GDPとはどのように測るのか

今さら聞けない経済学

日本や世界の経済ニュースに登場する「?」な話題やキーワードを、丁寧に分かりやすく解説。
ずっと疑問だった出来事も、誰にも聞けなかった用語の意味も、スッキリ分かれば経済学がグンと身近に。
解説・文=岡地勝二(龍谷大学名誉教授)

第63回 GDPとはどのように測るのか

はじめに――

 目下、世界経済はほぼ1年前に発生した「コロナ問題」で大変な状態に陥っています。新型コロナウイルスの感染を防止するため、世界の国々は「自国経済を封鎖」し、世界間での財とサービスの取り引き、更に人びとの交流を大幅に減少させてしまいました。

 人びとは、今の世界経済は1930年代の初めに発生した「世界大恐慌」に匹敵するほどの大きな問題だ、と唱えています。当時の経済大不況は、大量の失業者の発生による不況が一因としてありました。これを克服するために、世界の政府は財政支出を増大させることによって財の生産を増大させ、それを大幅に取り引きすることによって「雇用の増大」をもたらし大不況を克服しました。まさに「ケインズ経済」を活用した例です。

 経済の生産量を増大させるには、生産要素の賦存量が決定的に重要であり、それらが世界で取り引きされないとなると世界経済は増大するはずがありません。そこで、今回の「世界大不況」は30年代の大不況の原因と問題が異なっていることから、一層問題の解決が難しいと専門家たちは分析しています。世界は今や、第2の「ケインズの出現」を待っているようです。

 今、世界経済の不況状況を見てみるとその現実がより鮮明になると思います。IMFが発表した数字を見てみましょう。

世界経済のGDPの成長率の現状と見通し(IMF)
  2020年10月 2021年の予想
世界 -4.4% 5.2%
米国 -4.3% 3.1%
中国 1.9% 8.2%
日本 -5.3% 2.3%
ユーロ圏 -8.3% 5.2%
イタリア -10.6% 5.2%
英国 -9.8% 5.9%
インド -10.3% 8.8%
出所:IMF,朝日新聞2020年10月14日

GDPとは何かについて

さて、今回のコロナ禍について論じるのは、いささか時期早々のように思われます。そこで、今回はまず一国のGDPの大きさをどのようにして測るのか、その計算方法について考えてみましょう。

 もし皆さんが、友達に「GDPとは何か」と質問をされても、恐らくすぐに正解を言える方は少ないと思われます。以前は、GNPで一国の経済の大きさを測るのが一般的でした。しかし、今では世界共通のGDPで一国の経済を大きさを測り、GDPの大小によって一国の経済規模を議論しています。

 GDPとは、Gross Domestic Productの略で、国内総 生 産と言われています。これは、日本人であれ外国人であれ、人種に関係なく日本国内で新たにもうけだされた「もうけ」の総計です。したがって、たくさん外国の人びとが日本に来て、せっせと働き収入が上がれば日本のGDPは増大することになります。90年ごろまでは、世界では

GNP = Gross
National Product = 国民総生産

 という概念が用いられていました。これは、日本人が世界のどこで 稼いでも日本の富となる、ということです。しかし、今ではGNPはなくなり、GDPが使われています。現在は、GDP =GNP-海外からの所得の受け取りという式が考えられています。

 日本のGDPの伸び率が大きくない理由は、90年代以降、さまざまな要因で日本企業は海外へ進出し、日本国内での生産活動を中止したり、減少した結果だと思われます。そのような事態を「空洞化現象」とか「ドーナツ化」現象と呼んでいます。それらは一様に、日本経済にとって大きな問題です。

 日本の企業が海外へ進出する理由について考えてみると次のような要因が挙げられます。

1)円高の定着
2)生産人口の減少
3)技術変化への対応力
4)日本人の経済活動に対する「価値観」の変化

GDPの計算方法について

 GDPを計算するということは、その国の経済の大きさを計算するということです。てっとり早く言えば、GDPを計算するということは、その国が「金持ちが貧乏か」ということを知るための方法です。

 GDPを計算する時に大切なことは、例えば車が何台生産されたかではなく、車の生産額は幾らか、ということです。

 つまり、ある企業が生産活動する時にどれだけの量を作り出したかではなく、どれだけ利益を上げたかということです。

 世界各国との経 済の大きさを比較する時にもこのGDPの大きさで表します。それでは、GDPの大きさを測る際に大切なことを見てみましょう。

 それは「付加価値」を知る、ということです。とある企業がもうけだした生産物の生産総額から、その財を作るのに実際に用いた「原材料、燃料」などの原材料費(=中間投入額)を差し引いたものを全部合計した値がGDPということになります。生産活動には、石油といった燃料、更に労働者に支払う賃金なども計算する上で重要です。とある企業の総生産額からこれらの費用を差し引いたもの、つまりその企業が新たに作り出した値(付加価値)を全部合計した値がGDPということなのです。

 今述べたことを簡単な式で示すと次のようになります。

総生産額-中間投入=GDP

 パンを作る工程を例に考えてみましょう。パンを作るために、中間投入として小麦粉、燃料費用、人件費などを必要とします。こうしてみると、パンを実際に生産しても純粋な利益は案外少なくなってしまいます。この、実際に利益を全部合計したものがGDPということになります。もし石油などをたくさん使うようだと、どんなに生産額が増大しても外国へ支払う額も多くなり、日本で純粋にもうけた額は少なくなってしまいます。他の例で言いますと、日本人が大好きな「冷奴」などは、大豆のほとんどをアメリカから輸入していますので、豆腐の生産者の「付加価値」は、ほんのわずかなのです。


岡地勝二
関西大学経済学部卒業。在学中、ロータリークラブ奨学生としてジョージア大学に留学、ジョージア大学大学院にてM.A.修得。名古屋市立大学大学院博士課程単位終了後退学。フロリダ州立大学院博士課程卒業Ph.D.修得。京都大学経済学博士、龍谷大学経済学教授を経て現在、龍谷大学名誉教授。経済産業分析研究所主宰

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