研究開発インセンティブ

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KPMG会計事務所
シニア・マネジャー ティペット仁美


研究開発インセンティブ


 2009年の連邦予算案で政府は、今後10年のオーストラリアの技術革新政策について「パワーリング・アイデア:21世紀の技術革新における検討課題」を発表した。この取組みに対して、今後4年間にわたり、31億ドルの財政的支援を行うことが提案されている。政府は、税務上の研究開発優遇措置の大幅な見直しや、実効性のある直接援助プログラムを通じて技術革新を支援することを表明している。


税務上のインセンティブ
 2009年の連邦予算案では、14億ドルに上る新研究開発税額控除(R&D tax credit)について発表された。これは、08年9月に発表された「オーストラリア国家技術革新システム・レビュー」の提言を基本的に受け入れたものであり、現行の研究開発費の税務優遇措置の抜本的改革を意味する。
● 現在の研究開発費税務優遇措置は、基本的に損金算入金額の割増(25%または75%)を認める制度であるが、新制度はこれに代わって研究開発費の支出に対応する一定割合金額を直接税額から控除する制度である。研究開発費税額控除割合は2種類設けられる。
―売上高が2,000万ドル未満のオーストラリアの会社に対して45%の税額控除。この税額控除は税務上欠損金が生じている会社については還付可能。
―売上高が2,000万ドルを超えるオーストラリアの会社に対して40%の税額控除。この税額控除は還付されることはない。この範囲には、外国関連会社のために研究開発を行っているオーストラリアの子会社も含まれる。
● 175%プレミアム税務優遇措置および175%国際プレミアム税務優遇措置を含む現行の税務優遇措置の撤廃(125%の控除)
● 2010年7月1日以降に開始する税務年度から変更予定。
● 移行措置として、現在、割増損金算入金額の代わりに小会社に認められている、研究開発費税額控除還付(R&D tax offset)対象金額の上限を2009/10年度において100万ドルから、200万ドルに引き上げる。
ビジネスへのインパクト
 新研究開発費税額控除の導入は規模の大小を問わずビジネスに好影響を与えると思われる。新優遇措置は簡素で、世界的視点からも魅力あるものとなっている。
 大規模会社の場合は40%の税額控除を受けることができるため、10%の節税となる。例えば、通常10万ドル損金が増えると税額は3万ドル(税率30%)減少するが、10万ドルの研究開発費を支出した場合、支出額に対して10%多い4万ドルの税金減少効果が生じる。
 今回の重要な変更点は、法人税率から研究開発費インセンティブを切り離した結果、法人税率の変更によって、受け取るベネフィットの金額が左右されなくなったことである。
 大規模会社においては、税務上欠損金を生じている場合でも研究開発費税額控除は還付されないが、ベネフィットは現在の制度を1/3上回る。小規模会社の場合は45%の研究開発費税額控除が認められるため、15%の節税になる。これは、現行の2倍のベネフィットである。さらに税務上欠損金を生じている場合は税額控除分が還付される。
 さらに重要なのは、知的財産権が関連外国会社によって保有されている場合でも、多国籍企業のオーストラリア子会社に研究開発費税額控除を認めることである。
導入のスケジュール
 表1、表2に研究開発費優遇措置の推移を簡略化して、導入のスケジュール(予定)を示す。12月31日を代替税務年度終了日としている会社は、2011年12月31日が新方式適用初年度終了日となる公算が強い。

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研究開発費税務プランニング
●研究開発費の予算を組むにあたって、導入予定の新研究開発費税額控除の恩恵を受ける会社は研究開発費の支出を2010/11年度まで遅らせた方がいいかを考慮する必要がある。反対に現在175%プレミアム税務優遇措置の対象となっている場合は、研究開発費の支出を前倒しにすることを考える必要がある。
●2010年7月から導入予定の還付可能な45%研究開発費税額控除を認められる会社は、既存の研究開発費税額控除制度よりはるかに多くなる。移行措置として、2009/10年度には、還付の対象となる研究開発費の上限が100万ドルから200万ドルに引き上げられる。
●税務上欠損金があっても大会社の場合は研究開発費税額控除は還付されないが、繰越して将来の税額を減少できる。
●研究開発費税額控除がフランキングクレジットにどのような影響を与えるかは今後決定される。
基準の厳格な適用
●純粋な研究開発活動のみが税務上の優遇措置を受けることができるように、意見聴取を行いながら、適用基準を厳格化する。政府は、研究開発活動の範囲を決定するためのフレームワークとして2009年中に協議書を発表する予定である。
●研究開発プラン・ガイドラインの改定案も意見聴取の対象になっている。将来研究開発プランもより厳しくモニターされることになると予想され、ガイドラインは会社が必要な書類を取りまとめる上で適切な指針を提供することになる。
技術革新に向けてのその他政府支援
 昨年の予算案で政府が廃止した商業準備助成金プログラム(Commercial Ready Program)を直接代替するものはないが、政府は引き続き特定の助成金プログラムやビジネスと大学間の共同研究を通じて技術革新を支援する姿勢を表明している。
 これらのプログラムには以下が含まれる。
● すばらしいアイデアを商品やサービスに換える援助をするために新コモンウェルス商業化機関(Commonwelath Commercialisation Institute)に1億9,610万ドル。
● 2009/10年度から2015/16年度にかけて4億100万ドルを繊維、衣服、履物業界へ。
● ベンチャー・キャピタルを増加させるために、革新投資フォローオン基金(Innovation Investment Follow-on fund)へ8,300万ドル。
● 新産業を興し、個人、家族、コミュニティーの福祉増進のために必要とされるアイデアや技術をオーストラリアの大学が発展させることを目的とした支援のために7億310万ドル。
● クリーン・エネルギー対策に45億ドル。これには、炭素捕捉貯蔵プロジェクトのような低排出石炭技術、太陽光発電容量増加技術、再生可能エネルギー技術の推進、リサーチ・インフラストラクチャーの向上が含まれる。
● 宇宙科学、海洋気象科学、生物工学やナノテクノロジーのような未来科学の研究をオーストラリアのトップ研究者が進めていくために必要な最新の研究設備に9億100万ドルの投資。
● 教育投資基金(Education Investment Fund)を通じて、研究設備に対する3億2,170万ドルを含む、大学や研究機関への新助成金として8億200万ドル。これは、2008年始めよりラッド政権が15億8,000万ドルを投じてきている大学インフラストラクチャー投資を補完する。
● オーストラリア研究評議会(Australian Research Council)へ9,280万ドル。これは、世界に通用する情報通信技術の研究および商業化活動を継続するために国立情報通信技術オーストラリア(National ICT Australia)に対して政府がコミットした2011/12年度から2014/15年度にかけての合計1億8,550万ドルの政府支援をサポートするためである。
記事についての質問などは下記各事務所に連絡する。
■シドニー 八郷 泉 Tel: (02)9335-8913
ティペット 仁美 Tel: (02)9335-8606
山田 友美 Tel: (02)9335-7755
■メルボルン 森部 裕次 Tel: (03)9288-5742
北村 美幸  Tel: (03)9288-5257
■ブリスベン 池広 政久  Tel: (07)3233-3221

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