第143回 阿蘇の火振り神事

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第143回
阿蘇の火振り神事

ご機嫌いかがですか、れんです。今月4日から17日の14日間、シドニー・シティの紀伊國屋書店のギャラリーで、個展としては6年ぶり28回目となる「REN-page 17」を開催させていただきます。このギャラリーでは過去に個展、グループ展を合わせて7回、紀伊國屋書店としてはドバイ店でも1度個展をやらせていただいております。グループ展やRENCLUB会員書作展では毎年作品を発表しておりましたが、個展は久々。シドニー紀伊國屋書店の河合社長からお声掛けいただいた際には二つ返事でお願いをいたしました。

ここ数年の活動はどちらかと言えば指導の方に重点を置いていたように思います。日頃のお稽古はもちろん会員展も生徒作品重視ですし、ワークショップは現地の皆様への書道体験の提供、大書パフォーマンスは書道という日本文化紹介です。しかし今年は年明け早々から自分自身の意思の具現化に取り組むことができました。簡単ではありませんが至極の時です。皆様にはぜひともお誘い合わせて紀伊國屋書店に足をお運びいただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、熊本県阿蘇市にある阿蘇神社。阿蘇神社では春の田作祭を始めとして農耕にまつわる祭りが1年を通して行われます。それらを総称して「阿蘇の農耕神事」と言い、この一連の祭礼は国の重要無形民俗文化財に指定されています。

この阿蘇神社が2016年の熊本地震の際に熊本城などと共に甚大な被害を受けたことは記憶に新しいでしょう。その後も阿蘇中岳で36年ぶりの爆発的噴火が発生するなどの苦難が降りかかりました。それでも人びとは阿蘇復興への決意を強くしてそれまで通りの営みを守り、翌17年には例年通り「火振り神事」を行いました。「火振り神事」は3月の申(さる)の日(今年は18日)に行われる、農耕神である国龍神の婚礼を祝う儀式です。

復旧作業は未だに進行中です。全壊した楼門(ろうもん)(日本3大楼門の1つ)は、修復部材の7割ほども江戸時代の建設部材が再利用されるなど、約2,300年の歴史を誇る国指定の重要文化財建造物に相応しい工事が行われています。

火振り神事の始まりは中世。鎌倉時代から室町時代にかけてのことだと言われています。阿蘇神社の主祭神である健磐石龍命(たけいわたつのみこと)の舅(しゅうと)にあたる国龍神(くにたつのかみ)(年祢神(としねのかみ)とも言う)が姫神(ひめがみ)をめとる婚礼の儀式で、「御前(ごぜ)迎え」とも呼ばれます。

嫁入りする姫神を氏子(うじこ)たちが松明を灯して出迎えたのが元々の形ですが、江戸時代に入って荒縄で縛ったカヤの束に点火して振り回すようになったようです。それが現在も受け継がれています。人びとは力の限り火を振り回すことで神様の婚礼を祝福し、五穀豊穣を祈願するのです。

一般客の火振り体験の時間帯も設けられており、外国人観光客にも人気です。カヤの束は直径20センチほどで中央を2メートルほどの荒縄で縛っています。伝統文化継承の意味合いから地元の中学3年生も参加して1,500束ほど準備します。この祭りが終われば、阿蘇では本格的に農作業が始まります。

では作品をご覧ください。行書の「阿蘇の火振り神事」です。「阿」のコザト偏は長い縦画を最後に書きます。「可」は一口と書いてから縦画を書きます。簡単な文字ですが書き順の間違いが非常に多いパーツです。書き順を疎かにすると、文字の美しさを最大限に引き出すことはできません。特に線に行意を持たせて連綿にする場合、順番が間違っていれば一大事です。伝統的なルールはきちんとした意味を持って存在しているのです。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.amebaownd.com / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub / インスタグラム: instagram.com/renyano

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