戦略的なダイベストメントが企業価値を高める

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

EY トランザクション・アドバイザリー・サービス
日系企業担当
鈴木大介

著者プロフィル◎コンサルティング会社、欧州系投資銀行で合計17年勤務した後、豪州に移住。現在は、EYのトランザクション・アドバイザリー・グループで日系企業の豪州投資や事業展開で少しでもお役に立てるように日々努力している。
企業のダイベストメント(事業売却)に関する意識調査
−戦略的なダイベストメントが企業価値を高める

EYでは、昨年末世界各国の幅広い業種(消費財、ライフサイエンス、石油・ガス、電力・公益事業、テクノロジー)の企業の経営幹部に対して、自社のポートフォリオ・レビューとダイベストメント活動に関する720件のヒアリングを実施しました。今月号では、その概要についてご紹介いたします。

多くのビジネスにとって、今やダイベストメントは企業戦略の基本となっています。大手企業は買収と同じ緻密さで資産の売却に取り組んでいます。従来、ダイベストメントは資金調達や債務を返済するための短期的な戦術的ツールと見なされていました。しかしながら、最近では、戦略的な売却が生み出す長期的な価値と成長効果に対する認識が広まっています。

資産の売却によって、売上の伸びは短期的に落ち込みますが、中核となる事業活動に資本を再配分して再投資し、新たな市場を拡大し、新製品を開発することで、長期的な成長を実現し、より高い価値が得られます。戦略的なダイベストメントは、資金を調達して企業のコア事業に配分するための鍵となります。

今回の「企業のダイベストメントに関する意識調査」では、回答企業の半数以上が過去2年間に大規模なダイベストメントを実施したと答えています。しかし、戦略的なポートフォリオ・レビューによって前回のダイベストメントを実施したと答えた経営幹部は全体の41%に過ぎません。一方で、ポートフォリオ・レビューに基づいて戦略的なダイベストメントを判断したと回答した企業の80%は、前回のダイベストメント後に残りの事業の評価倍率が上昇したと答えています。また、同様に85%の回答者が、コア・オペレーションの定義を更新した結果、前回のダイベストメント後に残りの事業の評価倍率が上昇したと答えています。

ポートフォリオ・レビューの定義
 ポートフォリオ・レビューでは、組織のセグメント、事業部、製品ライン、資産、R&D、または組織全体に関連する同様の資産の運営実績を評価し、資産を所有するべきかどうかを判断します。こうした項目を年2回レビューすることにより、企業は急速に変化する市場ニーズに対応できるようになり、成長が促進されるという結果が調査により示されています。

ポートフォリオ・レビューが意思決定の指針に

定期的に徹底したポートフォリオ・レビューを行うことで、株主が評価する、目的を絞り込んだ明確に定義された事業を生み出すことができます。

企業はポートフォリオ・レビューを実施する主な目的として、新たな成長機会の特定(48%)、事業部の実績評価(34%)、投資とリソースの配分(32%)を挙げています。コア事業と戦略的に一致しなくなった事業部をダイベストメントすることにより、資本が開放され、成長が期待できる別の分野に割り当て直すことができます。

オランダの大手エネルギー会社「Royal Dutch Shell」は、厳格なポートフォリオ分析と戦略的なダイベストメントによって大きな成果を上げた企業の1つです。前CEOのピーター・ヴォーザー氏が「一体化」された「綿密な」ポートフォリオ管理と称したプロセスにより、2010年以降210億米ドルの資産をダイベストメントしました。

戦略的な目標を達成するために、経営幹部は現在のコア・コンピタンスと主な差別化要因を把握するとともに、企業を将来的にどのように位置付けるべきかを明らかにする必要があります。さらに、経営幹部のチームは、価格設定、業界規模の変化、顧客やその他の利害関係者の視点など、事業部に関する情報を頻繁に分析するためのプロセスを導入する必要があります。

企業は、変化の必要性の兆しを認めても、資本配分を最適化できない場合が多くあります。調査の対象となった経営幹部の大多数は、ポートフォリオ・レビューの結果に基づいて適切な行動を取っていないと答えており、53%の回答者が、結果に基づいて変化を実践できればポートフォリオ・レビューの効果がはるかに向上すると答えています。

何もしないことはもはや選択肢ではない

多くの企業は、ポートフォリオ管理とダイベストメントに対してより積極的に取り組む必要があります。ポートフォリオをより頻繁にレビューし、より緻密なデータを使用してポートフォリオ管理の判断を下し、レビューの結果に基づいて行動を取る必要があります。

企業は、投資が期待される価値をもたらしているか、そうでなければ資本を別の分野に割り当てるべきかを検討する必要があります。多くの企業は、急成長セグメントに再び事業の焦点を当てており、長期的な戦略的価値をもたらす分野や地域に基盤を構築しています。

幸運は勇者に味方する

行動の必要性にかかわらず、多くの企業は引き続き売却に対して慎重です。回答企業の3分の1は今後2年以内にダイベストメントの実施を予定していますが、残りの企業は目標が明確なのにもかかわらず、ダイベストメントに対して障害があると答えています。

認識されている障害として、シナジーとスケールメリットの損失(45%)、業務分割の難しさ(39%)、買い手と売り手のバリュエーション・ギャップ(31%)を挙げています。しかし、効果的なポートフォリオ管理とダイベストメント計画を実践することで、ダイベストメントからもたらされるいかなる課題をも上回るメリットが実現できます。

例えば、すべての事業機能のロードマップを作成し、回収不能コスト、1回限りの分離コスト、計画推進コスト構造、ビジネスの継続性、タックス・ストラクチャー、移行期間中に係る合意(Transition service agreements)、クロージング調整メカニズムを徹底的に解決することで、企業はオペレーション問題を克服できます。

自社の事業と買い手候補の事業の適合方法に合わせて成長ストーリーを作成することでバリュエーション・ギャップを縮小することができます。アーンアウト方式は、売り手が売却後に売却事業の業績に基づいて対価を受け取ることも可能にします。厳格なポートフォリオ管理とダイベストメント計画がダイベストメントにもたらすプラスの影響を考慮した場合、ポートフォリオの最適化、売却対象事業および非売却事業の価値向上のために企業が実施できることは自明です。

まとめ

革新が急速に進み、購買パターンが変化し、世界経済の成長が低迷する中、事業の戦略的な中核を定期的に見直すことが価値を実現するために必要不可欠となっています。ダイベストメントの効果は、戦略的な価値を求める取締役会や株主にとってますます重要になっています。

大手企業は、ポートフォリオ・レビューを一貫した手順で実践することで、ビジネスの戦略的な優先順位と一致させながら確実にダイベストメントを進めています。ここ5年間はM&A活動が落ち込んでいましたが、現在、グローバルにおけるディール市場は徐々に回復の兆候を見せています。約80%の経営幹部は最も評価が高い資産に対するオファーを受け入れる意思があり、30%のプレミアムが付けば多くの場合は売却合意となります。

こうした環境では、資産を求める競争が激しくなる一方、売却候補の中での競争も激化する可能性があります。変化するこの取引経済において、最大限の価値を引き出し、長期的な成長という経営課題をサポートするために、ダイベストメントが効率的、効果的、かつ戦略的に実施されるよう、利害関係者による監視の目は一層高まることとが予想されます。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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