第7回 2012年経済展望

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第7回 2012年経済展望

文=諸星きぼう

今回は、年の初めということで(原稿執筆時点)、今年の相場展望を描きます。

欧州債務危機が深化している中、世界経済の先行きは不透明な状況となっています。危機の震源地である欧州はマイナス成長に陥ることが予想され、世界経済に暗雲を漂わせています。

米国経済

米国経済は年末から幾分明るさを取り戻しているものの、雇用の改善は遅々として進まず、米国の成長を支えているものはドル安効果と考えられます。昨年央からドルの実効為替レートが上昇に転じているように、ドル高傾向では米国経済は持たないと考えられます。したがって、時間の経過とともに米国経済は失速を始めると思われます。その状況に陥った時、最後の政策手段である量的金融緩和第3弾、いわゆるQE3を実施すると思われますが、その効果も比較的短期間で消え、秋が深まる10、11月ごろには再度米国経済も失速を始めるでしょう。QE3によりドル安も進行し、米国資産選好は弱まることから、米国株式も下落し、米国の危機に陥る可能性があります。ドル安、米国株安に加えて、米国債券まで売られるような状況、つまり米国の信用リスクが高まるに至っては、クラッシュが起きる可能性も否定できません。

日本経済

一方日本経済ですが、欧州危機や円高傾向で景況感が悪いものの、震災復興が本格化してくる中で年央くらいには景況感に明るさが見られるでしょう。それを見越して、日本株式は例年のように春先(3月ごろ)反発局面を迎えるでしょう。外部環境が許せば、5月連休明けまでの株価上昇が見られるかもしれません。しかし、欧州経済の悪化、米国経済が失速するにつれて日本経済も失速し、株価も軟調になるでしょう。夏くらいから再び株価は下げ始め、米国株式次第では急落局面、そして日経平均7,000円割れを現出するかもしれません。QE3によるドル下落により、米ドルが70円を割れ、60円に近づくような相場展開になった場合は、遂に日経平均5,000円台も覚悟しなければならない局面が来る可能性も否定できないでしょう。

新興国経済

また新興国も、昨年インフレ懸念から利上げを断続的に行ってきましたが、なおもインフレ懸念は収束していませんでしたが、欧州債務危機により経済が軟調になり利下げへ転じました。経済とインフレという両睨みの政策運営は苦しく、成長率はかなり抑えられた状況が続くと思われます。

世界情勢

政治的には、米国大統領選、中国、ロシアと大国のトップが入れ替わる年であり、思い切った経済運営に支障をきたす可能性もあります。欧州債務問題国が投機筋に狙われる要因としては、一丸となった政治的な意志を示すことができないことにより付け入られており、政治も注視しなければならない年となるでしょう。

今年は、地政学的リスクにも例年にも増して、注意しなければならない年となるでしょう。イランの核開発問題で、中東情勢の不安定さが増し、景気悪化により通常なら原油価格の下落が期待できるところですが、高値維持、乱高下する可能性があり、それが経済へ悪影響を与えるとともに、マーケットの変動率を高めることになりそうです。北朝鮮でも金正日が死去し、強力なリーダー不在な状況の核保有国の出現は、世界情勢に緊迫感を与えそうです。

世界の覇権国株式市場に「10年サイクル」があります(このサイクルについては、機会があればこの紙面でも書きたいと思います)。このサイクルによれば、2012年のように2の付く年は、そのデケード(10年)の中で底値を付ける可能性が非常に高い年となります。

概況にも書いたように、今年2012年は、世界経済状況が悪化すると思われます。したがいまして、株価も安値を付ける可能性が高いと考えております。

世界的に株価が下落する、つまりマーケットがリスク・オフの状況になるということは、オーストラリア・ドルも下落することになるということであり、前回のコラム記事(四角で囲われている記事)で書きましたように、豪ドルが急落し、対円で50円台が現出する可能性が高いのです。またオーストラリア株式も急落し、あのリーマン・ショック時につけた、オール・オーディナリー指数で3,000ポイント付近まで下落することになりそうです。

いよいよ2010年代の、陰の極の最終局面がやって来ます。しかし、これを乗り越えれば、明るい未来が待っています。

今月の 得ネタ

為替ポジション

よく為替市況などで「溜まっていたショート筋からの買い戻しで、相場が急上昇した」とか、「ロングが溜まっているので、相場の頭が重い」というような表現を目にすることがあるでしょう。

ここで言うロングとは、買っているポジション(持ち高)のことで、ショートとは売っているポジションのことです。

為替取引の場合は、何かの通貨を買う時は必ず何かの通貨を売ることになります。例えば、ドル円を買うということは、ドルを買って円を売っていることになります。

したがって、為替の場合のロングとは、ドルならドルという通貨を主体にして買っているポジションが多いか、少ないかを見ます。

株式などの上場市場の取引に限定すれば、マーケット全体のロングやショートのポジションは分かりますが、為替取引の大半はOTC(Over the Counter)といって相対取引ですので、マーケット全体でのポジション状況は誰にも分かりません。

そこで、マーケット全体のポジションを推定するのによく使われるものが、IMM(シカゴ・マーカンタイル取引所の1部門)の建玉状況で、そこからマーケット全体を推定します。

掲載したグラフを見てください。これはユーロの投機筋のポジション推移とユーロ・ドルをグラフにしたものです。

ユーロの買いポジションが増えたり、売りポジションが減っていくとユーロが上昇し、その逆もしかりであることが見てとれると思います。

このように建玉の変化を見て相場を予想することもあるのです。

現在、ユーロが下落し続けていますが、ユーロの売り残が最高水準になってきていることが原因であることが分かります。

しかし、何かのきっかけで、このショート・ポジションが買い戻されるようなことがあると、ユーロが大暴騰することがあるのかもしれませんね。


著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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