第38回 時の記念日

書家れんのつきいち年中行事
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  ご機嫌いかがですか、れんです。
 今月は皆様にご報告があります。6月1 日より、チャツウッドにて『れん倶楽部書 道教室』が新規オープンしました。月曜 日~土曜日、午前・午後、そしてアフター ファイブと、子どもたちから、主婦の方、 またお仕事をお持ちの方も、お稽古にいら していただける時間がぐんと増えました。
 筆を持って文字をしたためる。書は 心。書いた文字は自分自身です。思いを 込めて書いた文字は言霊となって見る人 の心に響きます。墨の香りや毛筆の感触 は暫く心の底で眠っていた何かを揺さぶ るきっかけにもなるかもしれませんね。
 さて、6月10日は「時の記念日」で す。国民の祝日ではありませんが、歴史 のある、よく知られた記念日です。
 1920年(大正9年)5月15日から6月 末日まで、当時の文部省の主催で「時展 覧会」が開催されました。この会期中、 6月10日は、今から1,340年前の671年 のその日に天智天皇が漏刻(水時計)を 使って時を知らせた日に当たっていまし た。日本書紀に「漏剋(=刻)を新しき 台に置く。初めて候時を打つ。鐘鼓を動 す。始めて漏刻を用いる。」とあり、日 本初の時計が鐘を打った日なのです。
 「時の記念日」はその年、東京天文台と 当時の生活改善同盟会の提唱によって誕 生しました。生活改善同盟会は、同年1 月に伊藤博邦氏(父は初代内閣総理大臣 の伊藤博文氏)を会長として作られ、社 会や家庭の衣食住の改善をはじめ、社交 や礼儀などの改善を推進するのが目的で した。実行要目の第1項に「時間を正確 に守ること」を挙げ、6月9日と10日の両 日、銀座、日本橋、上野、浅草などの繁 華街で5万枚ものビラを配布して「時の 念日」の意義をPRしたそうです。
 その内容には「出勤、および退出の時 間を励行すること」「勤務と休養の時を 区別し、時間を空費せぬこと」「取引約 束の期日を違えぬこと」、また「集会の 時日は、多数者の都合を考えて定める こと」「開会の時刻は掛け値をせぬこ と」、さらに「先方の迷惑する時間の 訪問は慎むこと」「訪問は予め時間を打 ち合わせすること」「来客は待たせぬこ と」などが記されていました。
 わざわざそれらが挙げられているとい うことは、当時はそういう共通認識がま だ社会全体に行き届いていなかったこと を示していますが、一世紀と経たぬうち に日本人は世界で一番時間に正確で、時 間を大事にし、時間を守る国民になった と言えるでしょう。いろいろな国の出身 者が雑多に混住するシドニーで生活して いると、それが本当によく分かると思い ます。私たち日本人にとって非常に意味 のある記念日ではないでしょうか。
 では左の書をご覧ください。しっかり と線に重みを加えて運筆しました。線は 単に太ければ強いというわけではありま せん(人間も同じでしょう)。穂先に加 えた圧力で筆のバネを引き出すことで、 しっかりとした線が生まれます。それに はやはり鍛錬が必要ですが、その鍛錬 は技術の向上とともに、見る目も磨きま す。そのうち巷に出回る書の良し悪しも 分かるようになります。
 オーストラリアではまだまだ「書」に対 する認知度が低いのが現状です。メンタル の面でも、また美的感覚の面でも、書は非 常に素晴らしい素材です。これまで以上に たくさんの人に知っていただき、楽しんで いただけるよう努めて参りますので、新生 「書団れん倶楽部」をこれからもどうぞよ ろしくお願いいたします。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)。

アーティストとして永住権を取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産としてキャンベラの在豪日本大使館に収蔵される。Government House での企画展をはじめ、日豪両国およびドバイで個展・グループ展を多数開催。在豪日本大使館、在オークランド日本総領事館の招聘によるイベント参加やNSW 州立美術館、Channel 7 などさまざまなスペースで大書パフォーマンスを展開。日本文化紹介のワークショップにも多数参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室を運営。
Web: http://renclub.net
E mail: renclub@gmail.com
動画: http://www.youtube.com/user/renclub

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