豪州の個人所得税について

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング ジャパン・ビジネス・サービス
雇用関連税務部門シニア・コンサルタント 
浅井和弘

著者プロフィル◎NSW州弁護士資格有。2008年新日本税理士法人入所。10年EYシドニー事務所入所。法人税務の豊富な業務経験を経て12年11月から雇用関連税務および個人所得税務を担当。
オーストラリアにおける
駐在員の個人所得税申告について

オーストラリアで就業する個人は特定の法律によりオーストラリア税制の対象外となる場合を除き、日本人駐在員を含め、就業期間の長短にかかわらず、個人所得税申告を行うことが義務付けられています。今月号では、駐在員の個人所得税申告について、概要を説明します。

オーストラリアの個人所得税制

オーストラリアの課税年度末は6月30日で、個人所得税申告の申告期限は10月31日です。ただし、正規のタックス・エージェントを利用する個人については、通常申告期限が延長されます。個人所得税申告を担当する税務当局は、オーストラリア国税庁(Australian Taxation Office、ATO)で、各個人がATOに対して自己申告をします。個人所得税申告を行うためには、各自オーストラリア納税者番号(タックス・ファイル・ナンバー、TFN)を取得する必要があります。納税者番号の申請は、ビザが発給され次第行うことができます。

オーストラリアで課税対象となる所得

オーストラリアの税務上課税対象となる所得の種類は、個人の税務上の居住者区分によって異なります。税務上居住者である個人の場合は、全世界における所得が課税対象となりますが、非居住者の場合は原則オーストラリアを源泉とする所得のみが課税対象となります(ただし、日豪租税条約により特定の条件を満たす場合、オーストラリアを源泉とする所得は免除される)。

オーストラリアにおいて、日系企業の駐在員などサブクラス457などの一時居住者ビザ(temporary resident visa)で就業している日本人の場合、(そのほかのすべての条件を満たしていることを前提に)、オーストラリアの税務上一時居住者とみなされます。

一時居住者は通常、給与所得およびオーストラリアを源泉とする投資所得が課税対象となります。外国を源泉とする所得については、外国源泉の雇用所得の場合を除き、オーストラリアの税務上課税対象外となります。

 

<給与所得>

大方の一時居住者については、オーストラリアの税務上課税対象となる所得には、オーストラリアにおける就業に関連して支給される給与、手当、ボーナスなどが含まれます。所得の源泉地は給与などの支払が行われる場所にかかわらず、就業義務が履行される場所によって決定されます。例えば、オーストラリアで就業する駐在員の給与とボーナスを海外の親会社が支払った場合、通常その給与とボーナスはオーストラリア源泉の所得とみなされ、オーストラリアでの課税対象となります。

上記と同様に、前年度のオーストラリアにおける就業に対して支払われるボーナスは、オーストラリアの就業期間に対応する部分が源泉の所得とみなされ、オーストラリアでの課税対象となります。

個人が報酬の一部として会社の株式を受け取ることは、より一般的になりつつあります。オーストラリアの税制上、個人が従業員株式所有制度上報酬の一部として受け取る株式は、給与所得とみなされるため、当該株式に関連する金額は、一定の条件を満たした時期に個人所得税申告に含める必要があります。例えば、従業員の株式に対する権利行使の制約がすべて解除された時点で、オーストラリアの課税関係が発生します。

税務上、雇用主は従業員の給与、手当、ボーナス(外国の親会社などから支払われるものも対象となる)より税額相当分を源泉徴収し、予定納税としてATOに納付する必要がありますが、年度末には、課税年度の総所得および支払予定納税額を源泉徴収票(PAYG Withholding Payment Summary)上で開示し、当該課税年度終了後の7月14日までに従業員に源泉徴収票を渡す必要があります。報告義務のあるフリンジ・ベネフィットの額についても、源泉徴収票に記載されます。また株式関連の所得については、雇用主が課税対象額等を記載した年次報告書(Employer Share Scheme statement、ESS報告書)を作成して従業員に報告する義務があります。

 

<投資所得>

一時居住者の場合には、オーストラリアを源泉とする投資所得のみが同国における課税対象となります。例えば、オーストラリアの銀行口座から得られる利子がそれに当たります。日本にある銀行口座から得られる利子や日本株式の配当のような海外の投資所得は、オーストラリアの課税対象にはなりません。

一方、一時居住者のキャピタル・ゲインについては、オーストラリアの不動産のような「課税対象オーストラリア資産(Taxable Australian Property、TAP)」からキャピタル・ゲインが得られる場合を除き、一般的にオーストラリアにおける課税対象とはなりません。

 

<控除>

経費が、その性質上、資本またはプライベート目的のものではなく、かつ、所得の獲得に必要な場合には、当該経費を個人で控除することができます。例えば、就業関連の費用で雇用主から払い戻しを受けていないものは、原則として控除対象となります(ただし接待費は控除不可)。控除経費が合計300豪ドルを超える場合には、その控除額を証明するための書類が必要です。登録されているオーストラリアの慈善団体への寄付や、個人の税務申告に関連して発生する経費は控除対象となります。

主要な留意点

<メディケア・レビー(健康保険税)>

原則として居住者である納税者は、メディケア・レビー(健康保険税)の支払い義務があります(14年7月1日から2%に上昇。枠内参照)。メディケア・レビーは、個人の課税対象所得に応じて課税されます。通常、日本人駐在員など、一時居住者ビザによってオーストラリアで就業している場合には、メディケア・サービスの受給資格がありませんので、メディケア・レビーの課税免除の申請を行うことができます。メディケア・レビーの課税免除の対象となる個人は、メディケア・レビー課税免除証明書を取得するための申請書を毎年提出する必要があります。

 

<退職年金(スーパーアニュエーション)>

オーストラリアには、雇用主が従業員のために、適格のスーパーアニュエーション基金に対し、給与の一定割合以上の退職年金額を拠出する義務を持つ強制退職年金加入制度があります。

ただし、日豪社会保障協定においては、各企業がオーストラリアで就業する日本人駐在員のために、オーストラリアの退職年金制度ではなく、日本政府発行の適用証明書(Certificate of coverage)に基づいて、一定期間、個人の日本の年金基金に対し拠出を継続できることもあります。

最後に

14年5月に発表されたオーストラリア連邦予算案によると、今後以下のような変更が行われる見通しです。

・14年7月1日付でメディケア・レビーを1.5%から2%に引き上げる。
・オーストラリア退職年金基金制度の拠出率を14年7月1日~18年6月30日の期間9.5%とする。

以上に加えて、今回の予算案では、課税所得が18万豪ドルを超える高額所得者について、14年7月1日開始課税年度から2%の特別税が課されることも発表されています。

オーストラリアで就業する日本人で、個人または雇用主がメディケアや退職年金制度の免除対象となる場合の多くは、上記の変更の影響はないと思われますが、免除の適格性を確認するためにも適切な申請および書類作成を行い、専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

コンタクト:

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(02)9248-5986
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