労災法における負傷した被雇用者の保護について

日豪プレス法律相談室

 

第31回

労災法における負傷した被雇用者の保護について

豪州は労働者の権利保護が手厚く、どの産業においても労働基準の遵守が徹底されているという考えを持たれている人が多いかと思います。本稿ではQLD州の労災法(Workers’ Compensation and Rehabilitation Act 2003)上、負傷した被雇用者に与えられる権利と雇用主の負う義務について触れたいと思います。

労災法の232B条(1)項では、被雇用者が業務中に負傷した場合、雇用主は被雇用者がケガを負った日から12カ月間、負傷が原因で通常業務を遂行することができないことを理由に被雇用者を解雇することを禁じています。

負傷した被雇用者の保護という観点から、労災法では「解雇」を広く定義しており、雇用主が被雇用者に満足に業務を遂行できないよう不当な条件を課し、被雇用者が自発的に辞職する場合も「解雇」とみなされる可能性があります。

被雇用者が負傷した場合、雇用主は負傷した被雇用者に適した業務を提供し、被雇用者が引き続き業務を引き受けられるよう無理のない体制を整える義務があります。

被雇用者の負傷により特定の役職が空いた場合は、代わりの人を一定期間(12カ月以内)雇うことができます。ただし雇用主は代わりの被雇用者に、その雇用が一時的な雇用であること、また、負傷した被雇用者に復職の権利があることを書面にて事前に通知しなければいけません。

負傷した被雇用者の復職について付け加えると、ケガによって解雇された被雇用者はケガを負った日から12カ月以内であれば、職場復帰が可能と記される医師の診断書の提出を条件に、雇用主に以前の役職への復職を求めることが可能です。

さらに、復職の要求に雇用主が応じなければ、被雇用者は労使関係委員会(Industrial Commission)に復職命令の申請手続きを起こす権利を持ちます。

被雇用者自身が負傷することのないよう安全に配慮し、雇用主は被雇用者が安全に働ける環境を築くというのが大前提なのは言うまでもありませんが、それでも予期しない事態というのは起きてしまうものです。

その際、被雇用者は最低限どのような権利を持つかを知っておくべきだと言えます。一方で、事業を行う雇用主側からすれば、現実的に厳しいと考えさせられる内容の義務もありますが、労災法により雇用主に課せられた義務の違反には罰則が科せられるのでご注意ください。

上記は情報提供を目的とし、法的アドバイスではありません。


柿崎秀一郎
豪州弁護士。中央大学法学部卒。ボンド大学法務博士号取得。リトルズ法律事務所で民事訴訟を中心に法務を行っている。

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