「D&O Liability」はどのような保険で何をカバーするものなのでしょうか ?

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Q: 最近、日本本社からの辞令により当地で出資しているジョイント・ベンチャー企業の役員を兼務することになりました。そういったケースの場合、オーストラリアでは「D&O Liability」という保険を手配するのが非常に一般的だと聞きましたが、どのような保険で何をカバーするものなのでしょうか?
(46歳男性=駐在員)

A: ご質問の「D&O Liability」保険とは日本語にすると「役員賠償責任保険」となりますが、この保険は何も会社役員に限らず、会社運営において重要な何かしらの決定権を持つマネジャー・クラスも対象となり、その職務上の決定・判断や行動を理由に、もし第三者から損害賠償を求められるケースがあれば、個人をプロテクトする保険です。

同保険は最近、日本でも注目されるようになりましたが、オーストラリアでは以前より個々の権利意識が高く、会社の役員などに対してその職務上の責任を個人に問うケースが少なくないため、広く普及しています。

通常、株主から会社の業績などに関して訴訟を受けるケースも多々見受けられるのですが、日系企業の場合、株主は日本の本社であるのが一般的ですので、株主からの訴訟というケースはあまり考えられないかもしれません。しかしながら、雇用に伴う問題(昇進や解雇はもとより採用に際しても差別をされたと訴えられるようなケースが考えられます)や、(意図せずとも)法律上の義務違反をした場合など、会社役員としての責務を遂行する上でのリスクは決して小さくはありません。

また、ご質問者のように、ローカル企業とのジョイント・ベンチャーで役員を兼務するようなケースでは、例え実際的な職務が発生しないまでも、名ばかり役員としての役職に付くような場合は、特に気を付けたいものです。

カバー対象となるリスクは保険の組み方によってさまざまですが、上記のような雇用に関するケース、会社法の侵害、監査や会計における過失などで統制当局などからの訴えを受けるようなケース、競合他社から商標権の侵害などにより訴えられるようなケースなど、さまざまな場面が想定できます。

重要なポイントは、訴えを受けたのが役員個人であった場合、敗訴になった場合の賠償金、もしくは敗訴にならないまでもその訴訟費用など、会社が負担をすることが禁止されている点です。したがってそういった場合、役員個人の資産がリスクにさらされることになり、そのため今日に至っては、この保険がないために役員就任を放棄するという状況すら出てきています。

実際の保険手配に当たっては、会社の業務内容や規模、役員構成などの詳細が必要となります。詳しくは専門家のアドバイスを求められるのがよいでしょう。


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斉藤 大(さいとう だい)

エーオン・リスク・サービス・オーストラリア・ジャパン保険サービス部
世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日本人顧客の法人・個人保険アレンジ、クレーム処理などを担当。

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