アダム・ジャイルNT主席大臣

政界こぼれ話人物編 その151

アダム・ジャイルNT主席大臣

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー:松本 直樹


NTのみに存在する地方自由党(注:実体は自由党)のアダム・ジャイル主席大臣は、1973年4月10日に、観光地として有名なNSW州のブルー・マウンテンズで誕生している(41歳)。父親は先住民系で母親は非先住民である。その後両親は離婚したが、ジャイルが同居していた母親は、労働組合運動に熱心な人物と再婚している。12歳の時からアルバイトを始めたという。

高校を卒業した後は、専門学校で会計や不動産業務を学び、まず不動産業界で働いた後に、先住民の頂上組織であったアボリジニ・トレス諸島民委員会(ATSIC)(注:委員の汚職事件などが頻発したことから、ハワード保守連合政権はATSICを廃止)の住宅問題担当スタッフとして働いている。また首都キャンベラの連邦首相府などで、先住民問題の顧問も務めた。

ジャイルは早くから政治家志望で、2004年には自由党の候補者としてキャンベラの連邦下院選挙区から出馬しているし、またNTのアリス・スプリングに転居した後には、地方自由党の候補として07年の連邦下院選挙にも出馬している。どちらも落選の憂き目にあったものの、その後はNT政界入りへと目標を変え、08年8月に実施されたNT選挙で初当選を果たしている。また昨年8月のNT選挙でも再選を果たし、11年ぶりに誕生したミルズ率いる地方自由党政権では、運輸・インフラストラクチャー・地方政府大臣に抜擢されている。

ところが、昨年の選挙で圧勝したミルズであったが、もともとリーダーシップが弱く、しかも厳しすぎる財政再建路線と電気/水道料金の大幅値上げを決定したことから、NT住民が強く反発し、それに伴って党内求心力も急激に低下。そういった中、先の選挙では先住民有権者層の獲得に大いに貢献したジャイルがミルズ降ろしに動き、今年の3月13日にミルズを蹴落としてNT主席大臣に就任している。

附言すれば、豪州の9政府(注:連邦ならびに6州と、ACTおよびNT)の長に先住民系の人物が就任するのは、ジャイルが初めてのことである。

人柄だが、強力な指導力とコミュニケーション技能を備えた人物とされる。信条だが、ジャイルは自由党の右派のメンタリティーを持ち、経済分野では市場原理を重視する経済合理主義者である。

一方、先住民の血をひくことから、ジャイルの先住民政策が注目されているが、ジャイルはピアソンやマンディーンといった、新世代の有力先住民指導者がそうであるように、これまでの手厚い福祉制度、あるいは福祉漬けが先住民を駄目にしてきたとの考えである。そして、「社会主義的な施策よりも経済発展」と述べつつ、先住民対策とはひとえに雇用対策であると喝破(かっぱ)している。また「自分は何よりも豪州人である」と主張しつつ、先住民のリーダーとしてのみ捉えられること、位置付けられることには抵抗を示している。

細君のタマラとの間に1人娘がいる。

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