ブラザー工業

企業研究

受け継がれる
モノ創りのDNA

 今年創立100周年を迎えるブラザー工業は、情報通信機器を中心としたグローバルな事業を行う電機メーカーだ。日本では「ミシンのブラザー」というイメージが強いが、海外では「ファクシミリ、プリンター、デジタル複合機のブラザー」として広く知られている。同社豪州現地法人ブラザー・オーストラリアの杉本吉市マネジング・ディレクターをシドニー・ノース・ライドの新オフィスに訪ね、豪州市場での経営戦略について話を伺った。
写真:インクジェットのカラー複合機「MFC-885CW」。電話機能を充実させ子機も装備


ミシン修理業から情報通信機器メーカーへ
 ブラザーは、創業者・安井謙吉がミシン修理業を生業とする「安井ミシン商会」を1908年に開業。息子の安井正義が兄弟とともに家業を継承しミシンの開発に乗り出して以来、さまざまな製品を世に送り出してきた。そして現在では情報通信機器メーカーとしてグローバルな事業展開を行っている。この歩みの中で生み出された各種技術は時代とともに変化したが、杉本氏は「その中にはブラザー創業当時からのモノ創りへのDNAが絶えることなく息づいている」と語る。
 ミシン製造に不可欠な技術や機械がなく国産化が不可能だった時代、安井兄弟は必要な技術や設備を自ら作り上げ、1932年に家庭用ミシンの開発・量産化に成功。同社はこの時から、核となる要素技術を自社で開発するという姿勢を貫き、現在の国際競争力の原動力としてきた。
 ミシン製造で培った精密加工技術を基に、61年には現在の情報通信機器分野の製品の原点ともいえる欧文タイプライターを開発。71年には同社の電子印字技術の先駆けである高速ドット・プリンターを米国の会社と共同で開発、量産化に成功している。またこの時代にはミシンやタイプライターなど多くの機器も電子化。ドット・プリンターで培われた電子印字の技術は、80年代前半のサーマル印字技術に受け継がれ、ラベル・ライター、ファクスの開発につながっていく。
 80年代の終わりには、同社の印字技術はレーザー、インクジェットへと展開。小型で高速なブラザー独自のモノクロ・レーザー・エンジンを搭載したプリンターやデジタル複合機は現在、欧米の市場で大きなシェアを誇っている。また、主に薄型デジタル複合機に使用しているインクジェット印字技術も同社の独自開発によるもので、今後もさらなる高速化、高画質化を目指している。

企業研究
同社のフラッグシップ・モデル、カラー・レーザー複合機「MFC-9840CDW」。毎分20枚の高速プリントが可能

早くから国際化
 ブラザーの海外展開は早く、北米に販売会社を設立したのが1954年。欧州には58年に進出している。「もともと輸入産業を輸出産業にとの志を持ってミシン製造に乗り出しており、世界中を市場として捉えていました。そのため早い段階での海外進出はブラザーにとっては当然の展開でした」(杉本氏)。
 その後に開発した欧文タイプライター、高速プリンターは、このミシンで培った海外販売網を利用して国際的に展開。ブラザー・グループは現在、40の国・地域に19の生産拠点と42の販売拠点を設け、世界中の顧客に、ファクス/プリンター/デジタル複合機の「通信・プリンティング機器」「家庭用ミシン」「工業ミシン・産業機器」などの製品・サービスを提供、2008年3月期の連結売上高は5,664億円に上る。
 ブラザー・グループが今年、100周年を機に掲げた2012年までの5カ年中期戦略は、この連結売上高を1兆円の大台に乗せることだ。プリンティング事業の拡大と新規事業の育成をグループ全体の使命としており、杉本氏も「ブラザー・オーストラリアも約2倍の売上増達成に向けて一丸となって取り組み、アグレッシブに成長を追求したい」と語る。
 その豪州現地法人の設立は1977年で、今年で31年を迎える。ミシン、タイプライター、ドット・プリンターの販売会社としてスタートした同社は現在、社員117人、年間売上は約1億5,000万ドル(07年)の事業規模を誇る。シドニー本社を中心に、メルボルン、ブリスベン、パース、アデレードに支店を展開。タスマニアにもホーム・オフィス・ベースの販売員を置き、全豪に通信・プリンティング機器、家庭用ミシン、ラベル・ライターといった商品・サービスを提供している。

企業研究
自動刺繍機能付きの家庭用ミシン「NV-4000D」。USB端子付きで、コンピュータから刺繍デザインをデータ送信し自動刺繍が可能

インフラ整備と販売チャネル強化に注力
 豪州市場の売上の柱は、グループの柱でもあるレーザーおよびインクジェットの小型プリンター、そしてプリンターにファクスやコピー、スキャナー機能を備えた複合機の事業で、売上全体の80%を占める(そのほか、家庭用ミシン事業10%、ラベル・ライター事業10%)。そのうちインクジェット複合機の市場シェアは、業界調査会社IDCの2007年レポート(以下同)によると12%で業界第3、4位を争うポジション。レーザーはプリンター専用機と複合機にそれぞれカラーとモノクロの市場があり、そのうちのレーザーのモノクロ・プリンターは現在2番手のシェア。また、レーザーのモノクロ複合機は業界トップの21%のシェアを誇っている。
 ただし、カラー・レーザーは市場参入が遅かったこともあり、プリンター、複合機ともにまだ低位に甘んじている。杉本氏は「昨年から競争力の強い新製品を投入できたこともあり、カラー市場でのシェア拡大を急ピッチで進めています」と語り、この市場が“5年間で約2倍の売上増”を実現するための戦略の核になると分析している。
「今までの30年はとにかく売上ありきで何とかやってきましたが、売上拡大を支えるインフラの整備がおろそかだった。闇雲に数字を追いかける前に、倉庫、物流を整備し、またそれらをマネジメントするITインフラ、電子受発注システムなどを整えることで、経費の節減、顧客満足度の向上を追求していきたい。
 また、販売チャネルの強化は必須。現在はOfficeworks、Harvey Norman、Dick Smithといった量販店をメインとした販売だが、今後はディーラー・ディストリビューター網を介した販売を強化し、ビジネス・SOHO向けのカラー・レーザー・プリンターや複合機が、ニーズをお持ちのお客様にきちんと届けられるチャネルを整備することが重要。
 広告宣伝、CSR活動、スポンサードなどの展開によってブランド力を高めると同時に、モノ創りのDNAを受け継ぐブラザーならではの、独自技術を駆使した競争力の強い商品の投入で攻勢をかけたい」

企業研究 企業研究
印字したラベルが印刷できるラベル・ライター「PT-1280」 杉本氏が企画し2004年に商品化した大型ラベルが印刷できるラベル・プリンターの最新モデル「QL-570」

企業研究

杉本吉市 代表取締役社長
すぎもとよしいち◎1963年名古屋市生まれ。86年東京大学経済学部卒、同年ブラザー工業(株)入社。入社以来、営業、マーケティング、商品企画などを経験し、2007年8月にBrother International (Aust) Pty Ltdに赴任。10月より同社MDに就任。
<杉本社長に聞く10の質問>
座右の銘:「At your side」常にお客様視点で。実はブラザー・ロゴのタグ・ラインです(笑)。
今読んでいる本:「思考スピードの経営」ビル・ゲイツ著を2度目。99年当時の彼の先見性に尊敬。
オーストラリアの好きなところ:青い空、青い海、雄大な自然。釣りには最高です。
外から見た日本の印象:井の中の蛙。もっと外に出て活躍すべき。
好きな音楽:クラシック全般(詳しくありませんが)。
尊敬する人:月並みですけど坂本龍馬。
有名人3人を夕食に招待するなら:パーソナル・コンピュータの世界を作ってきた3人、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、孫正義。
趣味:釣りと料理。釣った魚を料理。
将来の夢:後生に名を残すようなことをする(もちろん悪いこと以外で)。
カラオケの十八番:さだまさし

 CJM Lawyers  Harding legal 幌北学園 kidsphoto nichigowine
日豪プレス 配布場所   日豪プレス 新刊発行    Oishii Japanese Restaurant Guide Covid-19 最新情報

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL


新着イベント情報

新着イベントをもっと見る