第137回 五ヶ瀬の荒踊

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第137回
五ヶ瀬の荒踊

ご機嫌いかがですか、れんです。

皆さんは和製漢字をご存知でしょうか。江戸時代には国字(こくじ)とも呼ばれました。もちろん漢字は中国生まれではありますが、日本人がそれをそのまま使うだけで満足するわけがありません。訓読みを作り、仮名を作ったのはもちろんご存知と思いますが、実は約2,600字もの国字を作りました。

一番多く作ったのが「鰯(いわし)」「鯑(かずのこ)」「鯱(しゃち)」などの魚編の字。国土を海に囲まれた日本は魚介類が豊富でその種類が多かったのでしょう。また国土の約7割が山林ということもあり、2番目に多いのが「栃(とち)」「樫(かし)」「榊(さかき)」などの木編の字です。また今はほとんど見掛けませんがキロ・グラム(瓩)やキロ・メートル(粁)なども作られています。

国字の多くは日本でしか通用しませんが、一部「鱈(たら)」「腺(すじ)」など台湾や中国でも使われているものもあります。台湾には日本統治の時代がありましたし、中国には明治期以降に科学や社会概念が日本語から中国語に翻訳され逆輸入されたのです。「躾(しつけ)」や「働」という字が和製であることは何やら象徴的なものを感じてしまいます。

2019年度第2回漢字能力検定が10月26日、「RENCLUB」で開催されます。漢字に向き合う、良いきっかけになるとうれしいです。

さて宮崎県北西部、日本最南端のスキー場がある西臼杵郡五ヶ瀬町の三ヶ所神社と中登神社では毎年9月29日、国の重要無形民俗文化財に指定されている「五ヶ瀬の荒踊」が行われます。

今からおよそ400年前の室町時代は天正年間、将軍は足利義満。織田信長が活躍したころというと背景が見えるでしょうか。坂本城主であり炎王山恵光寺開基である坂本伊賀守(かみ)正行による創始。孫の山城守入道休覚が守護神とする二上(ふたがみ)大明神への奉納を先例としたことからその後も続けられ、現在約250戸の人びとによって伝承されています。

ところで入道とは在家のまま仏道に入った人のことです。昔は平清盛入道など三位(さんみ)以上の階位を持っている者のことを指していましたが、時代が下るとある程度地位のある武士でも名乗るようになったようです。

踊りの指揮を執るのは寺の後継者である新発意(しんぼっち)。寺の飼い猿も出場しました。現在は約60人の武者姿の一行が、采配(ざい)、鷹、槍、長刀、弓、鉄砲などの武器を手にして、古式ゆかしい戦の陣立てを装いながら行います。

隊列には武者一行のほか新発意や猿、太鼓や鐘、笛、法螺貝などの楽器も加わって踊り場に練り込みます。そして真ん中に置かれた太鼓を囲み、物語調の歌や念仏歌など十余曲を踊ります。規模や構成が大掛かりであるだけではなく、独自に発展した地域色の強い踊りとされています。

では、作品をご覧ください。行書の「荒踊」です。「あらおどり」という名前の持つパワーから動きのある書にしましたが、実際はその名前から想起されるような激しさは見受けられず、どちらかと言えば役者も観客ものんびりとしている印象でした。優美と言う方が良いかもしれません。

「荒」の草冠は元々、4画のパーツでできていたのを現在は3画で書かれています。楷書では1画目の横画にあとの2画を絡めますが、行書では「ソ」の後に長い横画を書くことも良しとされます。また、この場合「亡」の「亠」も被せる形にしていません。「踊」は足偏を草書にしてあります。

誤字になるのはいけませんが、古典から得た知識を使ってその場でやりたい自分の表現に近付けていくことはとても大切だと思います。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.amebaownd.com / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub / インスタグラム: instagram.com/renyano

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