第5回 投資家として進化しよう

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第5回 投資家として進化しよう

文=諸星きぼう

なぜ、今、進化する必要があるのか?

経済が右肩上がりの時代には、株式なり不動産なりのリスク・アセットを保有していれば、長期でみれば報われてきました。なぜなら、こうしたリスク・アセットは経済成長とともに価値を上昇させるからです。

しかし、先進国経済が低成長・低インフレの時代に入ってくると、それに比例してリスク・アセットのリターンも低くなり、老後のための資産形成には十分なリターンが上げられなくなりました。

また、低成長時代になると、より有利なリターンを求め、まるで狩人のように、世界の資金(グローバル・マネー)が世界中を駆け巡ります。それにより、マーケットのボラティリティー(変動性)が上昇し、リスクが大きくなっていくのです。

さらには、経済の中心が先進国中心から、新興国へと移って行く中で、従来の、ある程度秩序があり成熟した経済構成から、元気はあるが未熟な経済へと逆行し、経済の変動も激しくなっていくことも予想されます。

マーケット環境の変化

こうした中、マーケットのグローバル化が進んでいき、マーケットの動きが同一化してきますと、投資の原則とされてきた国際分散投資理論が通用しなくなっていくのです。分散投資というものは、難しく説明しますと、リスク・アセット間の相関度が低いことにより、リスク逓減(てい)効果がもたらされるというものです。簡単に言えば、皆違う動きをするから、一方が急落していても他方が上昇しているので収益の変動幅が小さくなるということです。

しかし、マーケットがグローバル化してくると、こうした効果を得にくくなり、これまでの手法が通用しなくなるのです。そうなると、従来の機関投資家(年金や保険、銀行など)に預けている資金は安定的な運用益を上げることが難しくなります。

一方、金融技術は日進月歩で進化しており、その進歩をインターネットの普及により個人投資家も享受できるようになりました。これまでプロの投資家しか扱えなかった金融商品に個人投資家もアクセスできるようになったのです。

為替におけるFX取引、インデックス革命によるインデックス取引(インデックス・ファンドやETF)、先物、オプションといったデリバティブ取引、先物やCFDによる商品への投資、海外金融機関へのアクセスなどなど、多様化したさまざまな投資手段にアクセスできるようになってきました。

さらには、金融機関の競争激化のおかげで、取引手数料が激減し、マージン取引により高い倍率のレバレッジもかけられるようになってきました。

しかし一方で、個人投資家間でも、先進金融技術を駆使して高度な取引手法を使った投資ができる人と、そうでない人の格差も大きくなってきたのです。

進化すべき方向

金融技術の進歩とその個人投資家への開放は良いことばかりではありません。あまりに多種多様な取引の選択ができるようになったので、何を取引していいかを判断するのが逆に難しくなったとも言えるのです。

また、多種多様な取引選択ができるようになり、無意味に分散投資をしてしまい、投資効率をかえって落としてしまうことも考えられます。

中には、レバレッジの利用により、過度のリスクを取ってしまい、取り返しのつかない大きな損失を被る人も増えてしまうかもしれません。

そこで、一般の個人投資家が取るべきスタンスとしては、むやみに新取引手法に飛びつくのではなく、これまでの連載で述べてきたように、基本に立ち戻って投資に取り組んでいただきたいと思います。

その上で、勧められた金融商品やファンドを買うといった「受け身的」なスタンスから、自らの投資目標ひいては人生目標を達成するために行動するといった「積極的」なスタンスへと変える必要があります。投資資金も、受け身的にスーパーアニュエーションがあるからその金額を投資する、というのではなく、目標到達のための必要資金を投資することを考えましょう。

パフォーマンス評価にしても、指数などマーケットと対比する「相対」評価から、リターンがいくらであるといった「絶対」評価へ切り替えてください。

そして最終的には、現在の金融資産をベースとした資産運用から、人生におけるトータルなキャッシュフローを考慮した「カスタムメイドのポートフォリオ運用」を行えるようになっていただきたいと思います。

世界経済やマーケット、ひいては世界の構造すら激変していく中で、投資の考え方に関してのパラダイムを変化させてください。

もはや受け身の投資で何とかなる時代は過ぎ去りました。自らが日々研鑽し、金融リテラシーを高めることだけが、あなた自身、そして家族の「豊かさ」をもたらしてくれる唯一の方法なのです。

今月の 得ネタ

来年、豪ドルは50円台へ

欧州危機は収まりがつかなくなってきました。イタリア国債の利回りは7%を超え、支援を余儀なくされる水準を超えてきました。来年2、3月には国債の大量償還も控えています。仮に、イタリア危機を収束させることができたとしても、次はフランスが控えています。ユーロの安定にはまだまだ時間がかかりそうです。

こうした欧州債務問題が世界の株式市場まで悪影響を与えています。問題が起きる度に株価が急落するということが繰り返されています。

ユーロ圏は緊縮財政を余儀なくされる中、来年には欧州景気はマイナス成長に陥る可能性が高まっています。11月10日に欧州委員会が発表した、2012年ユーロ圏17カ国の実質GDPは0.5%成長とのことですが、見通しが甘いと思います。頼みの中国も、欧州への輸出減少から悪影響を受けるでしょう。米国景気も第3四半期は+2.5%と成長を見せましたが、再び成長が鈍化、リセッションへ向かう可能性が高まっています。欧米株価もまだ高値圏にありますが、景気後退とともに下落相場へ移っていくことになるでしょう。

豪ドルは、世界景気が悪化し、投資家の態度がリスクオフになると急落する通貨です。直近では、リーマン・ショック時に54円台まで売られました。

豪ドルは1983年に変動相場制に移行して以来、対米ドルで0.9から0.5ドル台を往来しています。この20年の豪ドル円の安値を拾っていきますと、95年5月に58.76円、2000年10月の55.52円、01年9月の55.99円、08年10月の54.96円、09年2月の55.52円と50円台を付けています。

1995年は日本にとっての超・円高時で、ドル円が80円を割った時であり、2000年、01年はシドニー・オリンピック終了後の不況によるものです。

12年は世界景気がかなり落ち込むことが予想され、豪ドルも60円を割れる事態となる可能性が高まっています。その時こそ、円を持っている人は豪ドルを一気に買い込みましょう。

読者の皆さんは豪ドルを保有していると思いますが、豪州で暮らしている以上、円に替える必要はありません! それよりも今後の金利低下に備えて、今のうちに長期の預金で運用することが大事です。長くても数年で再び強い豪ドルに戻ります。


著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

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