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森歩きの楽しみ③ 背高ユーカリ/タスマニア再発見

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タスマニア再発見

No. 131 森歩きの楽しみ③ 背高ユーカリ
文=千々岩健一郎

先月号で取り上げたユーカリの森には大きく2つのタイプがある。乾いた森と湿ったユーカリの森だ。

湿ったユーカリの森は、以前取り上げたレインフォレストと同じような日当たりの悪い湿った環境にできる。レインフォレストが山火事によって焼失してしまうと、その後に出てくるのはユーカリだ。そしてユーカリが成長して森ができると再び下からユーカリ以外のレインフォレストの木々が復活してくる。ユーカリは寿命が短いと言っても数百年は生きるので、レインフォレストが完全に復活するのにやはり数百年を要するということになる。従って、この湿ったユーカリの森というのは、レインフォレストとユーカリの森の中間的な存在といえるかもしれない。

そんな湿った場所に生えるユーカリの代表がスワンプ・ガム(Eucalyptus regnans)。高木タイプ・ユーカリの代表で背高ユーカリ、マウンテン・アッシュなどの名前でも呼ばれる。学名のレグナンスには森を制するという意味があって、世界に存在する広葉樹の中で最も高く成長する植物だ。世界で最も高い木は針葉樹、そして広葉樹として最も高いのがこのスワンプ・ガムだ。

マウント・フィールド国立公園にあるスワンプガム
マウント・フィールド国立公園にあるスワンプガム

タスマニアに存在する最も高い木は、ホバートの南部ヒューオン・バレーにある「Centurion」と名付けられたもので、高さ99.7メートル。おそらくこれが広葉樹としては世界で最も高い木ということになるが、残念ながら公開されていない。

最も簡単に観察できるのは、ホバートから1時間強で行けるマウント・フィールド国立公園だ。入口のビジター・センターを出発するトール・ツリー・ウォークと呼ばれる森歩きのトラックを歩けば、ラッセル滝やホースシュー滝を見ながらこの背高ユーカリが林立する様子を観察できる。トラックの最後の部分にこの森で最も高いおおよそ80メートルのスワンプ・ガムがある。センチュリオンには及ばないが足元に立つとその高さと風格に圧倒される。

同じ高木タイプとして知られているのが、ストリンギーバーク(Eucalyptus obliqua)。この木はユーカリとしては珍しく樹皮が全く剥けないタイプで、樹皮が楽器のストリング(弦)のように細くほぐれるのでこの名前がある。このユーカリで有名なのは北西部スタンレーの近くにあるビッグ・ツリーだ。2号線のハイウェーから山側に30キロほど入った所にある「Dip Falls Reserve」。ここにはマウント・フィールドのラッセル滝に負けない見ごたえのあるディップの滝があり、近くにあるビッグ・ツリーと名付けられたストリンギーバーク・ユーカリの老木は瘤が付いていてなかなかのものだ。


千々岩 健一郎
1990年からタスマニア在住。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する事業の運営を行うと共に、ネイチャー・ガイドとして活躍。2014年代表を離れたがタスマニア案内人を任じて各種のツアーやメディアのコーディネートなどを手掛けている。北海道大学農学部出身。

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