日本がハーグ条約に加盟

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Q: 先月号のこのコーナーで日本がハーグ条約への加盟を決めたことについての記事を読みました。私にもオーストラリア人との間に生まれた子どもがおり、日本で育てたいと考えているのですが、条約加盟はつまり子どもを日本に連れ帰ることができなくなるということになるのですか?

(50歳会社員=女性)

A: 条約の正式名称、「the Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)」が示す通り、同条約の主な趣旨は子どもの奪取を防ぐことです。ここで言われている奪取の対象問題は、いずれかの親が子どもを一方的に国外に連れ去ることによって定住国で子どもの養育についての取り決めをしたり執行したりすることが阻害されることです。同条約に加盟することはこうした阻害要因を取り除く効果を与えることになります。

他方の親の同意を得た上で子どもを国外に連れ出すことは奪取にはなりません。相手の同意が有効である限り、たとえ長期にわたり子どもが日本で暮らすことになってもハーグ条約が関係してくることではありません。しかし、何らかの理由で相手側の同意が有効でなくなった場合、状況次第で相手側に与えられる法的措置の1つに奪還命令(Recovery Order)があり、相手側がこの命令を取得し、対相手国がハーグ条約の加盟国である場合、相手国はこの命令に応じる必要性が出てきます。

当然、相手国が条約加盟国でない場合はこうした命令に対応する必要はありません。リロケーション・オーダーズ(子どもを定住地から異動させたい場合に取得する命令)の申し立てが行われた際、異動地が外国でしかも条約非加盟国である場合に同命令を取得するのが大変困難であるのはこのことが理由です。裁判所自体が非加盟国に子どもを連れ出すことに対して常に否定的な態度を貫きますので相手親の同意がない場合、よほどの特殊事情が認められない限りリロケーション・オーダーズを得ることは非常に困難であるわけです。

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これまで日本もそうした「困難対象国」の1つでした。そのためリロケーション・オーダーズを得るには多大な時間と費用を使うことになるのが普通でした。例えホリデーや一時的な家族行事などに連れ帰るだけであっても高額の預託金を積むことが当然であり、極めて妥当と認められました。こうした状況の下、筆者もこれまでの経験の中で、日本に連れ帰りたい親側の「弱み」に付け込んで、相手側から合意の交換条件として不利不当な条件を提示されたり、さらには支払う必要性の全くない高額の金銭の支払い要求をされたりする案件に数多く携わってきました。

筆者の考えとしては、日本がハーグ条約に加盟するということはリロケーション・オーダーズが取得しやすくなるということであり、その結果、子どもを日本で育てたいと考えていた人々が実際に行動に移しやすくなるということです。子どもを理由に相手に対する嫌がらせや不当な利益の追求が行われることが減り、子どもの利益に正真正銘の焦点が当てられたケースが増えることにつながると筆者は考え、またそうなるよう願ってもいます。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

 


 

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山本(青木)智子(やまもと ともこ)
Yamamoto Attorneys
 

NSW大学法学部・教養学部卒。International Lawyers Co-operativeのメン バーであるYamamoto Attorneysの代表として各種法務を遂行している

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