第17回  投資とは何か? ──資産家への道②

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第17回 投資とは何か?

──資産家への道②


文=諸星きぼう

前回まで数回にわたり1990年中盤のグローバル・マネーの動きを理解してもらうことによって、為替を中心とした相場の変動要因を知っていただきました。まだ続きがあるのですが、今回は少し趣向を変えて、「資産家への道」ということで、投資・資産運用を考えてみます。

私が投資教育や投資家教育を行っていると言うと、「株ですか? FXですか?」とよく聞かれます。

投資とは、株やFXを「やる」ことではないのですが、世間一般では、株やFXしか頭に浮かばず、しかも「やる」と表現する人が多い。

こうした面に現れるように、投資に関して、ばくちを「やる」のと同じ対象と考えているようです。

エリート・サラリーマンであっても敏腕経営者であっても、このように金融リテラシーが乏しく、お金を稼ぐ手段は自らの労働によるものだけと考えている人が何と多いことか。

さらには「やる」と表現するように、そうした方にとって、投資は博打であって、危険な行為であるとすら考えているようです。

私から言わせると、何ともったいないことかと思います。保有しているお金を銀行預金に「遊ばせ」、「働かせない」ことはもったいないだけではなく、大きなリスクを抱えていることでもあるのです。

そのリスクとは、通貨価値が増減することです。預金をしていれば、名目的なお金は減らないと考えられがちですが、実際には大きく変動しています。

同じ金額であっても、現在と1年後では購入できる商品の量、価値が変化しているからです。それはインフレによることもあれば、為替の変動によることもあります。

 

投資・資産運用とは何か?

では、投資、資産運用とは何かということですが、それはアセット、つまり資産を保有することです。

ただし、そのアセットは収益性のあるものである必要があります。収益性とは、インフレ率を上回る利回りが期待されるということです。

なぜ、インフレ率を上回る必要があるのか。アセットであるということは、資産価格がお金の価値の変化、つまりインフレで変化するということです。

インフレによって、お金で表現される資産の価値は上昇しますが、お金の価値は下落します。ですから、インフレ率程度で資産価格が上昇しても、実質的な価値は増えていないということになります。

収益があるということは実質的に価値が増大することですから、インフレ率を上回る利回りが求められるということです。理解できましたでしょうか?

 

お金を守るのか、増やすのか?

資産運用は収益性資産を保有することだとご理解いただけたと思いますが、どのようなアセットを保有するかについては、投資の目的により異なります。

それは、お金を増やしたいのか、お金を守りたいのかなど、目的によって、自ずと方法論が異なってきます。

「お金を増やす」ということは、資産家への道の第1歩です。

「お金を守る」ということは、資産家であり続けるための知恵です。もちろん、資産家への道を進んでいる時には両方が必要になります。

お金を増やしたいということは、現在保有している財産では、あなたの夢やライフ・デザインを実現することができず、これから増やす必要があるということだと思います。

一方、お金を守りたいということは、現在の財産で夢やライフ・デザインを実現するのに十分な財産があるが、それを実現していく間に、財産が毀きそん損することを心配しているということですね。

例えば、銀行預金。この失われた20年という間、幸いにも(?)日本はデフレである期間が長く、インフレの時でもその上昇率はゼロに近い状況でした(ここでは、物価上昇率がプラスの場合インフレといい、マイナスの時をデフレと言っています)。

ですから、銀行預金が目減りすることはないどころか、実質的には若干増価していました。

銀行の破たん懸念についても、ペイ・オフが発動されたのはほんの10年前のことであり、銀行が倒産しても預金が全額保護されていましたから、心配は不要でした。

ペイ・オフが発動されてからの破たんも、高い金利で預金を集めていた、一見して危ないと分かる銀行であり、ほんの少し高い金利に目が眩んだ、一部の人々が損をしただけでした。

また、実効為替レートを見ると、円高となっており、円を保有しているだけで財産は実質的に増えていました。日経通貨インデックスで見ますと、2008年と比べて、円は約25%も増価しているのです(11月2日現在)。

次に、不動産を考えてみましょう。所有不動産を他人に貸して賃貸収入があった場合、収入があるから利益が出たと単純に考えるかもしれません。でも、その所有不動産の価値は増価していたでしょうか? 少なくとも上物である建物は経年とともに減価していますし、土地の価格も下がっている可能性が高いのではないでしょうか(豪州であれば、不動産価格が上昇している局面も多かったでしょうが、所有期間利回りをしっかり計算して、安全資産である預金などの利回りを十分に、つまりリスク分を凌りょうが駕しているかを検証してみましょう)。

また、株式はどうでしょうか。市場全体を表すTOPIXは、上値抵抗があり、行ったり来たりで現在ではきっとマイナスでしょう。もちろん個別銘柄で何倍にも上昇している銘柄はありますが、それはあくまでも少数であり、それを判断するのは普通では難しいです。

日本では、大雑把に言って「キャッシュ・イズ・ザ・キング」という20年であり、国内への投資という意味では、銀行預金にしているのが一番良かったわけです。

しかし、これからも円預金を持っていれば安全かと考えると、「NO」としか言えません。日本の財政赤字は、破たん寸前のギリシャの100数十%をはるかに超え、GDP比200%を超えています。それでも日本国債が売りを浴びない、つまり円が売りを浴びないのは、日本国債の保有者がほとんど日本人だからです。いわゆる個人金融資産1,400兆円が担保となっているからです。

しかし、2015年くらいには、その日本人の金融資産では足りなくなります。債務の膨張率が資産増加率よりも激しいからです。

さらに、貿易赤字は定着化しつつあり、所得収支のプラスで何とか経常収支がプラスとなっていますが、漸減しています。この経常収支が恒常的に赤字になると、黄色信号、いや赤信号が灯ったと考えた方が安全です。

経常収支の黒字は、民間貯蓄が支えています。分かりにくいかもしれませんが、国際収支を反対サイドから見ると、経常収支が黒字ということは、国内の誰かの富が増えることを意味します。以前は個人貯蓄率が高くそれを支えてきましたが、超・低金利と長引く不況の中、個人所得が減少してきて貯蓄率が下がってしまいました。それを企業貯蓄が支えてきたのですが、企業の収益力が落ちていく中、企業貯蓄が減少し始めたら、経常収支が赤字になることは避けられないでしょう。

ですから、まずホーム・カントリー・バイアス、つまり自国内が安全と考え、自国内に財産を集中してしまうことを即刻止めることが重要です。

次回は、どうやってお金を増やすのか。そして、どうやってお金を守るのかについて、書いていきます。

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著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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