コロナ禍で生まれた新しいビジネスのカタチ 「バーチャル留学」の魅力とは?

 オーストラリアと日本、コロナ禍で二国国の行き来も困難な状況となっていることで、悲鳴を上げているのが留学業界、旅行業界だ。語学学校の教師や、旅行ガイドなど多くの業界関係者が仕事を失っていく状況の中、彼らが全面協力をする形でシドニーで立ち上がった新サービスがある。「ホームステイ・オンライン」(主催:Homestay Online – Education Internship Australia Pty Ltd)だ。英語学習に加え観光ツアーなども盛り込まれた同プログラムは、分かりやすく言い換えると留学生生活を擬似的に味わえる「バーチャル留学」。コロナ禍で新たに立ち上がったビジネスで、現在どのような活動が行われているのか。「バーチャル留学」の具体的な内容を、参加した学生の声を交えながら紹介していく。
(取材:馬場一哉)

PROFILE

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清水舞羽
青山学院大学・社会情報学部・社会情報学科2年生。青山学院大学独自の、学部・学科にとらわれず、学生の興味や関心に応じて教員を選べ、交流の輪を広げられるシステム「アドバイザー・グループ」で「ホームステイ・オンライン」プログラムを知り2週間のプログラムに参加

 今回、「バーチャル留学」の参加者として、本誌の取材に協力頂いたのは青山学院大学社会情報学部2年生の清水舞羽さん。清水さんは、大学が提供する、教員と学生のネットワーキング・グループ「アドグル(アドバイザー・グループ、参考URL: www.aoyama.ac.jp/life/activity/adviser/)」の1つに所属し、同アドグルで提供される英語でのコミュニケーションや異文化交流に関する情報交換などの場に参加してきた。 同アドグルでは、毎年夏休みにオーストラリア、ニュージーランド、カナダに4週間の研修旅行を行っていたが、今年はコロナの影響で中止。その代案として今回のプログラムが紹介されたそうだ。

 そんな中「2週間の英語の勉強と異文化体験をするため、いつか訪れたいと思っていたオーストラリアでのプログラムに参加することを決めました」と清水さんは参加を表明。8月17~28日まで、土日を除いた2週間プログラムへと参加することとなった。

先生の自宅の周囲をバーチャル散歩

 プログラム開始後は、オンラインのツールを使い、毎朝午前9時からホームステイのホストである語学学校の先生と自由に会話、その後午前10時から正午までの2時間はIELTSの特別授業を受講。夜には先生との会話時間が30分ほど設けられ、その日をどのように過ごしたかといった世間話から、最近のニュースなど、さまざまな話題で会話に花を咲かせたという。

「IELTSスコアアップの授業が始まると、教材がzipファイルで送られ、共有ファイルを用いてスケジュールを確認しました。一緒に文章を読み、解き方を教わり、本番のようにスピーキングの練習をしてくださったり、ライティングの添削などフィードバックをしてくださいました」

 午後の時間帯にはさまざまなアクティビティやセミナーが行われ、日によってその内容は多岐に渡った。ある日のアクティビティーはバーチャル散歩。ZOOMを用いて先生の家の中を見て回り、更には先生のお母さんとの挨拶も行った。同時に清水さん自身の自宅も先生に紹介。先生と清水さんのお母さんがあいさつをするシーンもあったという。

「先生とのアクティビティはとても楽しかったです。日本であまり見掛けない植物や鳥、標識などを見て、現地にいるような気分になりました。家の雰囲気も日本とは違い、昔住んだことのあるイギリスを思い出しました。また、先生が入ろうとしたショッピング・センターで、警備員から注意される場面もあって、オーストラリアの規制は依然として厳しいんだなと実感しました」

 清水さんは約5年間イギリスの日本人学校に通っていた経験があり、その際、ヨーロッパのさまざまな国を旅行したという。

「海外では新しいものに触れて、それを自分の目線で見ることができます。日差しや風、気温を感じることもできます。何かをしようとして失敗したり、接した人のしぐさや行動の違いを感じられます。このような点において、バーチャル留学は実際とはもちろん異なります。しかし、多くの方が初対面の私を受け入れてくださり、親身になってお話をしてくださいましたし、オンライン上だと、常に話をしなければならない状態にあるので、これはむしろオンラインならではの利点と感じました。英語で話を続ける力が以前より付いた気がします。もしかしたら実際に旅行で行くよりも近い関係性を築けたかもしれないと思っています」

バーチャル・シドニー観光

 ホームステイ先の先生とのアクティビティとはまた別に、専門家によるオーストラリアの大学に関するセミナーやプロの旅行ガイドによる「バーチャル・シドニー観光」などのプログラムも組まれていたそうだ。

「バーチャル・シドニー観光」は、オンライン上でバスツアーを開催するというもので、シドニーで活躍するベテラン・ガイドたちが自分たちのお勧めのポイントを移動の工程も含めて動画に収め、それを参加者全員で鑑賞しながら、ガイドの説明に耳を傾けた。

 内容も、見どころの説明だけではなく、シドニーの歴史など多岐にわたり、またリアルタイムでのガイドのため、参加者が途中で質問することなども可能だったという。

「車の中から外の風景を眺めている時には、実際にオーストラリアの道路を走っているように感じました。オペラハウス、ハーバーブリッジ、シドニータワー、タウンホールなど有名な歴史的建造物に加え、先住民アボリジニにより作られたアボリジニ・アートも印象的でした。また、バランガルーなど再開発地域の様子も見学することができ、オーストラリアが変化を遂げてきていることを感じました。バーチャル留学、バーチャル観光では皆さんの温かい雰囲気や優しさを感じ、この機
会を用意してくださった方々、ガイドの方、レッスンをしてくださった先生が大好きになりました」

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バーチャルだったからこそ得られた永続的な関係性

 清水さんは参加当初「夏休みの2週間を利用して、英語試験のスコアアップ、加えてオーストラリアについて知ることができれば良いな」という程度にしか考えていなかったそうだ。そのため、当初は「オーストラリアはオンラインで訪れるから、国境が開いたら次は別の国を訪れようか」と考えていたが「今はこの新型コロナウィルスが収まったら、まず一番にオーストラリアへ行こう」と考えているという。

「2週間というホームステイ期間を過ぎても先生はライティングの添削をすると言ってくださり、試験本番の前日にはスピーキングの練習もしてくださいました。本当に誠実な方で、優しく、真面目で、一方で私の言いたいことがうまく伝わらなかったときは、はっきりと良く分からないと言ってくれました。その際には違う表現で相手に伝わるように説明する力を鍛えてくださるなど、しっかりと指導してくださいました。2週間を振り返ると人の温かさばかりが思い出されます。皆さんにこやかで、私の話も親身に聞いていただいて、本当に皆さんにお会いできて良かったと心から思いました。オーストラリアへ行って、皆さんに実際にご挨拶をして、オーストラリアの素敵な場所に連れて行って頂きたいです。おいしいものを一緒に食べて、先生のご自宅にも実際に訪れたいです」

新型コロナウィルスの蔓延で、留学を断念せざるを得なかった友人も数多くいたそうだ。

「本当にたくさんの方が絶望し、悲しんでいたと思います。そのような中で、このような貴重な機会を得ましたので本気で取り組み、できる限りのものを得ようと頑張りました。新型コロナウィルスがオンライン・ホームステイの実現を早めたように思いますが、新しい留学の形を今回体験させてもらうことができ、本当に感謝しています。ぜひまた機会がありましたら、チャレンジしてみたいと思います。その前に、ウィルスが収まり、元の日常に戻れることを願います」

 今回のプログラムを催行した「Home stay Online」社ではオーストラリアに駐在している日系企業の駐在員とのコミュニケーションや、現地の大学生とのオンライン交流など、プログラム内容の更なる拡充を始めている。

 プログラムに参加した後、国境が開かれた際には、オンラインで交流を深めた人々との出会いを楽しみに現地を訪問するという楽しみも残る「バーチャル留学」。
 コロナ禍において失われたものも少なくないがが、新たに生まれた交流の形も数多い。新ビジネスの提供者、そして利用者、共にこの苦難を前向きにとらえてチャレンジを続ける多くの人にエールを送りたい。

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 幌北学園 blancpa novel-coronavirus nichigowine  kidsphoto

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