新外国税額控除および 国外損失ルール

税務会計最前線

KPMG会計事務所 
シニア・マネジャー ティペット仁美


新外国税額控除および 国外損失ルール


 オーストラリアおよび国外の居住者による外国税額控除 (Foreign tax offset, FTO) および国外損失の使用に関する改正税法が08年7月1日以降開始する所得年度から適用されている。改正税法によって、現行の外国税額控除 (Foreign tax credit, FTC) および国外損失規則上の複雑な「所得種類別基準」が廃止され、同時に国内と国外の損失ルールが統合された。


外国税額控除
 オーストラリアの税法上、居住者である納税者は基本的に国外および国内双方に源泉のある所得を申告する必要がある。全世界所得の申告にあたって、国外で課税された所得がある場合には、二重課税を防ぐための手段の1つとして外国税額控除が認められている。

外国税額控除の種類別隔離の廃止

 旧税法の下では、納税者は国外で納付した税額について一応は外国税額控除(以下、FTC)が認められていた。控除の金額は、当該国外所得に対するオーストラリア税額と実際に納付した外国税額のうち少ない方を限度としていた。さらに、FTCの計算上、国外源泉所得は4種類(①受動所得、②オフショア・バンキング所得、③特定の非居住者年金ファンドからの一時金、④そのほかの所得)に分類されており、この分類ごとに区分計算が行われ、FTCは同じ種類の国外所得に対してのみ適用可能であった。このことにより納税者がFTCの利用を制限されるおそれがあった。
 新税法の下では、基本的に、課税所得に算入した金額に対応する納付外国税額について還付不能な税額控除の適用がある。しかし、限度超過外国税額は旧税法では5年を限度として繰越すことができたが、新税法の下では繰越ができなくなっている。
外国税額控除の条件
 外国税額控除(以下、FTO)の適用条件は下記の通りである。
●オーストラリアの課税対象所得に算入した国外所得について、外国税額を納付していること
――納税者以外が当該税額を納付した場合でもFTOの適用がある。また、一部を除いて、非課税でない益金不算入 (Non-assessable non-exempt ) 所得に対して納付した外国税額は対象外になる。外国税額を納付した国外所得に、例えば非課税でない益金不算入所得が含まれている場合は、FTOの対象になる金額は減少する。
●納付された外国税額は、所得、利益またはゲインについてであること
――相続税、富裕税などは所得、利益またはゲインに対する税金ではないため対象にならない。同様に、入金、売上や生産高に基づく税金も対象にならない。さらに、合算課税(Unitary tax)や外国税額控除超過税(Credit absorption tax)として納付した外国税額も対象にならない。
●FTOが適用になるのは、外国税額が課された所得が納税者の課税対象所得に算入された所得年度であること
――FTOの適用は、実際に外国税額が納付された時期に関係がない。後日、外国税額を納付したり、外国税額納付額が変更になったりした場合には、修正申告をする必要がある。修正申告の期限は外国税額を納付した時から4年間である。
 さらに、FTOは一般的にオーストラリアの居住者に適用されると理解されているが、新税法の下では国外の居住者(例えば、オーストラリアにおける恒久的施設)がFTOを適用することを妨げていないことは注目される。
国外キャピタルゲイン
 国外キャピタルゲインがある場合には、FTOの適用を決定する前に(国外国内を問わず)キャピタルロスと相殺しなければならない。しかし、旧税法と同様に、納税者は、どのキャピタルゲインをキャピタルロスと相殺するか選択することができる。可能であれば、外国税額を納付していないキャピタルゲインや、キャピタルゲイン税軽減措置の適用がないキャピタルゲインから先に相殺していけばよい。
 キャピタルゲインに関するFTOを最大限に利用することを目的にするならば、残っているキャピタルロスについては、キャピタルゲイン税軽減措置の適用があるキャピタルゲインと相殺し、最後に外国税額を納付したキャピタルゲインと相殺する。
 しかし、当該年度において全体でキャピタルロスが生じていた場合、課税対象所得に含まれるキャピタルゲインがないため、税額控除が適用されないことになる。
外国税額控除限度額 (Foreign tax offset cap)
 FTOの金額は、実際に納付した外国税額と新税法の下で計算した外国税額控除限度額のいずれか少ない方を限度とする。限度を超過して納付した外国税額は控除の対象とならない。
 しかし、外国税額納付額が1,000ドル以下の場合、当該納付額がそのまま外国税額控除額となり、外国税額控除限度額を計算する必要がない。
 外国税額納付額が1,000ドル超の場合、外国税額控除額を1,000ドルに限定する方法と外国税額控除限度額を計算する方法がある。外国税額控除限度額を計算しないで、1,000ドルに限定する方法は、1,000ドルを超えて納付した外国税額を無駄にすることでもある。
 外国税額控除限度額は、実質的に、二重課税の対象となった所得および(納付した外国税額の有無にかかわらず)ほかのオーストラリア源泉ではない課税対象所得に対するオーストラリア税額である。簡単に言えば、このオーストラリア税額は、全課税所得に対するオーストラリア税額と一定の前提の下で計算された国内所得のみに対する税額との差額として計算される。
 納税者が全体として損失を出して課税所得がない場合、FTOの適用はない。このため、外国税額納付額を利用できない結果になる。すなわち、繰越制度がないため当該外国税額は将来利用できないし、還付もされないし、また、ほかの納税者に移転することもできない。
国外損失の隔離の廃止
 旧税法の下では、国外所得は4種類に分類されており、国外損失は国内所得から隔離され、同じ種類の国外所得に対してのみ相殺できた。
 新税法の下では、国外所得の分類や国外損失の隔離は廃止された。したがって、益金から控除される損金および過年度欠損金には、国外および国内両方の損金および欠損金が含まれる。以下に法案の趣意書から抜粋した例を挙げる
 オーエンはオーストラリアの居住者で政府省庁に勤務しているエコノミストである。2020年6月30日に終了する所得年度にて勤務所得が10万ドルあった。オーエンには、2019年6月30日に終了した所得年度に外国でのビジネスの失敗から発生した2万ドルの損失がある。また、2018年6月30日に終了した所得年度で発生した繰越欠損金が5,000ドルある。年度中、オーエンは税務申告費用100ドルと、経済誌の購読に900ドル支払った。
給与                 100,000
課税対象所得           100,000
          (マイナス)
          購読費用              -900
          申告費用              -100
          ビジネスの失敗による損失   -20,000
          2017-18繰越欠損金       -5,000
          損金合計              -26,000
課税所得              74,000
適用開始日と経過措置
 新税法は、2008年7月1日以降開始する所得年度より適用されているが、旧税法の下での国外損失および外国税額控除に関して経過措置が設けられている。簡単に言えば、種類ごとであった国外損失は1つにまとめられて税務欠損金になり、FTCは1種類になる。国外損失やFTCの分類はなくなったが、新税法の下でその利用は制限されている。連結納税グループの親会社を含む納税者は、現在の外国税額および繰越国外損失の状況を検討し、将来の納税および財務報告上の繰延税金残高への影響を判断すべきである。
移転価格更正
 新税法は、既にオーストラリアで課税ずみである所得についてほかの租税条約締約国が移転価格更正を行ったことによる二重課税を緩和するためにオーストラリア居住者である納税者の課税所得または損失を修正する裁量権をオーストラリア国税庁長官に与えている。以前は、二重課税は税額控除の適用によってのみ緩和されていた。
 この移転価格更正ルールはすべての条約締約国に適用される。
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