Rouge (France) $25
ブラック・ビーンズのタコス、バーガーと合わせて
Web: guigal.com/en/
フロスト結子
オーストラリアと日本でワイン業界に携わり10年以上。ワイン卸業社に勤務しながらフリーランスでもワイン専門通訳、翻訳、ライター、市場調査、イベントなど幅広くこなす。私生活ではマラソン・ランナー。世界最大のワイン教育機関WSETの最上位資格、WSET®︎Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。
Web: auswines.blog.jp