コロナ・パンデミックで加速するM&Aとトランスフォーメーション

BUSINESS REVIEW

会計監査や税務だけでなくコンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスを世界で提供する4大会計事務所の1つ、EYから気になるトピックをご紹介します。

コロナ・パンデミックで加速するM&Aとトランスフォーメーション

 EYが実施したグローバルM&A戦略に関する最新の調査によると、企業のトップは、これまで以上にトランスフォーメーションを重視しており、業績回復に留まらず、ポスト・コロナの将来を見据えた計画を策定しています。今月は、EYが2,400人を超える経営陣を対象として実施した最新の調査「グローバル・キャピタル・コンフィデンス調査」の結果をご紹介します。

 今回の調査では、多くの企業のトップが現状に安堵し、先行きを楽観視していることが分かりました。これは、グローバル企業の88%で売上高が減少し、92%で利益率が悪化したとされる危機的状況を切り抜けたことを示しています。また、今回の危機の教訓として楽観的な見通しが強まったことから、ビジネスの本質的な側面に大規模かつ広範な変革を進める動きに拍車が掛かっています。コロナ渦において86%に及ぶ企業が、包括的な戦略やポートフォリオの見直しを実施しています。

 これまで多くの企業が防衛策を講じており、事業運営の迅速な方向転換や、完全リモートなデジタル環境への移行を推進しつつ、それぞれが抱える戦略・業務・運営上の課題に取り組んでいました。現在は、およそ3分の2(63%)にあたる企業がテクノロジーやデジタル分野への投資を拡大する計画を立てています。また、3分の2弱(57%)の企業が顧客エンゲージメントへの投資を強化しています。

 そしてまた、多くの企業がM&A案件によるトランスフォーメーションを模索しています。回答者のほぼ半数(49%)が今後12カ月間で買収を計画しており、その大多数(65%)が国内ではなく海外の資産買収を検討しています。これらの企業は、革新的なスタートアップ企業やテクノロジー対応の進んだ競合他社を買収し、顧客エンゲージメントの向上を図ると共に、ロックダウンに伴う不況下で大企業にとって不可欠であることが証明されたデジタル・チャネルの強化をパンデミック以降も推進することを目指しています。

 このような潮流の中、2020年下半期のM&Aは過去最高を記録しました。企業が経験則に基づいて行動していることは明らかであり、これまでとは異なる市場環境に対して先手を打って対応しています。

 経営層は最終的に、競争環境、経済環境、地政学的環境、社会環境を完全に再構築することを望んでいます。COVID-19の影響で、企業はこれまで以上にトランスフォーメーションを重視しており、業績回復に留まらず、パンデミック終息後の将来を見据えた計画を策定しています。

COVID-19パンデミックのインパクト

■貴社がCOVID-19パンデミックにより売上高(Revenue)または利益率(Profitability)が大幅に減少した場合、いつパンデミック前のレベルに戻ると予想しますか?

 COVID-19による経済的大混乱に陥った企業や業界では、開拓機会のあった市場が完全に閉ざされてしまいました。一方、デジタル・トランスフォーメーションを牽引する企業などのようにパンデミックやそれに伴うロックダウンによって商機が生まれている業界もあります。しかしながら、大多数の企業が収益の落込みや収益力の悪化に見舞われました(下記グラフ1を参照)。

グラフ1:Revenue及びProfitabilityがいつパンデミック前のレベルに戻ると予想しますか?
グラフ1:Revenue及びProfitabilityがいつパンデミック前のレベルに戻ると予想しますか?
■COVID-19パンデミックは貴社の戦略事業や投資にどのようなインパクトを及ぼしましたか?

 パンデミックにより、CEOや経営層は事業のあらゆる側面を検証することを余儀なくされています。明るいニュースとしては、収益及びオペレーション両面において経営層の投資意欲が高まっており、デジタル・トランスフォーメーション(回答者の63%が投資の拡大を計画)や顧客エンゲージメント(経営層の57%が投資の拡大を計画)が最も重視されています。

■現在の戦略上の重要な事項は何ですか?

 新型コロナ・ワクチン接種体制構築に関する明るいニュースにもかかわらず、パンデミックや経済活動に対する継続的な規制が企業のトップにとって最大のリスクであることは明らかです。一方で、経営層は景気回復局面における力強さに懸念しています。

 景気回復は、世界各国におけるワクチン接種のスピードや効果に左右されます。ワクチンの供給にはばらつきがあり、市場や業界が活気を取り戻す時期もまちまちになると見られます。企業は、景気回復の動きが出てきた際に、加速する経済活動に乗じることができるよう足場を固めておく必要があります。

 企業は、パンデミックによって引き起こされた変化が一過性のものであるか、永続的なものであるかを判断しようとしています。一方、パンデミックの経験と将来についての観測から、一つ確かなことは、テクノロジーとデジタル分野への投資が不可欠であるという点です。

 また、戦略上の重要な事項についても、明白な事実があります。それは、成長が見込まれる分野を特定して買収を実施すること、そして不採算資産の売却という難しい決断を下すことが企業にとって重要な課題であることです。世界金融危機後の景気回復期において、これらの選択は企業の成長を加速させたことは明らかです。

M&Aの今後の見通し

 20年7月以降、企業買収が加速しています。企業が経済活動の回復や業界の状況変化に備えて体制を整える中、この傾向は今後も続くとみられます。20年下半期の買収額は過去最高を記録し、上半期から下半期にかけて倍増しました。低金利、緩和基調の資本市場、豊富な民間資本などの環境が、引き続きM&Aを後押ししています。

 顧客へのサービスや商品提供の拡大を重視したM&A案件が多数発表されました。企業はより広範な商品やサービスの提供と顧客体験の改善を通じて、顧客エンゲージメントの強化を目指しているため、この点が直近のM&Aを牽引する主な要因となるものと考えられます。

 調査対象となった企業のおよそ半数(49%)が今後12カ月以内に買収を行う予定であることから、M&Aが活発化する状況は今後も続くと予想されます。

解説者

篠崎純也

篠崎純也 EYジャパン・ビジネス・サービス・ディレクター

オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。さまざまなチームと連携しサービスを提供すると共に、セミナーや広報活動なども幅広く行っている
Tel: (02)9248-5739 / Email: junya.shinozaki@au.ey.com

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