日豪社会保障協定

税務会計最前線
KPMG会計事務所
マネジャー 北村美幸


日豪社会保障協定


 2008年12月3日、「社会保障に関する日本国とオーストラリアとの間の協定」(日豪社会保障協定)の効力発生のための外交上の公文の交換がキャンベラで行われた。これにより、日豪社会保障協定は2009月1月1日に発効する。この協定の締結により、現行の社会保障制度の問題点となっている二重加入問題および年金受給資格問題の解決が図られ、経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化されることが期待されている。


はじめに


 オーストラリアの年金制度には、退職年金保障制度(Superannuation Guarantee System=以下、退職年金)と社会保障制度(Age Pension=以下、老齢年金)がある。
 特定の一時滞在ビザを持つ外国人エグゼクティブを除いて、一時派遣されている駐在員らは退職年金に加入しなければならない。このため、日本の年金制度にも加入が義務付けられるそれらの駐在員らは、日豪両国の年金制度に加入することとなる(二重加入問題)。
 老齢年金は、オーストラリア市民権または永住権保持者に支給されるが、少なくとも連続した5年間を含む10年以上のオーストラリアでの居住期間が必要である。また、日本の年金制度も支給要件の1つとして一定以上の被保険者期間などがあることを定めている。その結果、加入期間が短いために年金を受給することができない場合がある(年金受給資格問題)。


協定の概要


税務会計最前線
二重加入問題の防止
 この協定は原則として就労地国の年金制度のみに加入することを義務付けている。しかし、企業などから一時的に派遣されている駐在員らについて、派遣期間が5年以内の場合は派遣元国の年金制度に加入することになる。当初から5年を超えると見込まれている派遣の場合であっても、派遣開始から5年までは派遣元国の年金制度に加入し、就労地国の年金制度の加入は免除される。
 5年を超えて派遣期間が延長される場合については、特別な事情(後任者が死亡、重病または辞職のために引き継ぎを行うことができない 、短期間の延長など)があり、日豪両国で個別に判断のうえ合意した場合に、派遣元国の年金制度を引き続き適用することができる(期間は定められていない)。延長が認められなかった場合、5年を超えると就労地国の制度に加入することになる。
年金受給資格問題の防止
 オーストラリアの居住期間が前述の要件を満たしていない場合は、重複しない日本の年金加入期間を通算してオーストラリアの老齢年金の受給資格を得ることができる。また、日本の被保険者期間だけでは受給資格の要件を満たさない場合は、オーストラリア国内での居住期間のうち、被用者または自営業者として就労していた期間を、重複しない限りにおいて日本の年金加入期間に算入することができる。


オーストラリアでの就労に関する手続き



【厚生年金保険の被保険者のための手続き】→図1
【国民年金の被保険者のための手続き】 →図2
税務会計最前線


オーストラリアの年金を日本で受給する場合



 老齢年金を日本で受給するには、オーストラリアの年金申請書と必要書類を日本の社会保険事務所に提出する。老齢年金の支給額は、所得および資産をベースの決定される。日豪社会保障協定の規定に基づき、日本の年金額は所得および資産調査時に一部分のみを評価されることとなる。
 日本に居住している人がオーストラリアの年金を受給する場合、年金に対する所得税は日本では課税対象となり、オーストラリアでは非課税となる。
 退職年金を引き出すには、加入していたオーストラリア国内の機関(スーパーファンド)に申請書と必要書類を提出する。引き出しの際に通常30%の源泉税が控除される(2008年12月4日に上院を通過した改正案が承認されると35%に増加する)。


日本の年金をオーストラリアで受給する場合


 日本の年金をオーストラリアで受給するには、オーストラリアのセンターリンクに申請書と必要書類を提出する。
 オーストラリアに居住している人が日本の年金を受給する場合、年金に対する所得税はオーストラリアでは課税対象となり、日本では非課税となる。この取り扱いを受けるためには、「租税条約に関する届出書(様式9)」を二部作成し提出する必要がある。届出書は日本の国税庁ホームページ(www.nta.go.jp)から取得できる。
記事についての質問などは下記各事務所に連絡する。
■シドニー
八郷 泉 Tel: (02)9335-8913
ティペット 仁美 Tel: (02)9335-8606
山田 友美 Tel: (02)9335-7755
■メルボルン
森部 裕次 Tel: (03)9288-5742
北村 美幸  Tel: (03)9288-5410
■ブリスベン
池広 政久  Tel: (07)3233-3221

新着記事

新着記事をもっと見る

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る