近年、オーストラリアの不動産市場の動向が注目されている。特に投資手段として不動産物件の購入を考えている人にとっては、専門家の意見や重視すべき点が気になるのではないだろうか。本特集では、オーストラリアで活躍する不動産のスペシャリスト4人に、不動産投資のメリットや今後の展望を始め、それぞれの会社のサービス・強みなどをインタビューで聞いた。
Apex Investment Alliance
APEX(エイペックス)不動産
パトリシア・パク 氏
シドニーを拠点とし、オーストラリアの不動産投資のトータル・サポートを行うAPEX不動産。同社の日本マーケットを担当しているのがパトリシア氏だ。同氏が考える不動産投資のメリットや、不動産物件の購入に当たって気を付けるべきポイントなどについて話を伺った。
パトリシア・パク
日本大学商学部卒業後、1991年来豪。94年「パトちゃんの携帯電話」の経営を開始。TAFEのリアル・エステート・コースを受講。2017年にAPEX不動産入社以来、日本マーケット担当。日本マーケット営業部長。
公認不動産ライセンス番号2012-7952
――不動産物件を購入する際、重視すべき点は何でしょうか。
一番重要なのは「ディベロッパー」です。多くの人が物件の金額だけを見る傾向にありますが、車や家電などを買う時に注意を払う点を不動産では見逃している気がします。良いディベロッパーまたはビルダーの物件だから、完璧に不具合が起こらないとは言い切れませんが、何かが起こった際、各社の対応の仕方はかなり違います。ですから、ディベロッパー、ビルダーがどういった会社であるかは、重要視しなければならないと考えています。
――近年、オーストラリアの物件価格の下落がよく報道されていますが、その点についてどのようにお考えですか。
2017年後半に大手銀行への厳格な規制が課せられ、ローン審査が非常に厳しくなりました。それに伴い、オフ・ザ・プランで購入した人が、数年後の決済のタイミングでローンが組めず、デポジット金も払い戻されず、違約金が取られる可能性もあって、物件を安く手放すケースが増えました。更に、シドニー西郊のエッピングなどのエリアは、物件の供給過多で空室率が高くなっています。反対に、物件購入を検討している人は選択肢が豊富で交渉もできるため、持ち主は家賃を安くしたり、借り手がいなければ安くても手放したいという悪循環も手伝い、価格が下がっています。
一方シドニー市内中心部(CBD)では、物件が不足している状態です。その中で、物件価格の平均値を出すと、全体として下がっているという見え方になります。ロケーションの違いによって、空室率や価格差は大きく変わるので、鋭い目を持って観察すべきです。一方的な情報だけをうのみにし、物件価格が下落しているから買わない方が良いというのは全く事実を見ていません。それを信じてしまう人は、もったいないと思います。
また、最近では労働党(レイバー・パーティー)の政権奪取によって不動産市場が変わるのではないかという声もあり、物件購入を待つという見方もあります。しかし、皆がそう話すから待とうとしている間、知らないうちに物件価格は変わっていきます。待つべき理由が本当に自分と関係があるのか、冷静に考えるべきではないでしょうか。
――今後、物件価格はどう変化していくと思いますか。
オーストラリアでは物件価格の上昇・下落は、政府が「金利」でその価格をコントロールしようとします。例えば、「ネガティブ・ギアリングのポリシーの取りやめと再開」「ファースト・ホーム・バイヤー制度」「印紙税(スタンプ・デューティー)の補助」などが挙げられます。
オーストラリアには約1,000万戸の物件数があり、その総価値は7万5,000億ドルとされています。国にとって大きな財産価値を持つ不動産物件の価格を、これ以上下げるのかというと、それはしないでしょう。おそらく、価格を上昇させるために政府は何かしらのテコ入れをすると思われます。物件の総価値が既に10~12%(19年1月現在)落ちているということは、その国の財産価値が下がっていることでもあるので、政府はそれを食い止めようとします。
また、オーストラリア紙幣の印刷は、1997年に290億ドルだったのに対し、2017年は1,090億ドルでした。実に3.75倍のインフレ率です。インフレが生活にも反映されていることを感じる人も多いかと思いますが、不動産の物件価格に目を向けてみるとなおさらのことです。
16年、NSW州の不動産建築数が大幅に減っているので、供給不足になるのは目に見えています(※1)。供給が不足すれば物件価格は高くなります。5年後や10年後ではなく、今、目の前に見えてくることだと思います。
そのように分析していくと、現在約10%下落している分の跳ね返りがいつ来るのかを待つのではなく、これより先に、これまでオーストラリアの物件価格が徐々に上昇を続けている経緯からも供給不足になるのは一目瞭然。物件購入は間違いなくスマートな投資になります。先述のインフレ率の上昇にも間に合わせることができるはずです。
――不動産購入や投資を検討している人たちにアドバイスを頂けますか。
現金だけを所持することは避けた方が良いでしょう。1つのアドバイスとして、何かしらの投資をすることは資産を残すために最適な手段で、その投資は3~4倍の利回りがなければインフレ率の上昇に間に合いません。オーストラリアの物件市場は“徐々に”上がっていきます。1つの物件を買った際に「どのように置いておくのが良いのか」を考える必要があります。例えば、卵を産む鶏を手に入れたと思ってください。鶏が大きくなってその肉を食べるのが良いのか、もしくは毎日卵を産んでもらい、その卵を食べ続けていく方が良いのか、それは人それぞれの価値観の違いだと思います。
また1つの指標として、全取引物件の最低価格から最高価格まで並べた際の真ん中にある価格を指す「中間価格(Median Price)」というのがあり、2ベッドルームの部屋が1997年は24万ドルでしたが、現在(2019年1月)120万ドルです。更に専門家によれば、20年後(39~40年)は600万ドルになると予想されています。
これから価格が上昇しそうだと思った時に「これから物件を探さないといけない」と考え始めたのでは遅いのです。今の時期こそ、物件を探したり、自分の状況でローンが組めるかを銀行に査定してもらい、そして信頼できるエージェントに相談し、自身の金銭的能力を確認した上で、物件を購入すべきだと思います。
他にも、近年の不動産市場のトレンドとして、「Build to Rent」というのがあります。ディベロッパーが売るためではなく、貸すために物件を建てるのです。しかし「収入の半分ほどを家賃として支出する」(永遠に払い捨てのお金)というマインドをリセットさせ、物件価格の20%の頭金を用意することができれば、これからのインフレ率や、人口増加を見て、物件を購入できるのであれば今がチャンスだと思います。現金を持っているだけでは、何も買うことができなくなるのです。
物件は、安い買い物ではなく返品もできないため、アドバイスができる信頼のおけるエージェントに相談し、購入の際は慎重に、ただし躊躇(ちゅうちょ)もしすぎず、行動に移して欲しいですね。
今こそ売り出し価格で良い物件が買える時期です。ずっと何かを買いたいと考えている人は、ここで何もしなければ永遠に見ているだけで終わります。そろそろ決断すべきです。子どもの未来のためであれば、お金ではなく、価値が上がる物件が良いでしょう。10年後の物件価格を想像してみてください。今こそ投資をするチャンスです!
事業内容
1994年創業。セールス部門には120人が在籍し、これまでオーストラリア大手ディベロッパーとの取引実績を多数持つ。物件の販売・マネジメントから、弁護士/公認会計士/銀行/モーゲージ・ブローカーの紹介、土地の調査・開発まで幅広く取り扱う。不動産投資に関わる全てのサポートを行う。
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- ①グローバル・インテリジェンス・マネージメント
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