雪に関する法律/法律相談室

第75回 日豪プレス法律相談室
雪に関する法律

 米国ニュージャージー州には、車が雪や氷で覆われてしまった場合、それらを全て除去してからでないと道路に出てはいけないという法律があります。大型トレーラー車に付着していた氷がトラックに当たり、そのトラックがジェシカさんの車と衝突した事故で、不運にも彼女が亡くなったことが発端でできたこの法律は、“ジェシカ法”として知られています。

 豪州に同様の法律は存在しませんが、もしあなたが、車が雪に覆われていたことが原因で起きた交通事故に巻き込まれ負傷した場合、その車をカバーするCTP保険会社に対し賠償請求を起こすことが可能です。運転前に全ての雪や氷を除去することを怠るという相手ドライバーの過失が理由となり、賠償請求の対象となります。

 さて、スキー・シーズンが始まった豪州ですが、ここでスキーというスポーツに関わる法的責任について考えてみましょう。昨年、NSW州高等裁判所で、南半球最大規模のスキー場、ペリッシャー・スキー・リゾートで起きた事故に関する判決が出ました。スキー上級者のキャッスルさんは、リゾートに雇われていたスキー・インストラクター、トーマスさんと滑走中に衝突し、負傷しました。裁判所は、事故はスキー・インストラクター側の無謀な滑走が原因で起きたと判断しました。そのため、雇用主であるペリッシャー社は、トーマスさんに代わって賠償請求訴訟に応じました。

 しかし、州法においてスキーは危険を伴うスポーツ/娯楽と認識されていることを理由に、原告のキャッスルさんは、スキーを行うことで生じる明らかなリスクを受け入れなければならないという弁護によって、ペリッシャー社は法的責任を逃れることができました。

 ここで興味深いのは、通常、こうした場合の弁護は、予約条件書(利用規約)や免責同意書などの書面で示された警告を根拠としますが、裁判所はそれを認めなかったことです。予約条件書の内容について無関心な人が多いので、スキーの危険性についてダイレクトに警告するには手段が不十分だったという考えからです。裁判所は競争・消費者法を適用し、書面に記載された警告はリスクの性質を特定していなければならず、また免責同意書に関しては、無謀な行為で起きた事故は免責にならない、と判断しました。上記判例で注目すべきことは、賠償請求を制限する州法が、連邦法(競争・消費者法)に優先して適用されたことでした。

 豪州の積雪記録は361センチ。今年はスキーが安全に楽しめるほどの降雪を期待しましょう。

このコラムの著者

ミッチェル・クラーク

ミッチェル・クラーク

MBA法律事務所共同経営者。QUT法学部1989年卒。豪州弁護士として30年の経験を持つ。QLD州法律協会認定の賠償請求関連法スペシャリスト。豪州法に関する日本企業のリーガル・アドバイザーも務める。高等裁判所での勝訴経験があるなど、多くの日本人案件をサポート。

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