オーストラリアの飲酒運転について – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第51回:オーストラリアの飲酒運転について

毎年、クリスマスの時期になると、事務所には飲酒運転と離婚についての依頼が急に増えます。季節柄ということもあり、こういった相談が急に増える理由は想像に難くないところですが、今回は弁護士から見た飲酒運転について書いてみたいと思います。

まず、飲酒運転とは“アルコールの影響がある状態”で車両などを操作する行為を指します。ですから、事故を起こさなくても、アルコールの影響がある状態で車を運転するだけで処罰の対象となりますし、仮に酔ってしまったので「今晩は車内で寝よう」と思ってエアコンを付ける際に車のエンジンを掛けた場合も処罰の対象になります。法律上の解釈を簡単に言えば、酔ったら車のエンジンを操作してはいけないということです。

オーストラリアにお住まいの人の中にはビール1本くらいなら大丈夫と認識されている人も少なくないですが、クイーンズランド(以下、QLD)州におけるアルコールの影響がある状態とはオープン・ライセンス保有者の場合で血中アルコール濃度値(BAC)が0.05%以上の状態を指します。アルコールに強い体質の人の中には“ビール2本までなら大丈夫”と認識されている人もたまに見かけますが、BACは性別や体重だけではなく、アルコール消費時の健康状態であったり、肝臓機能の優劣など個体差で大きく変わってくるので注意が必要です。なお、オープン・ライセンス以外の人はBACが0.01%以上で飲酒運転となり、一切の飲酒は認められていません。

警察官に飲酒運転で捕まった場合、その場で24時間の免許停止が言い渡され、後日、裁判所に出廷しなければならなくなります。捕まった時のBACや過去の違反歴などにもよりますが、QLD州の場合、初犯であれば刑法上の規定は免許停止が最大12カ月、罰金は最大3,187.80ドル、懲役は9カ月以下となっています。なお、BACが0.15%以上を超えている場合、罰金や懲役刑だけで済むことはなく、免許停止期間が終わった後から最低12カ月間はAlcohol Ignition Interlocks(運転時に呼吸からアルコールが検知されるとエンジンが掛からなくなるシステム)を車に設置しなければならなくなります。当然ながら、Alcohol Ignition Interlocksの設置に際しては相応の時間と費用が掛かり、講習やメンテナンスなどに本来は必要のない時間と労力を要するものです。

飲んだら車を運転しないのが最善なのは間違いありませんが、くれぐれも取り返しの付かない事故などを起こさぬよう心掛け、良い年末年始をお過ごしください。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後15年にわたり離婚・遺言・相続・会社法・訴訟を中心に対応

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