第22回  父から息子への手紙①

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第22回  父から息子への手紙①


文=諸星きぼう

今回は少し趣向を変えてみました。当コラムのタイトルは「夢をかなえる投資術」ということですが、一番大切なことは小手先の投資テクニックを学ぶことではありません。一番大切なことと私が思っているのは、「時代の流れ」を読むことです。時代の流れを読むことは、投資だけでなく事業を行う上でも、もっと言えば人生を生きるためにも最重要なことだと考えています。
 その最重要なことを10歳になった息子に伝えたいと考え、息子に宛てて手紙を書きました。子ども宛てとはいえ、大人にとっても非常に参考になると思い、今回から3回に渡って連載したいと思います。
 
             ◇ 

君が生まれて10年、子ども時代の半分が過ぎたね。これまで断片的に、そして散発的にしか、世の中の話や君が進む道へのアドバイスをしてこなかったので、この10年という区切りに少し話をしよう。
 君は今、ほとんど毎日、塾に勉強しに行って忙しそうだね。お父さんが「何のために勉強するの?」と聞くと「頭が良くなりたいから」と答えたね。
 確かに、特に君の年齢では、頭をできる限り使うことはとても重要だね。それは認めるよ。でも、今の君のゴールは、有名校に入ることだよね。自分の頭が良くなったと証明したい気持ちは分かるし、お父さんと同じようにいい学校に行きたいと思うことは嬉しいよ。
 ただ、ここで考えてほしいことがあるんだ。
 それは「時代の流れ」なんだ。
 お父さんが子どものころ、いや大学を卒業する時だって、そんなことは考えたこともなかったし、それを考えることの重要性を教えてくれる人もいなかった。というより、ほとんどの人が考えられなかったのだろう。
 まだお父さんの時代までは、それを考えなくても何とかうまくいった。でも、君の時代は、もうこれまでのやり方は通用しないんだ。
 それを、これから説明しよう。 お父さんの時代では、母親たちは「いい大学に入って、いい会社に入ってくれればいい生活が保証される」と思っていた(今の母親たちもたいていはそうかもしれないけれど、もうそういう時代ではないんだ)。
 社会が安定している時代で、普通の経済的幸せを手に入れるためなら、それは正しかった。
 君のおばあちゃんとお父さんは、就職の時、こんな会話をした。

おばあちゃん「東大を出たのに、なぜ大蔵省に入らないの?」
お父さん「官僚なんかになりたくないよ、給料も安いし。金融で稼ぐよ」
おばあちゃん「じゃあ、日銀に入ったらいいじゃない?」
お父さん「日銀も官僚みたいなものだから、民間に行くよ」
おばあちゃん「じゃあ、興銀(元日本興業銀行)に行けばいいじゃない」 

なぜ、こんな会話を書いているかというと、この会話の中に時代の流れの一部が反映されているからなんだ。
 君のおばあちゃんは、サラリーマンだったら、官僚が一番と考えているわけだ。それに対して、お父さんは民間、というより「お金」を重視していたわけだ。
 おばあちゃんの時代は、官僚が花形スターであり、特に昭和30年代から50年代にかけては官僚が日本を動かしていたと言っても過言ではない時代だった。いわゆる「官」の時代だ。
 ところが、お父さんが大学を出るころは、バブルの時代だったんだ。バブルっていう言葉、聞いたことがあるよね。どういう風に説明したらいいかな? お金がお金を生んでしまい、物の価値が軽んじられた時代と言ったらいいだろうか。だから、能力のない人でも、お金を取り扱っている人なら、お金儲けが簡単にできた時代なんだ。買っていれば、何でも値上がりしたから儲かったんだ。特に、不動産の値上がりはひどかった。お金があり、不動産を買えればひと儲けできたってわけさ。そんなあぶく銭、つまり努力もなしに大金を手にした人たちは、そのお金を湯水のように使った。不動産や株を買うことができない人も、あぶく銭をたくさん使ってくれる人たちのおかげで、経済が良くなり会社も潤い、収入が増えるという恩恵を受けたんだよ。残念ながらお父さんは、学生から社会人になりたてだったので、その恩恵をあまり受けていないけど。
 バブルは92年ごろにはじけちゃったけど、人々の心には、お金がすべて、お金があれば幸せになれる、なんていう気持ちが強くなっちゃったんだ。だから、この20年間、 日本の経済はずっと良くないけど、自分はお金儲けをしよう、お金がたくさん欲しい、お金をたくさん稼いでいる人は偉いなんていう風潮がまかり通っていたんだ。
 恥ずかしいけど、お父さんも30代半ばまでは、そんな時代の流れに流され、お金を稼ぐことやお金持ちになることばかり考えていたんだ。
 このような「お金」が一番の時代は、お金を稼ぐ商人の時代だから「商の時代」と言えるだろう。
 でも、お父さんは、君が2〜3歳の時に目覚めたんだ。お金が一番じゃない、幸せが一番だとね。その辺のことは、君も持っている、お父さんが書いた本「大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術」のあとがきを読んでくれ。
 さあ、ここで問題だ。おばあちゃんの時代である「官の時代」から、お父さんの時代「商の時代」と来て、君の時代は何の時代になるだろうか?

 難しい?
 そうだね。急に言われたって、どう考えたらいいか分からないよね。
 未来のことなんて、分からないと思うかもしれない。
 でも、未来のことは、簡単に分かるんだよ。
 それはね、歴史に学ぶんだ。
 えっ、それは過去のことじゃないかって。
 人というものは、少しずつ進化、進歩はしているけど、それはほんの少しだけであって、歴史の大きな流れからみたら、ほとんど変わっていないんだ。分かりやすく言うと、地球の歴史から見たら、人間の時代なんてほんの一瞬じゃないか。だから、長い歴史から見たら、変化がないって考えられるよね。
 つまり人間の過去を見れば、未来も見えるってことさ。こういう観点から、歴史を学ぶと面白くなるよ。
 こんな言葉もある。「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉だ。賢い人は、人間の長い歴史の中の、たくさんの人の経験に学び自分に生かしていくけれど、愚かな人は、自分のちっぽけな経験しか参考にしないから、間違いばかりするという意味だ。
 だから君も、歴史を学び、賢い人になって、正しい行動をしてほしい。
 お父さんも、大学受験の時は日本史、世界史を選択していたし、大学に入ってからは西洋史、中国史なども勉強した。高校の時の漢文だって、その漢語で書かれている内容は、中国史そのものじゃないか。でも、お父さんの歴史の勉強はまだまだ足りないし、それを生かすことができることも最近までは知らなかった。君には、ぜひ歴史を生かしてほしいと思う。

 

著者プロフィル
諸星きぼう◎もろぼしきぼう

 

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に「お金は週末に殖やしなさい」(2010/10)、「大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術」(2009/3)。
オフィシャル・サイト: www.idealjapan.com
ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi
ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com
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