
ジャン・コクトー記念館カ
発行人の パリ便り
第5回
今回はパリ便りから少し脱線して、1週間ぶらぶらしてきたフランス南部のコート・ダジュールの様子を。パリから特急の汽車に乗り6時間もすれば、ニース、カンヌ、モナコなどを総してコート・ダジュールと呼ばれる地中海沿岸の地域に到着します。
ニースやカンヌほどの知名度はありませんが、マントンという港町のホテルをベースにして、カンヌとモナコでツーリストをしてきました。
パリの人たちが、目の色を変えてバカンスにこのコート・ダジュールへ南下してくるのが実感として分かりますね。陽光きらめく穏やかな青い地中海。流れている空気もパリに比べると優しい感じです。今年のパリは例年に比べて暖冬だったのですが、それでもここでは身体の隅々に太陽の光が駆け巡り、蘇生したような感じがしました。
まずマントン。地味なコート・ダジュールというか、素朴な感じがマル。この町の売り物の一番大きなものは、フランスの大芸術家ジャン・コクトー。コクトーが愛した町で、晩年はここで過ごしています。で、コクトーの記念館が2つあり、彼の作品、監督した映画、描いた絵、詩などがディスプレイされています。
なぜすぐ近くに2つの記念館があるのか理由は分かりませんが、1つは近代的な建物、もう1つは小さな古い教会を改造したような建物です。町中がコクトーを誇りにしているのがよく分かり、みやげ物でもコクトーがらみのものをたくさん見かけますね。それから、ここはイタリアとの国境にあたり、町のはずれに検問所がありました。

100ミリオン以上という「マルチーズ・ファルコン」
カンヌへは、マントンから汽車で約1時間。カンヌはもちろんカンヌ映画祭の町。やはり華のある町というか、海岸通りを歩いているとウキウキしてきますね。ちょうどテレビの見本市が開かれており、レッド・カーペットが敷かれ、ガードマンが警備しており、プレス・カードを持ってない人間は大会場には入れません。
カンヌ映画祭開催中は、この辺で大スターが無数のフラッシュ・ライトを浴びるわけです。その気分の片鱗でもをと思い、期間中大スターが泊まる近くの最高級のホテルのレストランでランチをしました。値段は、パリの一流レストランのディナー代と同じでした。
その後、また海岸通りを歩いていると、いろいろな想いが駆け巡りました。映画ジャーナリストの夢は比喩的な言い方をすると4つあるんですよ。1つ、高倉健氏の単独インタビュー。2つ、吉永小百合さんの単独インタビュー。3つ、カンヌ映画祭出席。4つ、アカデミー賞オスカーに出席。もう日が暮れかかっているのに、この内の1つしか実現してないなとしみじみ思うわけです。一方、いやまだ時間はある、頑張ろうと自分を叱しったげきれい咤激励したりするわけです。

カンヌの大会場とレッド・カーペット
最後はモナコ。マントンと隣接しており、汽車で15分程度。猫の額のような狭い所に、ビルやアパートがひしめき合っています。リッチ・ピープルの場所として有名で、ハーバーには高級ヨットが富の象徴のように泊まっています。
シドニーでも湾に泊まるミリオン単位のヨットはリッチのシンボルですが、ここではケタが違いますね。外見がほかと違って、何かコンピュータ・ヨットのような感じだったので、写真に撮り、後でネットでチェックすると、これはマルチーズ・ファルコンという名の100ミリオン以上の値段のヨットでした。
持ち主はエレナ・アムブロジアドゥという47歳のイギリスの女性。投資会社で大儲けをした人だそうです。1年に1、2週間ぐらいしか使わないそうで、このヨットをレンタルすることができます。1週間のレンタル代は、60万ドル! モナコでイメージするのは何でしょうか。カジノのギャンブル。モナコ・グランプリのカー・レース。ノータックスの国。個人的にはグレース・ケリーです。
リアルタイムで知らない女優さんですが、モナコ王国のプリンスに見染められプリンセスになった、文字通りのシンデレラ・ストーリーでしたが、ハッピーエンドにはなりませんでした。
50代の初めに車の事故で亡くなっていますが、亡くなるまでの10年は、2人の間の愛情も冷め、公式行事の時だけ家族全員が集まりハーピー・ファミリーを演じながら、実際はパリで若い愛人と暮らしていたそうです。ダイアナ妃とオーバーラップしますね。 どうでもいいことをぐだぐだ思いながら過ごしたコート・ダジュールでした。
Au revoir.
(本紙発行人 坂井健二)