企業結合会計基準および連結会計基準の改訂

税務会計最前線

KPMG会計事務所 シニア・マネジャー 森部 裕次

企業結合会計基準および連結会計基準の改訂

 国際財務報告基準(IFRS)第3号「企業結合」および国際会計基準(IAS)第27号「連結財務諸表および個別財務諸表」が改訂され、2009年7月1日以降の会計年度の企業結合に対して強制適用される。本稿では、基準の主な改訂点と企業に与える影響について説明する。

改定基準の概要
 改定基準では、連結財務諸表作成における考え方として経済的単一説をとることを明確にし、経済的単一説の考え方に沿った会計処理を要求している。経済的単一説とは、企業集団全体の視点から連結財務諸表を作成する考え方のことをいい、親会社の株主の視点から連結財務諸表を作成する考え方である親会社説と相対する考え方である。従来の企業結合会計基準および連結会計基準は親会社説に基づき基準が策定されていたが、今回の基準の改訂により経済的単一説にシフトされた。経済的単一説に基づく今回の基準の改訂の主なポイントは、以下の通りである。
・ 100%未満の取得におけるのれんの認識。経済的単一説に基づき、非支配持分(かつての少数株主持分)に対応するのれんの計上が可能になった。
・ 段階取得の会計処理の変更。経済的単一説に基づき、既存の投資額の評価替えが必要となった。
・ 支配獲得後の持分の変動に関する会計処理。経済的単一説に基づき、支配獲得後の親会社の持分変動は、支配の喪失を伴わない限り資本取引として処理されることになった。
・ 取得関連費用の会計処理。従来取得価額に含めていた取得に直接起因する費用についても、期間費用として処理されることになった。
 以下、それぞれのポイントについて詳説する。

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100%未満の取得におけるのれんの認識
 企業結合によっては、被取得企業を100%取得しないケースも考えられる。このようなケースにおいて、改訂基準によりのれんの計上方法に新たな選択肢が設けられた。例えば、ある会社の80%の株式を取得した場合、従来は、取得企業の持分である80%部分についてのみ、のれんを認識していたが(部分のれん)、改訂基準では、経済的単一説に基づき、非支配持分である20%部分についてものれんを認識できるようになった(全部のれん)。以下は、のれんの認識に関する具体例である。
段階取得の会計処理の変更
 支配の獲得を一度に行わず段階的に実施した場合、従来は個々の取引の取得原価を合算した金額を取得原価としていたが、改訂基準では、支配獲得時に従前から保有していた持分を公正価値で再評価し、取得原価とすることを要求している。例えば、ある会社を当初15%取得し、その後追加取得で40%を取得し支配を獲得した場合、支配獲得時に当初持分と追加取得分を合わせた55%部分が公正価値で評価されることになる。そのため、当初から保有していた15%部分についても、その時の帳簿価額に代えて支配獲得時の公正価値で再評価され、差額は当期の損益として計上されることになる。既存の投資について評価替えが必要となるのは、経済的単一説では、支配獲得を目的としない投資と支配獲得を目的とする投資は性質が異なるため、支配権獲得時に従前の投資の含み損益はいったん実現されて新たに投資すると解釈されるからである。
 今後投資先を子会社化する際は、子会社となった時点で従来保有していた当該会社の株式が公正価値で評価替えされ、評価損益が損益計算書に計上されることになるため、計画時に留意が必要である。
支配獲得後の持分の変動に関する会計処理
1. 支配の変更を伴わない取得および処分
 支配獲得後に、親会社が子会社の持分の一部を売却したり、希薄化により持分が下がった場合、従来は企業の会計方針により資本取引または損益取引のどちらとしても取り扱うことができた。改訂基準の下では、支配を喪失しない取引については資本取引として取り扱うことを要求しており、当該取引からは損益は認識せず、のれんの再測定もしない。経済的単一説では、支配の変更を伴わない取得または処分は、所有者が他の所有者との間で行う取引であり、それらの取引により損益は発生しないと解釈されているからである。
 今後は、子会社を子会社のままとした株式の売却による利益計上はできなくなる。利益計上を意図する場合は、後述する支配の喪失が必要となるため、計画時に留意が必要である。
2. 支配の喪失
 一方、持分の一部売却により支配を喪失した場合には、親会社は子会社の資産、負債および非支配持分について、連結財務諸表上の帳簿価額で認識が中止され、また同時に、当該子会社への残余持分を支配喪失時の公正価値で認識する。したがって、親会社で計上される損益は、①親会社の売却分に対応する売却損益および②残余持分の公正価値評価による評価損益から構成される。従来は、①親会社の売却分に対応する売却損益のみが支配喪失時の損益として認識されていたが、今後は、②残余持分の公正価値評価による評価損益も合わせて認識されることになるため、子会社の一部売却の際は留意が必要である。
 以上の子会社持分の取得または売却による損益への影響をまとめると、下表のようになる。
取得関連費用の会計処理
 企業結合に直接起因する費用(例えば、買収先を見つけるための報酬や買収時におけるデュー・デリジェンス費用など)は、従来、取得原価の一部として取扱い、結果としてのれんに計上されていた。改定基準では、取得側がいくら支払ったかではなく、売却側がいくら受け取ったかという事実を重視し、取得に関連する費用は取得原価を構成せず、すべて期間費用として処理されることになった。取引案件によっては、取得企業が投資銀行や専門家へ支払うアドバイザリー費用の金額が多額になることも考えられるが、今後は、費用が企業結合に直接起因するか否か、または買収が成立したか否かにかかわらず、取得関連費用はすべて期間費用として処理され、当期の損益に影響することになるため、事業予算策定時には十分留意が必要である。
終わりに
 今回の基準改訂により親会社説から経済的単一説への移行したため、非支配持分が関係する企業結合や売却の際の会計処理に対して大きく影響を与えている。単独投資でない出資先の資本構成を変化させる際は、従来と異なる損益影響が出る可能性があるため、計画段階において基準の改訂点を十分に留意する必要がある。

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