第26回 豪州における鉱業合弁事業

第26回 豪州における鉱業合弁事業

ブレーク・ドーソン法律事務所
パートナー弁護士 イアン・ウイリアムス

豪州三井物産
リーガル・カウンセル 松浦華子

Q 当社は豪州での鉱物資源投資を検討しています。豪企業から鉱山開発プロジェクトの合弁事業への参入を提案され、現在協議中です。豪州における合弁事業ではどのような形態があるのか教えてください。また、合弁事業に参入する際の注意点は何でしょうか。

A 豪州では通常、民間企業が法定の許認可制度に基づいて、関連当局から探鉱権や採鉱権を取得し、探鉱や採鉱を行っており、特に外国企業の場合は、ほかの企業と共同で合弁事業に投資をし、鉱業権益を保持するのが最も一般的です。
 本稿では、豪州の鉱山開発における合弁事業の形態の 概要とともに、豪州特有のカルテル条項や政府協定な ど、合弁事業の参加に際し注意すべき点をご説明いたし ます。

1. 合弁事業(ジョイント・ベンチャー)

豪州における鉱業活動の多くは、複数企業による合弁事業によって行われており、探鉱、生産、設備の運営など、それぞれの段階・事業ごとに異なる取り決めが行われます。

合弁事業の参加企業は、合弁事業契約(Joint Venture Agreement)を締結し、そこで事業の範囲と運営管理、事業に充てる資産、各参加企業の権益、出資、資金の保持・支出、債務不履行時の責任、生産物の利用・売却、権益の譲渡や事業からの撤退などについて取り決めます。

豪州で一般的な合弁事業の形態としては、1参加企業が株主として合弁事業に特化した会社を設立する法人型合弁事業と、2そのような会社を設立しない非法人型合弁事業の2種類があります。それぞれ法律および税金上の効果が異なるため、参加企業の目的を考慮して慎重に検討し判断することが大切です。

2. 法人型合弁事業と非法人型合弁事業の比較

企業法務Q&A

(1)法人型合弁事業 (incorporated joint venture)

各参加企業が株主として(自己と別個の法人格を持った)合弁事業会社を設立し、事業を運営します。参加企業間で株主間契約(Shareholders Agreement)を締結し、それぞれ任命することのできる取締役の人数など株主間の権利・義務を決定します。

 

(2)非法人型合弁事業 (unincorporated joint venture)

企業法務Q&A

各参加企業は事業活動を共同で運営しますが、権 益は個別に保持します。合弁事業契約(Joint Venture Agreement)などで、相互の権利義務関係や事業の運営について規定します。通常、全参加企業に代わって日常の事業運営を行う管理会社(参加企業のうちの1社)を任命します。

 

両形態の主な特徴は下表の通りです。

法人型合弁事業 非法人格型合弁事業
法人格の有無 各参加企業が株主として設立した合弁事業会社は、自己とは別個の法人格を持つ 別個の法人格は持たない
合弁事業の運営に伴って生じた債務に対する法的責任の範囲 限定責任(合弁事業会 社の株主としての有限責任に留まる) 無限責任(通常、各自が 保持する権益の割合に応じた個別責任を負う)
所有権 各参加企業(株主)は、株式を通じて合弁事業の権益を保有する 各自の保有権益の割合に応じて合弁事業の資産を保有する
収益 • 配当として分配される
• 合弁会社の損失を株主の収入によって相殺することはできない
• 参加企業は合弁事業から生産される鉱物を権益割合に応じて受け取り、第三者に自由に売却できる
• 生産物の売却による損益は直接各参加企業に流れ、企業の総損益の一部となる。
所有権の譲渡 株式の譲渡に際し、管轄大臣への通知・同意が必要になることは稀。ただし、株主と株式構成の変更はASIC(豪州証券投資委員会)への通知が必要 • 権益の譲渡は、管轄大臣への通知・同意が必要となることが多い
• 権益の譲渡に先立ち、通常、参加企業間には先買権(pre-emptive right)が存在する
事業の統治と意思決定 合弁事業会社および取締役会は、契約上の義務に加え、(官公庁への報告義務、会計・監査要件、取締役の責務などの)会社法の規定を遵守する必要がある 事業の統治は基本的に、合弁事業契約に従う。会社法の適用はない

3. 競争消費者法

合弁事業の参加企業が互いに競合企業である場合、カルテル行為を禁止する競争消費者法(Competition and Consumer Act 2010 (Cth))に違反しないよう注意する必要があります。豪州では「カルテル条項」の合意や実行は、民事罰や刑事罰の対象になることがあります。

例えば、合弁事業契約で、産出鉱物の販売価格の決定は参加企業の合意が必要であると規定した場合、カルテル条項と認定される可能性があります。また、参加企業がその事業外での鉱物生産能力を抑制する契約も、カルテル行為とみなされる可能性があります。

カルテル行為の禁止は、合法な合弁事業が処罰されないために適用が除外されることがありますが、すべての合弁事業がその対象となるわけではありません。対策としては、ACCC(豪州競争消費者委員会)からカルテルの取り決めの事前承認を得ることで、起訴を確実に避けることもできますが、手続きは時間がかかる上に公開制なので、まずは上記の適用除外の対象となるかどうかを事前に検討するとよいでしょう。

4. 政府協定

豪州の大規模資源事業では政府と事業の参加企業が政府協定を結び、事業の実施を促進することがあります。政府協定は、通常、特定の法律によって承認・批准され、例えばロクシビー・ダウンズ法(Roxby Downs Act 1982)は、SA州政府が同州のオリンピック・ダムにおける銅、金、銀、ウランの大規模採鉱事業の開発操業を支援するために締結した政府協定を承認する法律です。

政府協定の内容は事業により異なりますが、一般的には、生産者の土地への通行許可、鉱山、鉄道、港湾関連のインフラ開発の要件の詳細、ロイヤルティーの支払いや情報開示義務などが含まれます。

なお、本稿は標題に関する一般情報に過ぎず、個別の状況には当てはまらないことがありますのでご注意ください。

※本記事に関する意見・質問は下記まで。
イアン・ウイリアムス Email: ian.williams@blakedawson.com
松浦華子 Email: Ha.Matsuura@mitsui.com

 

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