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陶芸家・スウェン博江さんのデジタル・アーカイブ発表イベント/キャンベラ・イベント巡り④

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作品を披露したスウェン博江さん

 こんにちは。日豪プレス・インターンのJoyです。キャンベラ・イベント巡りの第4回目となる今回は、5月13日に開催された、陶芸家・スウェン博江さんのデジタル・アーカイブ発表イベントについてお届けします。

 同イベントは、スウェンさんの陶芸活動50周年を記念したデジタル・アーカイブ「スウェン博江の陶芸世界」の立ち上げとして開催。5月3~21日まで「ANU Drill Hall Gallery」でポップアップ展示会も行われました。

オーストラリアを代表する陶芸作家

展示会の様子

 50年以上にわたり、オーストラリアのスタジオ・セラミックに携わる人びとに大きなインスピレーションを与え続けてきたスウェンさんは、活動し始めた当初は異例だった特定の視点をもたらし、それ以来、多くの人びとの重要な模範となっています。

 スウェンさんは、1934年京都に生まれ、高校時代には油絵を学び、次にテキスタイル・デザイナーとしての活動していました。1957年から陶芸の勉強を始め、陶芸家の林平八郎さんに京都市工芸指導所と氏の工房で師事しました。当時、日本で女性がこのような修練を積むことは異例だったと言います。スウェンさんは、1945年に女性参政権が宣言された後、戦後最も早くから陶芸を職業とした第一人者です。

 京都で陶芸家としての地位を確立した後、1968年にオランダからオーストラリアに移民していたグラフィック・デザイナー兼アーティストである夫のコーネル・スウェンさんと共にオーストラリアへ移住。キャンベラ近郊クイーンビアンの「Bimbimbi」敷地内に自分たちのスタジオと「Pastoral Gallery」を設立し、2000年までそこで暮らし、働き、展示を行ってきました。

 1971~73年までキャンベラ・テクニカル・カレッジで陶芸を教え、その後「Bimbimbi Ceramic Study Group」を設立。1981~2000年までキャンベラ美術学校「Canberra School of Art」(現在のANU School of Art & Design) の講師として活躍しました。

芸術のために生きることを選んだスウェンさん

スウェンさんが京都で制作した1965年の作品。「女流陶芸展」に出品し、人間国宝の陶芸家・近藤悠三さんと石黒宗磨さんから絶賛され、それをきっかけにスウェンさんは陶芸を自身のキャリアとして選ぶことを確信したと語る

 私は、同イベントに参加する前から、日本人陶芸家としてキャンベラで活躍するスウェンさんに興味がありました。彼女の展示会で作品を鑑賞し、ご本人からお話を伺えたことをうれしく思います。

会場には、数多くの作品が展示されていた

満席となった会場でスピーチをするスウェンさん

 彼女の作品は、どれもが個性的で美しく、色や模様、そして形など全てが丁寧に作られています。詩的で視覚的な美しさが表現されており、彼女の長年の努力、プロ意識、そして何よりも陶芸への愛と情熱が作品から伝わってきました。

 作品を鑑賞した後、デジタル・アーカイブ・プロジェクトの参加者やスウェンさんの親しい方々によるスピーチが行われました。オーストラリアの⼯芸研究の第⼀⼈者であるGrace Cochraneさん、アメリカ人で⽇本の陶芸芸術研究第⼀⼈者であるMeghen Jonesさん(ビデオ・メッセージで参加)、著名な陶芸家Paul Davisさん、陶芸教育者Jacqueline Claytonさんらが、スウェンさんの作品のことだけではなく、人として、友人としての彼女についても温かい言葉を述べました。彼女がどれほど人に影響を与え、愛され続けてきたかを知ることができました。

 最後にスウェンさんがスピーチを行いました。その中で、特に印象的だった言葉があります。

「私はいつもまじめに誠実にベストを尽くし、仕事や人びと、友人にいつも真摯に心を開いて生きてきました。私は芸術のために生きることを選びました。命がある限り続けていきたいです。健康で長生きできる、すばらしい人生を願っています」

 私も、彼女のその思いが叶うことを心から願っています。

デジタルアーカイブ「スウェン博江の陶芸世界」

オーストラリアで作られた最初の「陶芸作家のデジタルアーカイブ」の発表

 同イベントの中心となったデジタル・アーカイブは、ACT政府の「ArtsACT基⾦」及びNSW政府の「CreateNSW基⾦」のサポートを受けてプロジェクトが実現しました。一連の技術的なデモンストレーションを通じて、スタジオでのスウェンさんのクリエイティブな実践を記録したいという願望から生まれたものです。スウェンさん自身が持つ技術、知見、陶芸への思いを将来の陶芸家たちと共有したいという思いからデジタル・アーカイブ・プロジェクトがスタートしたと言います。

 デジタルアーカイブのウェブサイトは主に、スウェンさんの創作⼯程アーカイブビデオ、インタビュー・ビデオ、写真アーカイブ、210点を超える作品⽬録、そして批評家たちによるエッセイの4つの要素から構成されています。

 彼女の陶芸家としての活躍は、このデジタル・アーカイブに反映され、これから何年も将来の陶芸家に影響を与えることでしょう。ウェブサイトは日本語と英語で作成されているので、ぜひチェックしてみてください。

ウェブサイト:https://www.hiroeswenceramicart.org/



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