非常時におけるサプライ・チェーンのデジタル化の効果(前編)

BUSINESS REVIEW

会計監査や税務だけでなくコンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスを世界で提供する4大会計事務所の1つ、EYから気になるトピックをご紹介します。

非常時におけるサプライ・チェーンのデジタル化の効果(前編)

 優れたサプライ・チェーンを構築するには、理念、技術、コミットメントが必要です。EYとP&Gは、10年以上にわたる協力関係を通じて、400以上のスマート・ファクトリーを構築し、150億米ドルの節約を実現してきました。今月はサプライ・チェーンにおけるデジタル化の効果を、来月はその実例をご紹介します。

 新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらした危機により、コストとスピードを重視して設計されたサプライ・チェーンの脆弱性が浮き彫りになりました。このようなサプライ・チェーン・モデルは、需給の変動を察知し、目まぐるしい変化に気付き、いち早く対処するだけの柔軟性を備えていないため、意思決定者は即座に行動を起こせず、日々変わりゆく状況に対応することができませんでした。

 レジリエンスの高いデジタル化されたサプライ・チェーンの構築には、経済面と社会面の両面でメリットがあります。サプライヤーの状況や商品の流れをリアルタイムで監視することができれば、企業は今よりも更にコストを適切に管理し、リスクを低減すると共に、効果的な方法で処理能力を最大化することや持続可能性の目標を達成することもできるのです。

 また、医薬品、個人用保護具(PPE)、清掃用品などのパンデミック関連の生産に携わる企業は、社会全体に広くメリットをもたらすことが可能です。COVID-19の救援物資を求める消費者の声が強まる中、需要の急増に素早く対応できた企業は、市場シェアの面で大きな成果を上げています。そのような企業は、デジタル・ツイン、モノのインターネット(IoT)、コントロール・タワー機能などの技術を駆使することで、需給に関する情報をリアルタイムで収集し、その結果、発見事項を日々の予測や対応に反映させることができます。

サプライ・チェーンにおけるデジタル化の効果

 EYが2019年に全米500人の経営幹部を対象に実施したサプライ・チェーンに関する調査によると、優れたサプライ・チェーンを構築するために最も重要な要素として挙げられたのは、サプライ・チェーン全体の可視性でした。サプライ・チェーン全体を可視化するには、需給を検知または予測する機能、サプライヤーや顧客と連携するためのプロセス、リアルタイムに近い形でサプライヤー・リスクを評価・測定する機能などが有効です。

 そのようなデジタル機能を構築する際は、サプライ・チェーンのデータが正確で、タイムリーかつ確実であることが必須条件となります。デジタル・ツイン、コントロール・タワー技術、IoTや現場に導入する技術などへの投資は、デジタル・サプライ・チェーンの実現にとって極めて重要です。

 デジタル・ツインとは、現実世界のサプライ・チェーンを仮想化したものです。デジタル・ツインを利用することにより、サプライ・チェーンを管理するリーダーは、さまざまな変数や想定される業務状況に基づき、仮設シナリオをシュミレーションすることができます。また、サプライ・チェーンを最適化するための意思決定をリアルタイムで行うことが可能になります。緊急事態が発生した場合は、効果的な事業継続計画としても用いることができます。

 コントロール・タワー機能は、人工知能と機械学習を活用して、サプライ・チェーンの寸断を予測し、サプライ・チェーンにおいてリアルタイムで発生している問題への対応を可能にします。企業は、必要に応じてリソースを投入することや、サプライヤーに対して別の製品へ生産をシフトするよう促したり、サプライヤーの財務リスクを監視したり、不測の事態に備えた計画や予測を分刻みで見直したりすることが可能です。

 IoTは、サプライ・チェーン全体に導入されているデバイスやセンサー網を活用し、事象の監視や追跡を行います。これらのセンサーは、工場の生産ラインに設置された計測器、ウェアラブルな医療機器や位置情報モニター、更には生鮮品を含む商品を追跡するための流通・物流システムにも搭載されています。サプライ・チェーン全体に導入されている何十万ものセンサーから受信するデータを利用可能にするには、事象収集、データ統合、データ分析の技術が不可欠です。

 製造業の場合、サプライ・チェーンの要となるのは現場です。現場で問題が発生した場合、その影響は広範囲に及びます。デジタル化により強固になったサプライ・チェーンがもたらす直接的なメリットとして、最先端の手法や「現場の知恵」を効果的に取り入れ、活用できる点が挙げられます。これにより、COVID-19下で経営陣が不在となるような非常事態においても、レジリエンスを高めることができます。デジタル化された現場では、今よりも更に、現場オペレーターが自発的に行動でき、管理監督者と物理的に距離を取って業務を行うことが容易になります。必要に応じて、リモートでコーチングを受けることも可能です。

 現場以外では、サプライ・チェーンのデジタル変革は、組織の縦割りを解消し、不必要な冗長性やその他の非効率性を軽減するというメリットをもたらします。サプライ・チェーンをデジタル化することで、財務、営業、不動産など、他の業務部門と円滑に連携を取ることも可能になります。その結果、企業はコストや不必要な設備投資を抑えることが容易になります。

 最後に、最も効率的でレジリエンスの高いサプライ・チェーンとは、サプライヤー、流通業者、小売業者などを含むあらゆるパートナーがネットワーク化されたエコシステムであると言えます。長期的に、サプライ・チェーンのデジタル化は、今時のような非常事態や変化の多い時代においても力を発揮します。

 来月は、サプライ・チェーンにおけるデジタル化の効果の実例をご紹介します。

解説者

須藤卓馬

EYシドニー コンサルティング・チームシニア・マネジャー 須藤卓馬

サプライ・チェーンと金融サービスの両分野で最新の業務・テクノロジーの知見を基に、業務改革及び能力開発に従事している。Institutional Asset Management Awards 2021 – Best Insurance Consultancy Firm受賞(Web: https://insuranceasianews.com/awards/institutional-asset-management-awards-2021
Tel: 02 9248 4062 / Email: takuma.suto@au.ey.com

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