マレー・ダーリング水系の買戻取水権が綿農場に転用

税金で買い戻された河川流量増加分が棉花灌漑に

 かつてマレー・ダーリング水系の取水権の総量が水系の水量を超えているという奇妙な事態があり、同水系の健全性を維持するため、連邦政府が税金から資金を確保し、同水系の取水権を農家などから大量に買い戻した。しかし、買い戻した水量がNSW州政府によって棉花農場の灌漑に割り当てられていたことがABC放送の調査で判明した。

 このような政策の不手際のため、130億ドルの資金を計上したマレー・ダーリング水系計画が水泡に帰そうとしている。

 ABC放送の時事番組、「Four Corners」は、NSW州政府の取水規則で水系計画が河川流域州・準州の署名を集めた2012年以前に比べてもより大量の取水権を割り当てており、事実上納税者の税金ですでに豊かな農業企業に補助を与えた形になっている。その中にはウエブスター・リミテッドのように3億ドルの取水権を握っている上場企業もある。

 長年、農家の利益を代弁する活動を続け、マレー・ダーリング水系局(MDBA)のマル・ピーターズ委員長がNSW州のバーウォン・ダーリング制度を精査し、「とんでもない内容だ。企業が持つ取水権が膨大すぎて、水系計画をまったく無意味にしてしまっている」と発言している。

 NSW大学の学者、リチャード・キングスフォード氏は、「納税者が買い戻した環境保全用水がそのまま棉花栽培用灌漑用水になってしまっている。これは最大の問題だ」と語っている。

 MDBAもこの問題を認識しており、2016年7月には委員会が電子メールを通じて非公開の話し合いを行っている。

 ジョン・ハワード元連邦首相がマレー・ダーリング水系計画を立ち上げて以来、30億ドル分の取水権が税金で買い戻されているが、下流流域の水系に頼っている牧場や市町民は、2012年以来水系の水量が増えるどころか減っているとして、NSW州政府の措置に怒りを訴えている。

 しかし、ウエブスター社のジョー・ロビンソン取締役は、「当社は環境を考慮し、取水権分の水を汲み上げていない。当社は、取水条件を含めて事業を買い取った。水が足りないのは問題だが、自分たちの責任ではない」と語っている。
■ソース
Murray-Darling Basin Plan: Taxpayer-purchased water intended for rivers harvested by irrigators

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